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『エンデの遺言ー「根源からお金を問うこと」』~貧困を救うもう一つのお金

エンデの遺言―「根源からお金を問うこと」 Book エンデの遺言―「根源からお金を問うこと」

著者:河邑 厚徳,グループ現代
販売元:日本放送出版協会
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 今日、10月15日は世界『Blog Action Day』です。今年のテーマは『貧困』。一口に『貧困』と言ってもそれは様々で、経済的なものから精神的なものまであり、気軽に引き受けた割にはいざ書こうとすると何を書いていいやら途方に暮れてしまいます。

 色々考えた挙句、私が今日書こうと思ったのは「お金」についてです。何を言ったところで現在の多くの人々にとって、豊かさと貧しさの判断の基準はどうしたってお金を介したものになるはずだからです。

 現在、アメリカ発の金融の混乱は一時、恐慌前夜とも思える様相を呈していましたが、先週末、ヨーロッパ各国の大胆なドル緩和政策のおかげでかやや回復の兆しを見せ始めました。しかし、いずれにしてもこの、まるでナウシカの巨神兵のように人類のコントロールの外にあるかとも思える金融の動向を、今後もしばらく世界は息を呑んで見つめている他ないのでしょう。

 ではその「お金」とは何なのか?その根源的な問題を考えるのに良いテキストが今日上に紹介する本です。

 ミヒャエル・エンデと言うと『モモ』や『果てしない物語』で有名なファンタジー作家ですが、その晩年は利息が発生する現行の「お金」=金融システムが人類にもたらす危機を警告するため、「老化するお金(地域通貨)」の可能性について考えを巡らせていたということを、あなたはご存知でしたか?

                ☆

 現在、私達が使っているお金の特性と、「老化するお金」=「地域通貨」の可能性を考えるのに一番手っ取り早いのは、大昔の物々交換の時代をちょっと思い描いてみることです。

 人は昔、海に近い集落の人は魚を、山に近い集落の人は山菜や木の実を、それぞれ持ち寄り交換して暮らしていました。互いの商品の価値が等価であることを認め、足りない部分をそのように補っていたのです。

 そして当然ですが魚も山菜も長く放っておくと腐る。つまり時間と共に価値が減少するのですが、これは靴でも家でも車でも同じです。全ての商品は時間と共に価値が減少し、いずれ消費され消滅するのです。しかし、ここで問題なのはそれを介在する「お金」だけが時と共に価値が増えるつまり利子です。それは富の貯蓄をもたらし、またそれにより持つ者は市場において経済行為を自由に履行したり保留したりのアドバンテージを得ることになります。つまり現在の「お金」は商品や労働との交換価値という機能の他に、財産、資産となる側面を同時に持っているのです。

 ではこのような貨幣制度が導入されたことによって、集落はどうなるでしょう?かつてはその日その日の漁や労働の成果分だけの魚や山菜が食卓に並べられ、問題なく暮らしていたところに、この減少しない、増え続ける価値=お金の導入によって、より大きな収益を上げるため、近代的な船や保存のための冷凍庫を買うためにローンが組まれます。そしてその利子を払うために日夜働き続け、競争に晒された海にはいつしか魚がいなくなってしまいます。そして貧富の差も拡大していきます。システムが正常に機能するほどに格差が大きくなり、環境破壊ももたらされます。

 これは、本当にまともなことなのでしょうか?

