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『天国から来たチャンピオン』~Blind Love

Photo_6   初めて逢った人の中に、かつて心を通わせあった亡き人の面影を感じたという経験はないだろうか?

 この秋から始まった反町隆史主演のテレビドラマ『ドリーム・アゲイン』を見て、すぐにこの映画が元ネタであることに気付いた方は少なくないだろう。私はこれまでの人生で、見た後に泣いたコメディ映画というのが2本あって、1本はチャップリンの『街の灯』、そしてもう1本がこの『天国から来たチャンピオン』だ。この映画、1978年のアカデミー賞では主要8部門にノミネートされている。

 ウォーレン・ビーティ演じる主人公は交通事故で死んでしまうアメリカン・フットボールの選手ジョー・ベンドルトン。彼はトレーナーのマックスと共に故障を克服し、レギュラーとして復帰が決まった矢先だった。トンネルの中で事故に合い、気が付くと彼は天使と天国に行く前の中継地点のような場所にいて、しかも今回の死は天使の手違いで実はまだ50年もの寿命が残されていたことが判明する。しかし下界では時すでに遅く、肉体は火葬に処された後で、彼の魂は肉体に戻ろうにももはやどうすることもできない。それでもどうしてもスパー・ボールに出場したい彼は、仕方なく他人の死体に乗り移りもう一度フット・ボールの試合に出ようと考える。

 この映画の一番の見所は他人の体に乗り移った彼が、生前親しかった人にいかにこの他人が“自分”であるか?を知らせるかというところと、逆に周囲の人間がいかに目の前の初対面の人間が生前の“彼”であるかを知るかと言うところにある。また、彼が乗り移った肉体は傲慢な富豪のものなのに、その富豪が突然、愛すべき人間に変ってしまって、その変化に困惑する周囲の反応も一々笑いを誘う。

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 物語は富豪の自分勝手な事業計画のため故郷が公害で汚染されるのに抗議にやって来た女性とこのジョーが恋に落ちるところから、単なるコメディーではない深遠な人間ドラマへと様相が変わる。そして、乗り移った先のこの富豪にもやがて死が訪れると知って、彼はこの恋人に謎かけのようにこう告げる。『いつかフットボール・チームのクォーター・バックと出逢って、何かを感じることがあったら、その直感を信じて』と。

 上の台詞以外にも、下手なサックス、首を直す術?、帽子、大砲等、様々な小道具が伏線として随所に張り巡らされていて物語は一気にラストへと突き進む。

 この映画を見て私がいつも思うことは、“愛”という心の働きは目で見ることができない、ということ。またいつもそばにあるのにそれを常に実感して生きることも。

 盲目の少女に対する無償の愛を描いたチャップリンの『街に灯』も、今回のこの映画も、言わば視覚では認識できない“愛”という抽象をいかにして相手に伝え得るかという物語。そして本来目に見えないものが見えた瞬間には、息を呑むほどの美しさと同時に儚さが伴っていて、そこで私達は喜びと哀しみとの二重の感情に囚われることになる。

 この『天国から来たチャンピオン』において儚さと哀しさを体現しているのはトレーナー役のジャック・ウォーデンだろう。終盤、主人公の記憶が段々と元の肉体の持ち主と同化して、ついに消え去ってしまったことを1本のサックスを通して知った彼とビーティとの哀愁漂うやり取りは映画史に残る名場面だ。そしてそれは、その後に来るさらなる美しいシーンへと続くわけだが・・・・・・・それについてはここで言うのは止めておこう。

 テレビドラマの『ドリーム・アゲイン』は昨夜で第2回目だった。元ネタである映画との違いは、取り上げられているスポーツがフットボールじゃなくて野球ということは言わずもがなだが、もっと大きな点としては主人公が乗り移った資本家と敵対する弁護士が主人公の元カノ、婚約者だと言ったところだろうか。また、昨夜の回を見ていると、他人の中に入ってしまった魂は、自分が元は誰だったかを口外することは許されていないようだ。

 映画のストーリーからこのドラマの今後の展開を予測するのも楽しいが、もし、映画のようなら最後にジャイアンツの優勝シーンが必要なわけで、しかし、昨夜、ジャイアンツはドラゴンズに負け、日本シリーズ進出はならなかった。まあ、リーグ優勝は果たしたし、その辺はドラマだから何とでもなると思うが。

 ウォーレン・ビーティは学生の頃、フットボールをやっていたそうで、映画の中のクォーター・バックはなかなかキマッテいた。この映画自体がそもそも40年代の映画『幽霊ニューヨークを行く』のリメイクで、初め主人公はその元の映画と同様にボクサーの設定だったということだ。あのアリが主演という企画もあったらしいが、それが叶わず、監督・製作でもあったビーティは自らができるフット・ボール選手という設定に変更したそう。

 翻って、反町隆史の野球選手ぶりはどうか?バット・スイングがどうにも素人臭くて、私にはどうしてもプロらしく見えない。

 まあこれも、ストーリーの展開同様、今後に期待することにしよう。

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コメント

 僕の娘が生まれる前に、僕の身の回りでは多くの人が生命の危機にさらされたり、命をを落としたりしました。(愛犬まで…。) だから、人の生き死にについては随分考えさせられましたし、正直、傷も癒えてはいません。でも、娘が誰かの生まれ変わりかも?と考えるとまた別の感慨を持って子育てができそうです。そのように亡くなった人の死を無駄にしないようにしたいと思います。

投稿: ほぴ村 | 2007年10月24日 (水) 12時56分

 それより、もう少し君のブログで、可愛い姪を見せてくれよ、少し大きくなったでしょ?

それと Mackさん、おめでとうございます。何故か、コメント頂いた場所では送信できないのでこちらの欄で返信で、スイマセン。無事な出産、お祈りしております。奥様をお大事になさって下さい。

投稿: ナヴィ村 | 2007年10月25日 (木) 20時21分

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