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アメリカVSジョン・レノン~闘う男

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 今日、新橋での仕事がやや早く終わり、せっかく港区にいるのだからと六本木ヒルズまで足を伸ばし、映画『Peace Bed アメリカVSジョンレノン』を見てきた。

 見て、まず最初に思ったのは、当時のニクソン政権は意外とマジでジョン・レノンにビビッていたのだぁ、と言うこと。そして、行動を監視され、電話を盗聴されたりしていたジョン&ヨーコの側も相当に恐ろしかったらしく、当時を振り返るヨーコは今でもそれについて語る時、目は涙眼で僅かに震えているのが感じられる程だった。ジョンも怖い、怖かった、と繰り返し語っている。

 現在ではロックスターや有名な俳優・女優等が政府を批判したり、反戦運動等の社会活動に身を投じるのは珍しいことではない。逆に権力の側もそういった有名人を広告塔にしたり、選挙の票集めに利用したりするのが当たり前になり、何も不穏な状況が現出するようなことはない。

 ある日、世界で最も大衆に影響力のあるスターが、畑違いのように政治的な発言や奇想天外な平和運動を開始する。初めは有名人の気まぐれ、奇行の一種と見なしていたメディアも、そのスターのあまりのクレバーさとその社会に対する影響力のダイレクトさに驚き、段々と無視できなくなる。

 この映画を見るとメディアも権力の側も、そしてジョン・レノン自身も、この初めて遭遇する事態にどうしていいのか分からない様子だ。

 映画の中でも語られていたが、百万人のデモ隊が『ギブ・ピース・ア・チャンス』を歌うのを見て、ニクソン政権は“もしかしたら、俺たちは本当にこの男に倒されてしまうのでは?”と危惧を抱くようになる。

 そして何にもまして驚くのはジョン・レノンの頭の回転の速さだ。前から知っているつもりでいたが、この頭のキレかたは尋常じゃない。

 例のキリスト発言でビートルズボイコット騒ぎの中、他のメンバーは困った顔をするばかりなのに、ジョンはただ一人よどみなく喋り続ける。『ビートルズのレコードを焼く人にはその権利がある。そして僕にもそれを無視する権利がある。』と。

 また、当時メディアには“奇行”としか見られなかった“ベッド・イン”の最中、ある女性インタヴューアーに『あなたはピーターパン、ネバーランドの住人なのよ、それで結局あなたは何になったの?』と、言われると瞬時に、『ああ、29歳になったョ。』と切り返す。

 国外退去命令が出された時も、『自分は法律とかそういったことには全く弱いんだ。』と言いながらも直感でその命令が違法であること、そして戦い方によっては自分がアメリカにい続けることができると確信する。

インタヴューアー 『ジョンさん、アメリカにい続けられる可能性はどの位だと思いますか?』

ジョン・レノン   『99:1』

インタヴューアー『どっちが99でどっちが1?』

ジョン・レノン     『いらる方に99。』

インタヴューアー『何故?』

ジョン・レノン    『僕は自信過剰なんだ。』

 20世紀が終わる時、“20世紀を代表する人物”の1位とやらにジョン・レノンが選ばれた時、なんだよ、ジョンもまるで偉人扱いかよ、と、私は違和感を覚えた。が、考えるにハネムーンをどうせパパラッチに追い回されるんだからと逆に“ベッド・イン”して平和運動を展開したり、広告で平和を宣伝したり、またコンサートで政治犯の釈放を訴えたり等、彼の活動はとても今日的で、それら全てが彼から始まっていることを考えると、20世紀を代表する人物”の1位というのは今思うと、相応しかったかもしれない。

 しかし、この映画は単なるジョン・レノン礼賛の映画ではない。ブラック・パンサー党のボビー・シェールや、ジェリー・ルービン、アビー・ホフマン等、当時の急進的な左派の革命家達にジョンが利用された側面もしっかり描かれている。

 映画の中に印象的な発言がある。“ナイフはただテーブルに置かれていたら、ただのナイフにすぎない。しかし、握った人間が誰かで凶器になる”と。ジョンは単なるナイフなら良かったものの、その背後には上に挙げたような人物達がいて、権力の側にしたら、そこに億万長者でスーパー・スターのジョン・レノンから資金が流れたりしたらもう無視できないということになったのだろう。そして、利用されているのを知りつつも真っ向からその役を引き受けてしまうジョン・レノンも凄いなあ、と思う。『フラワー・ムーブメントは失敗だった。だが、それがどうした。やり直せばいいじゃないか。』と聴衆に叫ぶジョン。彼は本気で、ブレが無く、頭がぶっ飛んでいる人ように見えてとてもクールでポジティブ、そしてブルース・ブラザース以上に前進あるのみの人なのだった。

 

 また、ふんだんに盛り込まれている音楽についてだが、ジョンの喋りをづっと聞いていると、この人って作詞するのに苦労しなかった人なんだろうな、と思った。話す言葉のアクセントをちょっと発展させただけのものが曲になっている、まさにそんな感じ。『ギブ・ピース・ア・チャンス』、『ハッピー・クリスマス(戦争は終わった)』、『パワー・トウ・ザ・ピープル』、『インスタント・カーマ』、『イマジン』、『ジョンとヨーコのバラッド』などなど、それらの歌詞は喋り言葉の延長のような、今のラップに近い印象を受けた。生きていたらこの人、絶対にラップをやったろうな、と思う。

 そして最後に一つ発見したことは、ヨーコって凄いいい女だなってこと。前から薄々思っていましたが、この頃のヨーコーは存在自体がエロティックでとても奇麗だ。

 権力の側に完全に包囲されながら誰はばかることも無く言いたいことを言い、行動し、抱き合いキスするジョンとヨーコ。ああ、かつての世界ではこんな人がスーパー・スターだったんだなあと、嬉しい気持ちになると同時に、現在を顧て一抹の寂しさを覚える。

 この映画はベトナム戦争の時代におけるある芸術家の戦いを描きながら、イラク戦争の今をあぶりだそうとの意図があるのは言うまでもない。

 ジョン・レノンって凄い勇気のある人だったんだなぁ、エレカシの歌じゃないけど“戦う男”だったんだよなー、本当に国家によって暗殺されたのかもなあ・・・・と、帰りの地下鉄の中、しみじみと思った。

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 それでは最後にお言葉を賜りましょう。

『問題なのは、平和が簡単に実現できるってことに誰も気付いていないことなんだ。』 

                  by ジョン・レノン

 

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コメント

 社会正義を訴えた男が、子供を得て家庭人になる。表情が豊かに、柔和になり、優しい眼差しで世界をとらえ直す。
そんな時が危ないんだよな。俺は15の時にレノン暗殺を経験して、今の自分が一番危ない、何か予期せぬ何かが自分の身に降り掛かるんじゃないかと思ったりする。(そんなはずはなけどね!冗談、冗談。)
 闘うビートル、やっぱカッコいいね!若い人たちに見てもらいたいね。俺も早く見たい!!!
 

投稿: ほぴ村 | 2007年12月18日 (火) 01時28分

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ミュージシャンとしての「彼」の功績は周知の事実ですが、ちょっと違った角度で知ることができますよ [続きを読む]

受信: 2007年12月16日 (日) 21時18分

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