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『ボルベール<帰郷>』~ラマンチャの風車

Photo_2    リリー・フランキーの『東京タワー』は母と息子、『エデンの東』や『フィールド・オブ・ドリームス』は父と息子、そしてこの『ボルベール(帰郷)』は母と娘のお話。

 昔の美空ひばりとおかん、また私自身の祖母と母、妻と娘などを見ていて思うのだが、親子関係の中でもこの組み合は他のそれと比べ、一体感といい、当人同士の確執や葛藤といい、最も濃ーーい物語を秘めていると言えないだろうか?

 去年、封切られたこの映画はペドロ・アルモドバル監督の作品で、『オール・アバウト・マイ・マザー』、『トーク・トゥ・ハー』に続く彼の“女三部作”の最終章にして最高傑作との触れ込み。また主演のペネロペ・クルスはこの作品で第79回アカデミー賞主演女優にノミネート、しかもスペイン映画でのスペイン女優のノミネートは史上初とのことらしく、きっとこの映画は今後ペネロペの代表作ということになるだろう。

 ペネロペ演じるライムンダは15歳の娘を持ち、失業中の夫の分も働く、言わば“スペインの肝っ玉母さん”的な女性。美人で、スタイル抜群(胸がデカイ!)、気性が激しくしかも行動的と、もし、実際にこんな女性がそばにいたら、いくらいい女でも手が出せないなーと言う位の存在だ。彼女は随分前に両親を火事で亡くし、その代わりとても大事に思っている叔母がいる。そして、ある夜、娘が関係を迫られ難を逃れようとして義父を刺し殺してしまい、その始末におおあらわな最中、そこに叔母の死が知らされて・・・・・。

 この映画の主人公ライムンダが暮らすのはマドリッドで、彼女の故郷はラマンチャ。このマドリッドーラマンチャ間を主人公他、ロラ・ドゥエニャス演じる姉のソーレが行き来するのだが、その車での道中、何度も風力発電の風車が立ち並ぶ景色が見られる。

 ラマンチャと言えば“ラマンチャの男”、セルバンテスの風車に立ち向かったドン・キホーテだが、現代のラマンチャにこの風力発電の風車が立ち並ぶ風景はウイットが効いていると言うか、なんともユーモラスな感じがして、私は物語以外のところで妙に感心してしまった。

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 そして、またまたペネロペ・クルスだが、この人、この監督の名作『オール・アバウト・マイ・マザー』を足がかりにハリウッドに進出した人だけあって、古巣に帰って正に水を得た魚のようだ。男性誌的な視線で眺めてももちろん魅力的な彼女だが、今回はそれプラス土俗的な、伝統に根ざした母の強さが加わって貫禄十分、きっとこんな女性に怒られたら存在そのものを否定されているような気になって怖いだろなあーと、そんな感慨さえ抱いてしまう。

 叔母の葬儀の後、ライムンダの元に死んだはずの母を目撃したとの情報がもたらされる。幽霊なのか?それとも本当は生きていたのか?しかもその母はある衝撃の真実を携えていて・・・

 この映画の題名『ボルベール(帰郷)』とは単にマドリッドからラマンチャに行くことではない。それは女として、母として生きる主人公が一人の「娘」に帰ることを指している。

 主人公ライムンダは現代的であると同時に、しっかりとしたスペイの伝統に根ざした女だ。そして、もしかしたらラマンチャの風力発電の風車は、そのことを象徴しているのかもしれない。

PS 映画の中でペネロペ・クルスの歌が聞ける。なかなか良い曲、そして結構・・・上手いですよ。

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