祈る人
丘の向こう 黒雲が迫り
小さな鳥が
燃え滾る空の火口へと
落ちていく夢も
「生は死が広めた噂」と、ある詩人は言った
「人は死体を担いだ 小さな魂にすぎない」とも
だが、ぼくはこう言う
「生は永遠に続くひと連なりの夢」なのだ と
幾つもの
氾濫する夢の断片を重ね
この宇宙の庭で
ぼくたちは しばし
共に生きた
ぼくの夢には最初からあなたがいた
食べかけのケーキと用意された衣服
言いそびれた言葉と列車の響き
最後の日も
あなたはきっと
部屋のガラス窓越しにあの
梅の木を見ていた
白紙の新聞が届き
世界で
何も起きていなかった
あの日
森羅万象にあなたを見て
黄昏れるぼくに
空から
語りかける
と ある声が聞こえた
花が散り流れるのは
ただ
風の行方を
つきとめるためだ と
ぼくはしばらくは
神にではなく あなたに祈る
さようなら 母さん
ありがとう
また 会えますよね
あなたはきっと
部屋のガラス窓越しにあの
梅の木を見ていた
白紙の新聞が届き
世界で
何も起きていなかった
あの日
母さん
あなたは今
着古した肉体(からだ)を焼き捨て
鮮やかに旅立ったところ
若く、美しく
あなたから何度も出て行ったぼくに
今度は見送る者の
寂しさを残して
森羅万象にあなたを見て
黄昏れるぼくに
空から
語りかける
と ある声が聞こえた
花が散り流れるのは
ただ
風の行方を
つきとめるためだ と
ぼくはしばらくは
神にではなく あなたに祈る
さようなら 母さん
ありがとう
また 会えますよね
ぼくは
あなたの子供で嬉しかった
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