Long good-bye
味噌を酒で溶くと
味噌汁の味にこくが出ると
あなたは僕に教えてくれた
すべからく世の快楽には
味わう前に 独自の
ほんのもう一工夫がいるのだと
ギャンブルが人生じゃない
人生がギャンブルだと言う人もいるが
勿論 人生はギャンブルではない
ありきたりな幸福の眩さに
誰よりも憧れ 目を瞬かせた人
そして それに背を向けた人
細いロープの上を大きな体で
大股で歩いた人
右側は平凡な天国
左側は華麗なる地獄
あなたがどちらの側に落ちたのかは
今や神のみぞ知るところ
青年が結婚し夫となり父となるその傍らで
あなたは何になった?
何になれなかった?
『お前、太ったな』と、最後にあなたは言って
いや、余計なものを身に付けすぎたのは
あなたの方ですと
僕は 言えばよかったのか あの時
あなたが消えたと知って
初めに浮かんだのは
レイモンド・チャンドラーの小説の中の
この言葉
『さよならとは少しの間 死ぬこと』。
これは小説『豚骨スープの湯気に別れの挨拶を』(カテゴリー『魂のラーメン!』の第1話)のモデルにもなった私の恩人が、実際にいなくなった時に書いた詩。あのラーメン屋の前を通る度、思い出す。
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