映画『スカイ・クロラ』~正当な苛立ち
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オリジナル・サウンドトラック 「SOUND of The Sky Crawlers」 アーティスト:サントラ,CHAKA |
雨続きで連日グレーな空の下を右往左往する中、たまには移り変わる空の表情を堪能したいと思い、昨日、見てきたのがこれ。『スカイ・クロラ』。アニメの範疇を超えて、きっと映画史に名を残す作品だと思う。
完全な平和が実現された世界で、ショーとして繰り広げられる戦争。そこで戦うのは撃墜されない限り永遠に思春期のまま生き続けるキルドレと呼ばれる若者達。ポーランドとアイルランドをロケしたという美しい風景の中、架空のヨーロッパ戦線を無数の3D戦闘機が飛び交う。
この「ショーとしての戦争」、言葉としては近未来的な感じがするが、現在の日本はアフガンやイラク、その他無数の戦争を結果的に「ショー」「ニュース映像」として消費するのみなので、映画の中、街角の店のテレビで戦況を無表情に見ている人々などには意外なほどのリアリティを感じた。
そして“キルドレ”と呼ばれる若者達だが、永遠に思春期、大人にならない(なれない)戦闘機のパイロット達も、変化を期待すべきも無い閉塞感の中を生きねばならない現在の日本の若者達の苦悩を表現するに、絶妙な設定だと思った。
☆
フランスの作家ポール・ニザンの「僕は20歳だった。それがいちばん美しい歳だとは誰にも言わせない。」という言葉の通り「若さ」というものは本来とても残酷なものだ。
孤独で、惨めで、不安で、見知らぬ何者かのどうしょうもない意図のもとに計画された“ロクデモないこと”をにべもなく実行させらる。だから、若さの中に留ることを強いられるのはとても残酷なことで、そう考えるとこの映画の登場人物たちの「成長できないこと」への苛立ちは正当と言える。自分は何処からきたのか、どうなるのか、誰のために、何のために、何故、今戦う(これをする)のか?
映画の中には秀逸なセリフが幾つかある。シナリオ集のようなものが今手元に無いので一々を書き記すことはできないが、確か「世界の何処かで誰かが血を流して戦っているという実感がなければ、人間は平和を保つこともその意味を理解することもできなくなる。だから歴史上、戦争が無かったことなど一度も無い・・」みたいなセリフだったと思うが、ドキっとした。そう、映画を見ているうちに段々、現実も本当はこのようだと思えてしまったからだ。
「ショーとしての戦争」であるからには厳然としてルールがあり、それはキルドレ達が絶対に勝てない相手が存在するということ。それが“ティーチャー”と名づけられた戦闘機で、パイロットもこれを操縦する者のみが例外で「大人」の「男」。上司である水素(スイト)を愛するようになり、その苦悩を見て取った主人公優一はやがて“テーチャー”を撃墜することを決意するが・・・・・・。
激しい空中戦とコントラストとなるように間延びしたかのような平和で美しい地上の風景。そして出撃していく者たちをいつまでも空を見つめながら見送り、待つ地上の人々。戦後の高度経済成長期の真っ只中で生まれた自分にも、日本人としてこの光景、何かDNAに響くものがあった。
映画『スカイ・クロラ』。
かつてこのようであった。今、このようである。そして、未来は・・・と、考えさせられた2時間1分。
あなたの撃墜すべき“ティーチャー”とは何か?
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