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『卒業Part2』~不可思議なドタバタの今

「卒業」Part2 Book 「卒業」Part2

著者:チャールズ・ウェッブ
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 うーん・・・・・・。これって、『卒業』の続編でなくても良かったのではないかしら。なにもベンジャミンやエレーンやミセス・ロビンソンでなくても。

 この本を私が読むことになった経緯についてはこのブログのカテゴリー“Books”をクリックしてスクロールして頂くとお分かりかと思いますが、私は本書を読む前に作者のプロフィール及び近況を知ってしまったこともあって、読後の心境はやや複雑です。やっぱり本人としても売れなければ、と、止むに止まれぬ選択だったのかもしれないな・・・・など、色々考えてしまいました。

 自分が関係していた女の娘と結婚した男。または自分の母と関係があった男を夫とした女。端的に言えばこの小説はそうした訳ありの結婚をしたカップルのその後を描いたものとして、違う登場人物を配して書くことだってできたように思います。そして、特に、この娘と母の葛藤に焦点を当てて物語を掘り下げれば、もっと深遠な文学作品にだってなったかもしれません。

 この小説の原題は『ホーム・スクール(Home school)』と言います。自分の子供を学校に通わせず、自宅で自ら教育を施そうとするあれです。

 現在はもう珍しくなくなったこの教育、小説の舞台である70年代においてはまだ、アメリカでは州によっては違法としていたところもあったようで、その辺の体制との衝突がまず物語りの発端となります。

 ただ、読んでいて私が思ったのは何故ベンとエレーンがこの「ホーム・スクール」を始め、それに固執するのか、説明らしいことが何も無く、説得力を感じませんでした。また、二人の会話もウィットが効いていると言うより、なんだかただ回りくどい物言いをしているだけでのように思えて楽しめませんでした。

 読みどころと感じたのは小説中、そのような反体制的な教育方法の先輩格の存在として二人の家にやってきたとあるヒッピーの家族に対し、ベンの態度は曖昧ですがエレーンは母であるミセス・ロビンソンと同様に強い拒否反応を示しているところ。70年代にしてすでに60年代的なものが“浮いている”様が読み取れてとても興味深かったです。

 この物語は2008年において、60年代のアイコン的登場人物達の70年代における姿を読むというやや不可思議な状況で、私はあまり感情移入できぬままに読了してしまいました。

 ベンもエレーンもやはり、我々の多くと同様、輝かしい一瞬の後日談をあくせくと生きていたのだなあ、と、まあ、そんな感想です。二人とも「ホーム・スクール」なんかやってはいるにせよ、本質的にはよくある夫婦になっていただけでした。

 まあ、しょうがないよ、どんな平凡な家族にだってそれなりに不可思議なドタバタの今はあるんだし。

 ただ、そんな中にあってミセス・ロビンソン。彼女一人キャラが立っていて、時代を超えて魅力的なヒール(悪役)でした。

 

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