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考える人

無形の力―私の履歴書 Book 無形の力―私の履歴書

著者:野村 克也
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 始まった。って、陣痛じゃないよ、プロ野球のオープン戦のことです。開幕までにはまだ約一ヶ月あるので、まだ、調整の一環としてのゲームですが、私のような野球狂にとっては、この列島のどこかで球音が響いていると思うだけでも、心は青空に弧を描く白球のように高く高く舞い上がります。そのせいでか、今朝は長澤まさみが水原勇気、いかりや長介が岩田鉄五郎というキャスティングの“野球狂の詩”の夢を見ました。

 巨人小笠原がダルビッシュからヒットを打った、という話題で盛りあっがっていましたね。さすが小笠原、と言いたいところですが、いかん、いかん私は鬼になると決めたのです。“いいぞー”というところを“引っ込めー”と言わなければなりません。

 良く、“そんな、野球、野球って、あんたどこのファンなの?”と、聞かれますが、私、特にどこってことは無いんです。“そんな野球ファン”は信じられん!と何時ぞや誰かに言われましたが、そういう野球の愛し方もあるんだよ馬鹿野郎、とだけ申し上げておきます。

 しかし、しかし、強いて挙げるなら・・・・・今年は楽天を応援したいと思います。って、球団設立当初から応援しているんだけど、今年は“球けがれなく道けわし”あの“ハンカチ王子”の終生のライバル田中君がいますので、特にって感じです。そして、日本プロ野球界の頭脳、野村監督。この人は楠正成、高杉晋作、秋山好古、チェ・ゲバラ(年齢と風貌から言ってもうカストロと言った方が良いのか)、などなどに匹敵する革命戦士、奇襲、ゲリラ戦のプロなのです。“野村野球”というと、データをしかめっ面しく分析し、それにのっとっただけのつまらない野球と思っている方、とんでもありません。今、野球の常識になっている、ピッチャーのローテーション・システムやクイック・モーションなどなど、数え切れないほどの“革命”を独力で考え出し、定着させたのはこの人なのです。私はロダンの“考える人”を見ると、ノムさんを思い出します。ヤクルト監督時代の“ツーラン・スクイズ”、阪神監督時代の“一試合二登板(ワンポイント・リリーフを使う時、先発ピッチャーをファーストに入れておき、ワンポイントが終わると、再び先発ピッチャーを登板させる)”、また新庄に敬遠球を打つことを笑って許可したのもこの人です。

 私が強く心を揺さぶれるのは、これらの奇策の数々が、様々なピンチやチームの弱さをカヴァーしよとした結果、生み出されものだということです。先発ー中継ぎーストッパー、というローテーション・システムはあの、不世出の天才投手江夏豊をいかに再生し、効果的に使うか?という葛藤の中から生み出されたものですし(さっき、チェ・ゲバラを例えに出しましたが、ゲバラは江夏、野村はカストロというのはどうでしょうか?)、クイック・モーションは世界の盗塁王福本豊をいかに刺すかという激闘の末に生み出されたものなのです。

 去年の前半、テレビで『野村野球が上手く発揮できませんねー』みたいに言われ、『まだ、そこまでやる技術すら身についておらん・・・』と、確かボヤイていましたが、後半、選手たちが、『何故か、監督が言うようにやると、打てる、勝てる。』と言うようになり、野村イズムが少しずつ浸透してきている感じが良く分かります。

野村監督は今年、楽天が3位までに入れなかったら、監督を辞めると断言していて、きっと手ごたえを感じているのでしょう。

 今年は、上でも触れたゴールデン・ルーキー田中くんがいますし、去年一年、肩の不調でほぼ一年を棒に振ったと言ってもいい岩様、岩隈も復調しています。打線はまだ分かりませんが、詰まるところ野球はピッチャーなので、これに一場を加えれば、きっといい線いくと思います。もし、打線が弱くても・・良いんです、野村監督の色紙のサインにはこう書かれています。

『弱をもって強を示す。』と。

 話は変わりますが、漫画家水島新司は『野球狂の詩』のキャラクター、水原勇気を考えた時、ノムさんに相談したそうです。 『女性ピッチャーがプロで通用するということがあるだろうか?』と。で、ノムさんは、『この子にしかないという球が、一つあればワンポイントや一イニングス位だったら抑えらるで。そのボールを考えるのが、女の子をプロに入れるよりも大事なこっちゃ。』と言ったそうで、この一言でドリーム・ボール、水原勇気は誕生したそうです。(ちなみに“ドリーム・ボール”は元南海ピッチャーで、後に参議院議員のもなった江本のナックルと、元阪急山田のシンカーを混ぜたものだそうです。)

 ノムさん、どうか、東宝の映画関係者に言ってくれ、『長澤まさみ主演で“野球狂の詩”を撮れ!』と。きっと、『ミリオン・ダラー・ベイビー』のような、名作になると(なるわけねーだろー)。今朝の夢の中では、映画『涙そうそう』で、船の上から、『にいにいーーーー!!』と、手を振りながら叫んでいたように、長澤は私に『私、野球大好き!!』と叫んでいました(『野球狂の詩』最終話より)。でも、岩田鉄五郎、いかりや長介、死んじゃったんだよな。

PS 今日はひな祭り、女の子の節句です。で、ウチの娘、球、速えーーーよ、ノムさん・・・・(嬉)。

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