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二人のプロフェッショナル

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 この年末から年始にかけて見た様々なテレビ番組の中で、心に残ったものが2つあった。一つは正月2日にNHKで放送された『プロフェッショナル~仕事の流儀 イチロースペシャル』、もう一つは7日月曜日夜、テレビ東京放送の『カンブリア宮殿』にゲスト出演した野村克也現楽天ゴールデン・イーグルス監督の言葉である。

イチローの方は天才であるがゆえの苦悩、周囲からの期待とプレッシャー、そしてそれと戦うための凄まじいまでの努力と自己コントロールへの執念が、今回、特別に許された取材映像とインタビューで余す所無く伝えられた。

 この番組、一々驚きかつ感心する場面の連続だったが、私が一番感じ入ったのは、イチローの生活習慣だ。イチローの一日はその行動が時間単位で細かく決められていて、日々その段階を正確に踏むことで、彼は無意識にも集中力を最高の状態に維持出来るよう努めているようだった。

 キャスターの住吉美紀曰く『和の“~道”というのは皆、細かく所作が決まっていて、その段階をきちんと踏むことによって集中力が高まるようになっている』とのことで、イチローの生活もまさにそれに似ている。7年間、毎朝、同じ具無しカレーを食べ続けるイチローは、生活そのもが“野球道”“イチロー道”とでも言うべきか。

 番組後半は昨年の一厘差までを競い合った首位打者争いの様子が中心で、その手に汗握る争いは見ているこっちまで胃が痛くなりそうだったが、その戦いについに敗れ、首位打者を逃した打席の後、守備位置のセンターに戻ったイチローがそこで泣いているのを見て私は驚いてしまった。イチローは帽子を深々と被り涙を悟られまいとした風で、まるで、それが甲子園で負けた高校球児のような、もっと言うと少年野球大会でチャンスに三振した子供のような表情だったからだ。天才とは初期衝動をずうと維持し続け、それをどこまでも高めるため努力を惜しまない人のことを言うのだなあ、とつくづく思った。

番組中のイチローの言葉。

『プロとは、ファンを圧倒し、選手を圧倒し、そして圧倒的な結果を残すこと。』

 

1135083711   一方、野村克也、我等がノムさんの方は、南海にテスト入団、しかもすぐ首を言い渡され『今、首にされるなら南海電鉄に飛び込んで死ぬ。』と、かけあってなんとかプロの世界に残ったという人だ。

番組の印象は、キャスターの村上龍がなんとか情緒的な面を排し、ノムさんの理知的、論理的な面を引き出そうとしているように見えたが、ノムさんの話は情緒的でもあり理知的でもあって、もう一人のキャスター小池栄子の涙を誘う一方、会場の経営者や管理職の人々にメモをとらせるような論理的な組織論もあって、含蓄のある言葉の数々だった。

 番組中、野村の最高傑作と言われた古田が出てきて曰く、野村の人物評価には3段階あると言う。1、無視する。 2、褒める 3、けなす、とあり、見込みの無いやつは無視、もう一段階上があると思える奴は褒める、一流はけなす、の3段階である。ちなみに現役時代、古田は一度も褒められたことはなく、けなされ続けだったと言う。去年のマー君も、前半、ベタ褒め、後半、勝ち星を挙げ実績が出てきたあたりからはけなされ続けだったので、古田はマー君は一流と認められたと言い、ノムさん本人も『古田は鋭い』と感心していた。

番組中の野村の言葉

『“体力”“気力”は当たり前。“知力”の一点で戦うのがプロ。』

 私はイチローも野村も好きだ。イチローはスパー・ヒーロー、陰で人間「鈴木一朗」が七転八倒している姿も含め、彼と同じ時代に生まれて幸運だったと思う。ノムさんの言葉は中小企業の経営者のようであり、兵法書を読んでいるようであり、その実、口うるさい父親の苦言のようで聞いていて耳が痛く、またありがたい。

 私は詩なんか書いたり、ロックの詩に感じ入ったりしながら生きてきた人間だが、実は気が付くと一番教訓として肝に銘じて聞いているのは野球選手、野球人の言葉だったりする。なんでだろう?父が社会人野球の選手だったからだろうなあ、やっぱり。

最後にこのブログで野球ネタの記事を一番初めに書いた時、引用した言葉をもう一度ここに記しておこう。

「ベース・ボールは人生の一部などではない。人生がベースボールの中にあるのだ。」BYロジャー・エンジェルス  

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