 かなり簡単すぎる説明ですが、つまりエンデがこの本で警告しているのは現在のお金をもう一度、物や労働への正当な交換価値として位置づけ直そう、と言うことです。そして「減価するお金・老化するお金」=「地域通貨」の可能性の話となります。ここにシルビオ・ゲゼルという男が登場します。

               ☆

「後世の人は、マルクスよりゲゼルの精神に、より多くのものを学ぶであろう。」

    ケインズ著『一般理論』より

 ゲゼルのプロフィールなどについては他で見て頂くとして、要するに彼は上に挙げたような「お金」の問題点にいち早く気づき、独自の「エイジング・マネー(老化するお金)」というものを発案します。これはつまり利子の逆です。時と共に価値が減少するお金です。そうするとどうなるか?人は早くにこのお金を使おうとするので、市場をお金が凄い速さで流通・循環し、物が売れ、仕事が生まれ、雇用が促進されます。そしてこの理論を実証するかのような歴史的事件?が起こります。それは1932年オーストリアのヴェルグルという町でのことです。

               ☆

 その頃、ヴェルグルの町には世界恐慌のため、失業者があふれ、町は財政破綻状態でした。景気が悪い為、人々はお金を溜め込み、じっとしているだけのような状態です。そしてこの町の町長はこの「お金」が循環しないことこそが景気悪化の原因と考え、独自のお金を発行することにしました。事業を起し、雇用を創出し、そしてその報酬を『ヴェルグル労働証明書』なる地域通貨で支払ったのです。

 もの凄い速さで流通する金は実際の価値以上の経済効果を生み、町はあっという間に豊かになっていきました。インフラは整備され町並みもピカピカ。この奇跡のような出来事に多くの経済学者がヴェルグルの町で何が起こったのか調べにやって来たほどと言います。しかし、この『ヴェルグル労働証明書』は政府により、贋金とされ、わずか13ヶ月で廃止されてしまいました。もしこの時、このお金が廃止されずヨーロッパ中に広まったなら、まあ歴史に「たられば」はありませんが、ナチスの台頭を許さず、第二時世界対戦は起きなかったのでは・・・なんてことも本書に書かれていましたね、確か。

                 ☆

 長いのにここまで読んでくれた人、ありがとう。上に紹介した本は現在手元に無くて、数年前読んだ記憶を頼りにこれを書いているので、細かい所が正確じゃないかもしれませんが、正確に知りたい人はどうぞ手にとって見てください。本では実際にこの地域通貨を現代において実用している国や地域の例などが挙げられていて、種類や方法も色々ありとても面白いです。

 で、何故この『Blog Action Day』の「貧困」がテーマの日にこんな話をしたかというと、この運動の目的の最後にドネイション=寄付というのがあって、ちょっとそれに疑問があったからです。この運動に参加し、もしアフェリエイとなどの収入があったらそれをしかるべき団体に寄付してくれ、と言うことで、またその団体でなくても良いから、もしそのようなアクションを独自に起したのならその領収書なりを送ってくれと・・・・・。つまり、これは貧困を無くそうという目的と同時に、この「ブログ」という若いメディアがどの位社会にパワーを持ちえるか、と、そこのところを測ろうとする目的も含まれているのだと思います。それはやってみる価値があることだと思います。

 しかし、世界の「貧困」に対峙するに「寄付」じゃな、と思いました。もっとシステムの根本を問うようなことをしないと。第一、今の金融の状況からしていつこっちが貧困に陥るかだって分からないんだから。

 と、ここまで書いて、休憩がてら、あちことネットを見ていたらマイケル・ムーアが今回の金融混乱とそれに対する公的資金導入について怒っているページを見つけました。たった400人の富裕層が一億五千万人の人々以上の富を握っている・・・確かに不愉快な状況です。

で、戻って、最後にこの言葉。

「溜め込まれて貨幣循環しない貨幣は、世界を大きな飢饉、人類を貧困に陥れた。労働すればそれに見合う価値が与えられなければならない。お金を一部のものの独占にしてはならない。この目的の為にヴエルグルの労働証明書は作られた。貧困を救い、お金を循環し、仕事とパンを与えよ。」

 ー『ヴェルグル労働証明書』の裏に書かれていた言葉。ー

 PS 私は数年前から某NPOへの寄付を止め、今、このようなことをしています。現ナマを送るより、少しだけエンデの精神を感じるからです。お礼の手紙が頂けるけど、それでも良いかい?事務局さん。

 

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