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2190日!

20070323114732

“そして大洪水は地の上に四十日続いた。水は増えていって箱舟を持ち上げるようになり、それは地より高いところにに浮かんだ。~<中略>~後に彼は、水が地の表から引いたかどうか見るために、一羽のはとを自分のところから放った。だがはとはその足の裏をとどめるところをどこにも見出せなかった。こうして水がまだ全地の表にあったため、それはかれのところへ、箱舟の中に戻ってきた。そこで彼は手を出してそれを捕まえ、自分のところへ、箱舟の中に入れた。そして彼はさらにあと七日待ってから、もう一度そのはとを箱舟から放った。その後、はとは夕方頃に彼のところへやってきたが、見よ、むしりとったばかりのオリーブの葉がそのくちばしにあった。それで、ノアは、水が地から引いたことを知った。”(旧約聖書 創世記より)

 今日、息子の卒業式に行ってきました。息子のこの6年間には、例のゆとり教育の本格的な導入があり、途中から完全週休2日制になりました。また、昨今の少子化の影響で、学校が統廃合されたりもして、現場のみならず、保護者共々、ある意味で激動の6年間だったと言って良いでしょう。そして、周囲の大人たちのそんな浮き足立った状態が反映されたのかどうか分かりませんが、息子は学級崩壊なるものも経験したし、周囲にはご他聞に漏れず“いじめ”のようなこともあったらしいです。

 息子が通っていた小学校は、二つの学校が統合されて出来たものなので、名前こそ旧来の一つの名を引き継いでおりますが、新生の小学校としては初めての卒業生ということになります。それで、今日、他の卒業式では決してないだろうと思える特典?が二つあって、それは校歌の新曲が聴けたことと、上の写真にある新しい校章が見れたことです。(写真は卒業生の卒業制作であるモザイク作品)。統合に際して、新しく校歌が作られ、作詞は絵本作家の安野光雅氏、作曲が森ミドリ氏です。また校章のデザインも安野氏の手によるもので、二つとも上に引用した旧約聖書のノアの箱舟の話を題材にしています。

 この“ノアの洪水”の話は歴史上、様々な絵画や詩、小説などのモチーフとされています。日本でも戦後最大の詩人と言われた故田村隆一氏が、自らの代表作『四千の日と夜』を、この“洪水”の話になぞらえて書いているエッセイを読んだことがあります。“ノアの大洪水は四十日だったが、自分の洪水(太平洋戦争)は四千日であった”と。

 新曲?は、従来の校歌より、メロディーが現代的で、親しみやすく良い曲でした。三番の歌詞に“ノアの大洪水”を連想させるフレーズがあって、作者の安野氏の、今の世の中に対する批評と、またその中で子供達にどう育っていって欲しいかという祈りが感じられ、素直に感動しました。これは正に社会の中でアーチストの力が、ある方向を指し示すことができるという具体例です。小生『理念』というものが歌にできること、またそれをシンボライズすることの大事さを、やっとこの年になって、しかも息子の卒業式で知りました。

 息子の6年間は単純に計算すれば、2190日、田村流に言えば“二千の日と夜”ということになるのでしょう。勿論、災難だったと受け止めているのじゃなくて、多少の困難も含め、それは豊かな日々だったと思います。ただ、最後に卒業生と在校生が言葉を送りあう例の儀式は、大人たちの“こうであった”と思いたい所を、子供達が演じてくれているようで、少し居心地が悪かったです。

 このブログでも何度か書いているので知っている人もいるかと思いますが、私は2001年から3年連用日記をずっと付けていまして、それは、思いがけず、息子の小学校生活の6年間とスッカリ重なります。今、古いものを引っ張り出してきて、パラパラめくって見ると、実に様々なことがあったなあと思います。そのいちいちをここに書き記すことは勿論できませんが、読んで一つ思うことは、これは子供の成長記ではなくて、親として私の成長記録であるということです。そう考えれば、まだまだ、成長の途上にいる訳ですが、一応、一区切りですので、息子にこんな詩を送りたいと思います。

 

      二千の日と夜のあとでー卒業ー       

        

     お前が生まれたとき、私も生まれた

     血まみれだったのは むしろ 私の方だ

     くらしという闘牛場で わたしは剣も持たず

     ただ 呆然と立ちすくむだけだったからー。

       

     お前は壊した 

     目覚まし時計を

     CDラジカセを 襖と障子の骨を 水洗トイレの排水管を

     だかお前が本当に粉々に破壊したのは 私

     私と母さんだ

     二人はお前に壊され  その度

     新しい自分になるスペクタクルを体験し

     今もその途上にある

        

     だが、今度お前が壊さなければならないのは自分だ

     日々、自分を破壊し 粉砕し 

     自らが粉々にならなければならない

     そして、その残骸の中に

     絶えず新しい自分が

     立っていられたらいい

        

     今日、お前が渡った河は広くて深い

     そして、お前が渡り切った途端 その背後で

     橋は燃え尽きて落ちた

     だが その劫火は祝祭の火

     火は退路を断ちながら 道へ促している

     そして お前は

     これから

     いつか私の視界から消えるほど遠くへ

     旅立つための

     準備にいそしまなければならない

        

     二千日の日と夜のあと

     今度 お前が壊さなければならないのは

     自分だ

 

 この学校にはまだ娘が通っています。統廃合になったばかりで、今はまだ無くなる方の学校の校舎で皆、過ごしていますが、現在、木造新築の校舎が我が家の目の前で建設中です。上の写真の卒業制作の“オリーブをくわえた鳩”はそこにもちゃんと飾られる予定だそうです。これからも娘の用事で小学校に行く度、何度も見られると思うと楽しみです。やっぱり、学校はいいなあ。

 

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詩集「The letter」 (79)」カテゴリの記事

コメント

H君、卒業おめでとう!!

投稿: ほぴ村 | 2007年3月30日 (金) 01時31分

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