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火の効用


火は怒りの形
火は愛の温度 火は罪人の涙
火は優しさの色 火は悲しみの星 
火は闇の叫び 火は水の戦友 火は風の愛人
火は夢の記憶 火は岩の眠り 火は孤独の歌
火は憎しみの熱さ 火は獣の震え 火は戦士の剣
火は聖者の知恵 火は鳥の羽ばたき
火は旅人の祈り

火の効用についてあなたは語った
火の神聖さについて
サンフランシスコ州サンタ・バーバラの町
海沿いのメキシコ料理の店で
あなたは泣いた
会えない娘を想って
太平洋の巨大な水の暗いうねりが
少女の影を
砂にして崩していた

“あの世なんてこの世とさして変わりはないさ”
赤いTシャツとジーンズ姿で
棺の中 あなたは今 花に埋もれている
黒衣の群れが寄ってたかって
新しい旅の身支度に
世話を焼きたがる

あなたの火はちょうど良かった
誰を焼き尽くしもしなかった
あなたの温もりが今、多くの人の胸の中で
燃え上がり 緑の炎の
共和国をつくる

そしてまた火を潜る旅です
どうか良き旅を 
そして ありがとう
あなたはとても
温かかったー


 

 今日、恵比寿の「縄」というお店で、去年の12月6日、火事でこの世を去った下村誠さんの追悼の催しがあり行ってきました。そして本日9日は、昔、私がアメリカで一文無しになって困っていた時に助けていただいた日橋さんという方の命日でもあります。波乱万丈な人生を生きた日橋さんの生涯をここで詳しく述べることはできませんが、主にネイティブ・アメリカンの人達の権利のためにアメリカで、日本で様々に尽力した方です。

 12月9日と言うとジョン・レノンの命日ということで毎年なんらかの感慨を持ってはいましたが、この日橋さんといい、去年の下村さんといい、一年のこの時期は私にとってリアルに死者を追悼する季節になってしまいました。

上の詩は日橋さんの葬儀の時に書いたもの。今日、「縄」では日橋さんの奥さんの歌もあり、それは初々しいネイティブ・アメリカンの歌でした。

 日橋さんと下村さん、二人に。改めて合掌。 

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