« 暑中お見舞い申し上げます | トップページ | 『かもめ食堂』~極上の“ボー” »

スーパースター解凍!

 

Cover_large  昨日、テレビで未来の科学技術に託して死体を冷凍保存する人々の話を見た。アメリカでの話しだが、そういったことを引き受ける団体(会社?)がアメリカにはあり、亡くなった有名人の中にはこの処置を受けることによって未来に再生されることを信じ、遺言する人も少なくないらしい。

 頭部と胴部は切り離され保存される。胴部は大体が病気や加齢により、あまり再生しても意味が無いので重要視されていない。問題なのは頭部、脳、つまり記憶ということなのだが、将来、DNAの技術によって細胞からクローン人間が作られたとき、その記憶をどういう方法にせよクローン人間に移すことができれば、人間は永遠にこの地球に存在できることになる。まさに肉体は各時代を泳ぎ切る小さな舟のごとき存在で、何度も何度も乗り換えられ、人は記憶の量だけを日々増やしながら、地上に居座り続けることになる。

 番組では1950年代の大リーグのスーパースター、テッド・ウイリアムスのケースを紹介していた。テッド・ウイリアムスは1990年代に書いた遺言と2000年代に入って書いた二つの遺言を巡って遺族の間で裁判が起こり、胴部は火葬され海へ、頭部は冷凍保存されている。アメリカのある州では故人の意思を尊重するということが法律上ことさら重視されており、裁判になった場合、こんな荒唐無稽な話でも裁判では概ね冷凍保存側に有利な判決が出る。

 私が一番興味を持ったのは“記憶”をどのようにクローンに移植するのか?その場合はパソコンの上書き保存(下書き保存と言うべきか?)みたいになるののだろうか?興味は尽きない。

 例えばジョン・レノンのDNAからクローン人間を作ってもそれがジョン・レノンであるとは限らない。なぜなら環境や生きる時代、外部の影響によって全く違う人間に成長していく可能性だってあるからだ。未来の街をジョン・レノンと全く同じ顔と声を持った配管工やパン屋が無名のまま人生を送っていることだってあり得る。

 しかし、これに前回の人生の記憶が丸ごと移植されたらどうだろう?クローン技術によって生まれた赤ん坊はいきなりジョン・レノンである。成長するに従って“ああ、前回、俺はリズム感が悪かったんだよな、小さいうちからギター練習しとこ”みたいになってもっともっと完璧な、そして余り面白みの無いミュージシャンになっていくこともあり得る。ジョン・レノンに限らず、各界の有名人やスーパー・スター、また鼻持ちなら無い金持ちどもも永遠に地球上に存在することになる。というよりこの技術が当たり前になった未来では、地球上には永遠に同じ“記憶”が居座り続けていることになる。

 これって人間にとって幸せなことなのか?“千の風になって”なんて歌も全く意味が無くなる(別にいいけど)。

 以前、谷川俊太郎が死ねないアトムの哀しみについて書いた詩を読んだことがあるが、本当に悲しかった。ああ、永遠に生きるって残酷なことだなあ、心底思った。

 肉体と同じに記憶もやはり風化してしかるべきものもある。忘れることによって人は新しい経験を受け入れいくスペースを心の何処かに確保している筈だから。

 上に紹介した新作の題名についてポール・マッカートニーは携帯電話のデスプレイの表示“Memoly almost full(メモリ容量が一杯です)”から着想したと言っていた。

 実は私はメモリが一杯の人間で、人に感心される程、過去のつまらないことを実に良く覚えている。ケルアックに親近感を覚えるのも彼が“メモリーベイブ”とあだ名されるほど、驚くべき記憶力の持ち主で、その辺に共通の何かを感じているからに他ならない。だが、妻に言わせると、私という人間はは最近の肝心なことは何一つ覚えていないらしい。きっとメモリが一杯でディスクが新しいデータを拒否っているのである(笑)。

 ここまで書いて気づいたのだがクローンに過去の記憶を移す技術が確立されたとしたら、それはあかの他人に誰かの記憶を移すことも当然可能なわけで・・・・・皆さん、将来、街で丸眼鏡をかけてジョン・レノンになりきって歩いている人を見たら優しくしてあげて下さいね。

 その人、ホントにジョン・レノンかもしれませんよ。・・・・・ジョンが冷凍保存されていればの話ですが(ヨーコならやっていそうだが?)。

PS    君の新作紹介なのに。ごめんねポール。 

|

« 暑中お見舞い申し上げます | トップページ | 『かもめ食堂』~極上の“ボー” »

音楽コラム(89)」カテゴリの記事

コメント

そういえば、
永遠の命への欲望と悲しみは漫画「火の鳥」の主題でしたね。
記憶がアイデンティテイであるのは映画「ブレードランナー」の主題でしたね。

投稿: greenwich village | 2007年8月24日 (金) 14時36分

greenwich villageさん、先日は店に行けて嬉しかったです。良い店ではないですか。ブログにあったステンドグラスのライトも素敵です。

 エントリーにあるような技術が本当に実現されたら色んなことが起きるんだろうな。“ビートルズ、千年振りに再結成”とか(全員冷凍保存されていればの話であるが)、ローリング・ストーンズ結成400年とか。

でも、皆、飽きて見向きもしなくなってるだろうな。

 

  

投稿: ナヴィ村 | 2007年8月24日 (金) 21時36分

バリー・ボンズ50,000号ホームラン!
とか
イチロー1億本安打達成!
それは
つまらない世の中だ。

投稿: jazz坊主 | 2007年8月25日 (土) 20時25分

 jazz坊主君。でも、もし可能なら俺はコルトレーンの“黄金のカルテット”を生で見てみたかったよ。きっとずっと射精が続いているような感じになってしまうかもしれない。チャリー・パーカーとかもね。
 今朝、ラジオでマックス・ローチの追悼をやっていた。チャリー・パーカーと一緒にやっていて、最後はラッパーとコラボしてたなんて、彼もマイルス的な前進あるのみ、みたいな人生を送った人だったんだね。

 ジャズ・ジャイアンツと言われている人たちはこれで本当に絶滅しまった(まだ、誰か生きてるか?)。

 その昔、俺の自慢はアメリカでストーンズのライブを見たことだった。当時、彼らはドラッグの問題で日本に入国できなかったから。

 で、今の俺の自慢はマイルス・デイビスの演奏を至近距離で見たことだ。でも、たった一曲だけ。曲は『ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー』。渋いでしょ。グリーニング・オブ・ザ・ワールドって言うオノ・ヨーコ主宰のイヴェントでだった。故下村さんが業界のつてでいい席を取ってくれた。

 でも、これも冷凍保存技術で永遠にマイルスが生きていたら自慢にも何もならなくなってしまうな。

投稿: ナヴィ村 | 2007年8月25日 (土) 21時10分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/186188/7649832

この記事へのトラックバック一覧です: スーパースター解凍!:

« 暑中お見舞い申し上げます | トップページ | 『かもめ食堂』~極上の“ボー” »