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かっこ悪いことはなんてかっこ良いんだろう

51j4hlegtul  この前、ジュリーについて書いたらやはりどうしてもショーケンについて書きたくなりました。萩原健一。日本ロック・ボーカリストの最高峰。役者としても70年代最大のアイコン。そして全てがオリジナルな人。

 ロック・ボーカリストだからと言ってミック・ジャガーにもロッド・スチュアートにもディランにもエルヴィスにも、誰にも似ていません。役者としてだってデニーロなんて意識してない。と言うかそれら全てと対等な人で、つまり本物ということですが、本物の表現者なので、当たり前ですが危険な人です。この人を知ってしまったせいで、私は自らの世代の英雄の一人忌野清志郎すら物足りなく感じていました。

 今のようなきちんと整頓された時代には、彼のような人はことさら糾弾される対象でしかないのでしょうが、その辺はあの故勝新太郎と同じです。彼らのような人は一種の異物、狂気の寸前まで行って、何かを獲得して戻ってくるような、常人にはできない仕事を課せられている人種で、様々な事件で社会にダメージを与える以上に、深い深い快楽=作品を残すことで生存を許されている、そんな存在です。彼と同種の人と言うと他に、故松田優作、ビートたけしなんかが思い浮かびますが、皆、最後には一般社会と和解する回路をなんとか見出し落ち着きます。が、何故かショーケンは、いつまでも危険な存在のままです。

 今は何でも伝説の~というのが流行で、きっと彼の主演したドラマ『傷だらけの天使』や『前略、おふくろ様』なんかは、もう何処で見ても伝説扱いされているのでしょう。私も一瞬、そう紹介してしまいそうになりましたが、この二つのドラマ、今ではどのレンタル・ビデオ屋さんにも置いてあるので、かつてほどの“伝説”感はアリマセン。当時、この『傷だらけの天使』の後が『前略、おふくろ様』だったわけで、あの探偵事務所の手下のチンピラ“修”と、母親思いで板前修業中のサブちゃんの落差を考えると、当時の彼の勢い、ひいては役者としての力量をつくづく思い知らされます。

 故松田優作ドキュメント『甦る松田優作』を読むと、優作はショーケンを神のように崇めていた時期があって、あの『探偵物語』ですら、この『傷だらけの天使』に刺激され生み出されたものだと言うし、またその後の永瀬正敏主演のテレビドラマ版『私立探偵濱マイク』はこの『探偵物語』を相当に意識して作られていたので、『傷だらけの天使』にはどの時代の人が見てもハマルと受け継ぎたくなるテイストがあるのでしょう。 

 私は彼から負けることのかっこ良さを学びました。アメリカン・ニューシネマさながらにです。それは立小便をして振り向きざまに刺されて死ぬマカロニ刑事から一貫していてます。つまり早川義夫のレコードの題名の逆で、“かっこ悪いことはなんてかっこ良いんだろう”、と言うことです。

 『傷だらけの天使』の修もアキラも、ホント言うと惨めでとてもかっこ悪い。せこく立ち回り、馬鹿で、たまに手に触れた愛や正義感は虫けらのように踏み潰されてしまいます。ただ、ない頭で知恵を絞り、手足をばたつかせ、独力で事態を切り抜ける様が痛快だったりするのですが、その後の優しさと見紛う倦怠感があの時代の空気を感じさせ、それがこのドラマの魅力となっています。

 実はジュリーの時のようにショーケンの曲のベスト5、とかやろうと思ったのですが、余り思い浮かびません。と言うか、そういうことを全く無意味にしてしまう人で、彼が歌ってさえいれば何でも良いと言うのが正直なところです。特に、上にあげた『アンドレ・マルローライブ』の頃は、表情、仕草、暗黒舞踏のようなアクション、ディランのような、浪曲師のようなあの変?な歌い方が渾然一体となって、歌でなくても良いと言った感じすらあります。

 しかし、どうしても一曲と言われれば、私は迷わず『祭りばやしが聞こえるのテーマ』をあげたいと思います。“伝説”と言えばこの『祭りばやしが聞こえる』こそ伝説のドラマで、このエントリーを書くにあたって調べたところ、多分、ビデオ化、DVD化はまだされていません。

