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『明日に向かって撃て!』~ポール・ニューマンの引退

Img_1592761_17532913_2_4   『スティング』にするかこれにするか迷ったが、見た回数を考えてこれにした。もう何度見たか分からない、自分の人格形成にも影響を与えられたと思っている程、好きな映画。

 何故、このタイミングにこれなのかと言うと、先日、飛び込んできたニュースの一つにポール・ニューマンの引退というのがあって、理由は高齢(現在82歳!)のため、自分が納得できる演技ができなくなったことを挙げている。

『もう、本を閉じるにはいい頃だ。』と本人は言ったとのことで、引き際に際しても、なんと粋な男だろう。

 この映画は2003年に他界した名匠ジョージ・ロイヒル監督の作品で、ジャンルとしては『俺達に明日はない』や『イージー・ライダー』などと同じアメリカン・ニューシネマの傑作として位置付けられている。

 ジョージ・ロイヒル、ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォードと、この3人の名を連ねるだけでなんだか醸し出される特別な香りというものがあって、私はこの3人でこの映画と『スティング』の他に、どうしてもあと一本何か撮ってくれないだろうかと、一頃まで思っていたが、それももう叶わなくなった。でも、『スティング2』とかは見たくないし、ブッチもサンダンスもこの映画のラストで死んでしまうので(一応、生死不明かな?若かりし頃の二人を描いた“2”は別の監督でつくられたが。)、やはりこれで良かったのかなと思う。

 この映画でロバート・レッドフォードはブレイクし、一躍スターになったが、当時、十分有名だったポール・ニューマンにとっても転機となった作品であることは言うまでもない。私は彼が主演した『暴力脱獄』なども相当に好きだが、その頃の役柄が霞んでしまう程、これ以降、ポール・ニューマンには飄々としたイメージや役が定着する。

 それで、この映画のどの辺に一番影響を受けたかと言うと、その飄々としたところと言うか、どんなにヘヴィな状況に置かれても、常に意に介していない風に振舞うところ。これが本当に意に介していないとただの馬鹿になってしまうので難しいのだが、どんな一大事にも、とにかくまずはヘッチャラな顔をする、そんな所。

 好き放題に銀行や列車強盗を繰り返していたブッチとサンダンスも、追跡のプロ集団が組織され、段々と追い詰められて行く。ついに追い詰められ川に飛び込まなければ逃げ切れなくなり、それでいつもニヒルなガンマンのロバート・レッドフォード演じるサンダンスが『俺は泳げないんだ!!』と言って、ポール・ニューマンが大笑いするシーン。好きだ。マイナーコードが転調しメジャーに変わるような瞬間。この感じは全編にわたって貫かれていて、ラスト、完全に包囲されボロボロになってすらまだ、二人はそうすれば状況が逆転するんだとばかりに、へらず口を叩いている。

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 この映画でもう一人忘れてはならないのが名花キャサリン・ロス。もしかしたらこの映画でのこの人が私の初恋の人かもしれない。バートバカラック作、BJ・トーマス唄の『雨にぬれても』をバックにポール・ニューマンと自転車に二人乗りするところ、まさに映画史上に残るシーンだが、私はたまにこのシーンだけを見るためにビデオをセットしてしまうことがある。

 この映画は西部劇の形を借りた青春映画。“青春”って常に何かから逃げ回っているような時期でもあって、追われる二人のギャングという設定はそれだけで秀逸だが、青春の終わりを西部開拓時代の終焉に絡ませたところは、作られた1969年当時、アメリカという国で何かが終わったことを訴えようとする意図があったのだろうか?

 冒頭、セピア色のスクリーンがカラーになってラストで再びセピア色に戻る仕掛けによって、誰もが思い当たる無軌道に生きた時代の追憶にしばし浸り、そしてまた現実に戻されるような・・・・・そんな切なさの中に取り残される。

 ポール・ニューマンの引退については一つの時代の終わりを告げるとか、そんなものではない。彼の時代はとっくに終わっていて、私は古い映画の中の彼を見るだけで十分満足だ。しかし、一つだけ贅沢を言わせて貰えれば、去年大ヒットした映画『カーズ』で、彼が声だけで演じたああいった役柄で、最後に西部劇に出てもらいたかったなあ、と思う。

 昔、ならした伝説の存在だけど、今ではそんなこと覚えている者など誰一人いなく、ひっそりと陰で生意気な主人公の若造に何かを授けるおいぼれのガンマン。

 うーん、82才のポール・ニューマンにぴったりな役柄だと思うけどな。でもしょうがない。

 お疲れ様、ポール。確かに、本を閉じるにはいい頃だ。

 

 PS : とここまで書いてWikipediaで調べると、映画関係者たちによってロバート・レッドフォードとの最後の競演作が企画されていたとのことを知った。チクショー、そう言われると、やはり見たかった・・・・・・。 

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コメント

ちょっと時代がずれるかもしれないけど、この名作をサム・ペキンパーが監督をしてたらラストシーンは
ブッチ&サンダンスが一斉射撃で蜂の巣にされスローモーションでスクリーンに血のりがベットリ・・・。
ジョージ・ロイヒル監督でよかった。よかった。

投稿: jazz坊主 | 2007年6月 3日 (日) 23時50分

失礼、“ワイルドバンチ”も69年でした。

投稿: jazz坊主 | 2007年6月 3日 (日) 23時56分

 ラストが鮮烈過ぎると、それ以外記憶に残らなくなるような気がします。『俺達に明日はない』も最後のウォーレン・ビューティーとフェイ・ダナウェイが蜂の巣になるところしか余り覚えていない。

 サム・ペキンパーで一番凄いと思ったのは『わらの犬』だな。人間の本性が暴力だといことをあんなにはっきり見せた映画はないよ。

 ペキンパーは映画界の今村仁かもね。

投稿: ナヴィ村 | 2007年6月 4日 (月) 21時06分

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