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破壊の夜?

 

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販売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
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 年度末に伴う移動ということもあって今日はクライアントの事務所の引越しだった。私他2名で新橋ー大塚間をハイエースに荷物を積んで何度か往復ということになった。

 私を手伝ってくれたのは八王子在住のKさんとスペイン人のDさんである。Kさんは喋る言葉が全ておやじギャグという特異な芸で周囲を呆れさせ、黙らせ、白けさせ、という人だが、いつも体中を泥だらけにしている働き者でもあって、私は日頃から彼に好感を持っている。いつも年下の私を慕ってくれ、また年上らしく時には叱咤激励もしてくれるという極めてまっとうな人だ。私には彼がオヤジギャグを言い、周囲を白けさせるその瞬間こそが可笑しく“芸”だと思え、また時事ネタを絡めていつも延々と喋り続けているのも別に苦にならない。

 一方、Dさんは私が面接し採用した縄文土器が大好きなスペイン人である。しかし、今の現場は江戸遺跡なのでそんなものが出るはずもなく、なのに彼は1,000箱以上ある江戸時代の陶磁器の山の中に縄文土器の幻を探して、その“洗い”の作業に少々うんざりしている。言葉が通じないフラストレーションから時に誰かに頭突きなどもして、それでも皆と日々なんとかやっている。

 Kさんはスペイン人の前でも喋るのを止めない。例によって延々延々と喋り続ける。日本語と英語とスペイン語をちゃんぽんにしてジェスチャーを交え、英語で韻を踏んでちゃんとオヤジギャグも言う。

 流暢に言葉が交わせるならともかく私はブロークンな英語でDさんに話しかけるしかないから、少しの間なら良いが長時間だときっと次第に気詰まりなっていたはずで、そう考えるとKさんと組ませたのはベストチョイスだった。

 今日は年度末と週末と月末が重なり、しかも桜が満開なため花見客なども きっといて、私が走った内堀通りから千鳥が淵、水道橋付近は大渋滞だった。普段30~40分で行く所が2時間半もかかった。そして、そうなると自然、「密室」で延々延々とKさんのトークに耳を傾けねばならず、しかしこれが抱腹絶倒、なんか昔のモンティ・パイソンのシュチエーション・コメディの中に紛れ込んでしまったようだった。

 Kさんは東京の交通渋滞が何故起こるかその人口密度との比較から始まり、地図を開きながら建物の名前を一々英語に翻訳し説明(東京近代美術館をちゃんと、とうきょうもだんあーとみゅーじあむ、東山塊夷をじゃぱにーずふぇいますぺいんたー、東京公文書館をとうきょうぱぶりっくどきゅめんつびるでぃんぐなどと、ひらがな造語英語で説明。) 日本人がなぜ桜が好きなのかその民族の魂について、引きこもりが日本特有の現象だとDさんが言うと、日本の戦後教育の光と影、理由なき殺人や引きこもりが実は自殺の変種であること、シェスタがあるスペインとない日本の、緯度に起因する気候・風土の違いの説明まで、熱っぽく、けれん味なく、情熱を込めて延々と話し続けた。そして、説明を受けるたびDさんは「アー、」と理解?しているようだった。

 途中、ペネロペ・クルスの新作見た?みたいな話からDさんと私は国際的な関心事であるエロ話になりそうになったが、前日、熊田曜子のおっぱいの話をしながら警察に捕まった私は、ハタと思い直し、ラマンチャの風力発電の話しをした。

 Kさんは「すもーく?」とDさんに煙草をすすめDさんは断る。逆に火をつけてもらうと「むーちょ、ぐらしあす」と言い、Dさんが渋滞に疲れうつむくと「どんとすりーぷ!D!じゃぱにーずはびっとではどらいばーにりすぺくと、そー、うぃーきゃんとすりーぷあんどあてんしょんいんふろんとおぶろーど、あん?」みたいな滅茶苦茶な英語で叱り飛ばし、でも自分では少し眠っていた。

 しばらくして東京ドームに差し掛かる頃、どちらかと言えばそれまで聞き役だったDさんが、「オー!!」と声を上げ外を指差し「アレハナンデスカ」と私に聞いてきた。見ると獅子舞のようなヘアースタイルを鮮やかなピンクで染めた一団が列を成して歩いていて、場所が場所だけに私はプロ野球セリーグの開幕が今日であることを一瞬思い出したが、それはXジャパン再結成コンサートに行くファンの群れであった。別の一団を見ると同様にピンクの頭の子達が腕を×印にしてぴょんぴょん飛び跳ねているのが見え、Dさんは「オー!オー!」と感動していた。Kさんはこれはじゃぱにーずぽぴゅらーろっくばんどのりゆにおんこんさーとのおーでぃえんす、であると説明したが、その飛び跳ねる行為については説明できなかった。

 昼休みは大塚駅前で何か食べようということになって、Kさんが以前この辺で働いていた頃、良く行ったというラーメン屋に連れて行ってくれた。Dさんはその時だけ「ワタシ、ラーメンダイスキデス」としっかりした日本語で言った。ヨーロピアンは麺をずるずる音をたてて食べるのは下品と思っているはずで、しかし、それが日本人の習慣であるとも理解していて、ラーメンの食べ方がモグモグ・・・ズル・・ズルル・・・みたいに微妙な感じで面白かった。Kさんは渋滞の車の中で完全に言葉が英語と日本語とスペイン語がちゃんぽんになっていて、それに自分で気付かず、中国人の店員にぷれいんぬーどるあんどちゃーはんせっとつー、あんだ、それにればにらいためあんだぎょうざ、わん、ぷらすうぉーたー、むーちょぐらしゃす、みたいになっていてその時だけはさすがの私も少し恥ずかしかった。

               ☆ 

 Kさんは元ホテルマンだった。しかし、彼のコミュニケーション能力の高さ?に、その経歴はあまり関係がないような気がする。彼のお喋りは特に若い子達に煙たがられることが多いが、若い子達が煙たがっているのは実はKさんではなくコミュニケーションそのものであって、逆に言葉や文化が違う異国人といる時、彼の全力のコミュニケーションはすんなりと機能する。

 帰り道はXジャパン渋滞を回避するため、とんでもない大回りをして行くことになった。元の新橋に着いた時はバイトの勤務時間である5時を過ぎてしまっていた。私が「申し訳ない。残業代払えなくて。」とどう言おうか考えているとKさんが「D!えくすてんしょんちゃーじ、のお、ごめん、まにゃーな。」と言ってくれ、それで作業が終了した。

 Xジャパン再結成コンサートは3daysあって、今日一夜目が「破壊の夜」、明日二夜目が「創造の夜」、明後日三夜目が「無謀な夜」と言うことらしい。

 うんざりする渋滞の車中、ちゃんぽん造語マシーンになって喋るKさんが難なく「破壊」したのはコミュニケーションの壁である。そしてあの×印のジャンプは自分と同じ世界観を共有する仲間に出会えた、一種のコミュニケーションの喜びを表現する行為なのだと、KさんはDさんに説明すれば良かったのに、と私は思った。

 ああ、それにしてもおもろかった。 しかし、「無謀な夜」って一体・・・(笑)

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