 レース中の事故により怪我した競輪選手がショーケンの役どころです。そして、その主人公がふと立ち寄った町でのさまざまな人たちと触れ合う様が描かれるのですが、うろ覚えの記憶からすると、出演者の一人だった室田日出男が何か事件を起こして、途中で打ち切りになったような、確かそんな風だった気がします(違ったっけ?)。また、このドラマで競演後、ショーケンはいしだあゆみと結婚しています。

 このドラマの主題歌が柳ジョージ&レイニーウッドが歌う『祭りばやしが聞こえるのテーマ』で、ブルージーな名曲です。当のショーケンも柳ジョージ&レイニーウッドをバッグに歌っていて、聞いてみたい人にはライブアルバム『熱狂雷舞』がお勧めです。ついでにショーケンになりたくてなれない甲斐よしひろも自身のアルバムでカヴァーしています。

 ショーケンは今、例の降板した映画の関係者に対する恐喝事件で、何度目かの低迷期にいます。しかし、映画版『傷だらけの天使』が決まっていると噂で聞いて、長年のファンとしては、なんとか復活を期待したいところです。

 最近、仕事が忙しくて、心身ともに疲れていますが、今日、ほっと一息ついた時、私は無意識に『たまらん節』(『傷だらけの天使』で、ショーケン演じる修が良く口ずさむ歌)を歌ってしまいました。

 

“たまらーん、たまらーん、たまらーんぜー、たまらーん、こけたら、皆こーけーたー”

                                                  By 萩原 健一?

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・やっぱり、これが一番かな。

 

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音楽コラム(89)」カテゴリの記事

コメント

やっぱりきましたか。僕も夕べ妻と『アンドレ・マルローライブ』のDVDを見たばかりです。(双児って恐ろしいですね。)昔ショーケンのインタビューを読んで、越路吹雪の3枚組ベストを買ったりしましたが、昔は命がけで歌謡曲を歌う人々が日本には存在していて、それはそれはジャニスやジムモリソンよりディープな世界を展開していたと推察します。僕はショーケンはその世界の不祥の息子という気がしていて、ロックボーカリストというよりは、不良歌謡ボーカリストというか、そんな感じがします。菅原洋一の『わすれな草をあなたに』や『別れの朝』なんか歌ったら、スッゴイことになっちゃううんじゃないかって思うのは僕だけかな?

投稿: ほぴ村 | 2007年5月17日 (木) 01時02分

ショーケンのことをもっと知りたい人はネット上の百科事典『ウィキペディア』見るといいよ!

投稿: ほぴ村 | 2007年5月17日 (木) 10時15分

はじめまして。
ブログを読んで、すーっと言いたいことを代弁してもらった気がします。
私は学生の時「いつかギラギラする日」を観たり、岸恵子さんのエッセイの中の「ショーケン」から気になる存在となったのですが、本を読むまで音楽活動の魅力を知らずにいました。動画で見て、すごくすごくリアルタイムで気付かなかったことが残念です。だから絶対これからは見逃さないので活躍に期待しています。
本物のアーティストの宿命を、ショーケンには感じます。
生きずらい世の中でも、演じたい、生きたいと言ったショーケンに希望を感じるし、だめな自分にも少し勇気をもらえました。
夏以降かな、待ってます。

投稿: ゆりネコ | 2008年5月 4日 (日) 01時13分

 ゆりネコさん、コメントありがとうございます。私も仕事場で自分より若い世代にショーケンの話をしても、彼らには我がままでドラッグにいかれたどうしようもない人という印象が強いみたいで、常々、残念に思っていました。だから、コメントの内容、とても嬉しかったです。

 『ショーケン』を読むと、役者活動の他に音楽活動についても詳しく書かれていて興味深いですか、本にもあるように動画で貼付けたアンドレマルローバンドの頃は世界ランカー級の凄いステージでした。どうか、DVDなどでご覧になって下さい。

 ある時期から彼は声が出なくなってしまって、それ以降のステージは痛々しい感じがして、私はもう音楽活動の方はもう期待していないというか、過去のものだけで殿堂入りしているといった心境です。

 役者としてはまだまだ期待していて(というか、もう彼しかいないといった感じ)、早くなんでもいいから新作を見たいと思っています。

 期待しましょう。

 

投稿: ナヴィ村 | 2008年5月 4日 (日) 10時13分

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