『大脱走』~息子に“男”を教える映画教室
ある朝、小学校6年生の息子が頼みがあると言って、新聞を読んでいる私の肩をちょんちょん、と小突いた。
『お父さん“大脱走”って映画知ってる?』息子はややためらい口調でそう言った。
『ん??“大脱走”。あー!!!“大脱走”!』
『今度ビデオ屋さんに行って借りてきてくれない?』息子の目が輝いた。
『あの鉄条網ジャンプするやつか。』と私は頷いた。テレビで映画音楽ベスト100みたいな番組をやっていて、そこで有名なあのシーンを見て完全にしびれてしまったらしい。“お願いします”と言って息子は私に合掌し頭を下げた。
こうして“息子に男を教える映画教室”が毎週末繰り広げられることになった。
最初はリクエスト通り『大脱走(Great Escape)1963』を借りてきた。隣の部屋の女ども(妻と娘)は立ち入らせず、部屋の明かりを消し、気分は映画館だ。
第二次世界大戦中のドイツ。脱走不可能と言われた第三捕虜収容所から連合軍兵士達が脱走を企てる。チャールズ・ブロンソン演じる通称“トンネル屋”が実は閉所恐怖症でトンネルを進むのにもたもたするあたりから、段々物語は緊迫してくる。
森へ出るはずが測量ミスでトンネルを数メートル手前で堀り上げてしまったからだ。結局、バレて最初200人逃がすつもりが70数人しか逃げられない。その後で例の“鉄条網越え”のシーンがあるのだが、ベッドに腰掛けて見ていた私たちはその瞬間、本当にピョーーンと体が跳ね上がった。マックィーンは何度も抜け出し、何度も捕まるが決してあきらめない。そこで教訓 1・息子よ、教室から逃げて、何度とっ捕まってもめげるなよ!
次に借りてきたのは『荒野の7人(Magnificent Seven 1960』である。言わずと知れた黒澤明の傑作『七人の侍』のリメイク版だが、実は私も今回はじめて見た。あの有名な音楽とストーリーは知っていたが、知ったつもりで見なくてもいいやと半分思っていた。だが、この映画は指標とすべき“男”の宝庫だ。男が惚れる男、味のある男どもが総出演である。マックィーンをはじめ、ユル・ブリンナー、ジェイムス・コバーン、ジェイムス・ガーナー、チャールズ・ブロンソン、などなど。アメリカにも、昔、こんな男がいたなーと妙な感慨が沸いてくる。
私の好きなシーンはなぜか子供たちに慕われるチャールズ・ブロンソンに、中の一人が『父ちゃんたちは腰抜けだ!』みたいなことを言い、彼がそれを叱るシーンである。結局、7人の活躍に引きずられるようにメキシコの村の農民たちも自ら蜂起するのだが、最後に撃たれて死んでいく間際、チャールズ・ブロンソンは子供たちを呼び寄せ『お父さんたちの勇敢な姿を良く目に焼き付けておくんだよ・・。』と言い聞かせる。泣ける、最高に美しいシーンだ。ここで教訓 2・息子よ、いくらロクデナシになっても子供には人の道を説け!
その次に見たのは『シンシナティ・キッズ(Cincinati kid)1965』だ。これは若きギャンブラーがポーカーの名人位をかけて、伝説の老ギャンブラーに勝負を挑む話である。主人公は途中、周囲の思惑もからみ、友人であるディーラーから八百長を持ちかけらるがそれを断る。実はこの友人の奥さんが妖婦アン・マーグレットなのだが、主人公のマックィーンは可愛い恋人がいるにもかかわらず、この女と密かにできちゃってたりする。この映画には凄い台詞がある。それはエドワード・G・ロビンソン演じる老名人ラーシンのこの台詞だ。
『真のギャンブラーにとって金は単なる道具にすぎません。言葉が思想を語るのと同じように。』
ナールホド、やっと分かった。身近に金を湯水のごとく使ってギャンブルにのめり込み、いなくなってしまった人を知っているけど、あの人は金で自分の思想を語っていたのか!!
さて、物語の結末は言わないでおくが、最後、賭場から出てくるマックィーンをちゃんと元の恋人が待っていてくれるのだ。教訓。3・息子よ、結果はどうあれ、正々堂々と戦えば逃げた女は戻ってくるぞ。
と、ここまで読んでお気づきの方もおられるでしょう。この3本とにスティーブ・マックイーンが出ていることを。長々と書いてしまったが、つまり、今回は息子以上に私の方がマックィーンにハマッテしまったということなんです。4・息子よ、真の男になりたけりゃ、マックィーンの映画を全部見ろ!
ということで、次に見たのが『栄光のルマン』・・・・・・・・いや、もう、止めよう。
いつか“息子に女を教える映画なんてのも・・・・”やって見たい。(楽しそう。。。)
PS 写真は“ツインリンク・もてぎ”の本田博物館内にあるマックィーンの直筆サイン入りポスター。いいな。
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