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『ディーバ』~すでに古典

D05_2  好きな映画ベスト5は?みたいな話になると必ず挙げる1本。ゴダール、トリュフォー等、ヌーベルバーグのフランス映画とは別に、80年代以降、レオ・カラックス、リュック・ベンソン等と共にぼくを魅了したジャン・ジャック・ベネックス。彼のデビュー作ににして最高傑作なのがこの『ディーバ』。

 今日は一日、某大型古書店で買ってきた池波正太郎の『映画を見ると得をする』という単刀直入な題のエッセイを読んでいた。

 その中で映画狂の氏が昔から散々フランス映画を見ていたおかげで初めてフランスに行った際にも余り困らなかった、なる一説を読み、フランス、特にパリの街を体感できる映画は何か?と思い、15年ぶりくらいにこの映画を見た。

 自らの歌を決して録音しないことを信念としている美貌の天才オペラ歌手とその歌声に恋し、コンサート会場で密かにそれを録音する郵便配達の青年。そのテープと人身売買事件の黒幕を告げるテープとが入り乱れ、青年はディーバ(女神)の歌声の海賊版を作ろうとする組織と犯罪組織、それに警察にと、三重に負われる羽目になる。

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 この映画、当時そのスタイリッシュな映像美がとても新しく感じ、また疾走感溢れるストーリー展開なのに音楽がロックやジャズじゃなくてオペラやサティだったのがとても新鮮だったのを覚えている。今見るとその映像的な部分はやはり少々古めかしい印象を受ける。しかし、古いとは分かっていてもあまり鼻につかないのはそれがすでに古典的な映像美として見れる感があって、その辺がこの映画の影響を受けて作られたと思しきその後の多くの映画と一線を画しているところでもある。

 で、パリの街だが、主人公の青年がバイクで逃げ回る地下鉄や女神シンシア・ホーキンスとのデートする公園など、印象的なシーン満載だ。二人がデートする朝方の公園の遠くにエッフェル塔が微かに見えて・・・東京で言えば、東京タワーが見える芝公園とか日比谷公園みたいなところだろうか。いつかパリに行く機会があったらこの公園、探してしまいいそう。

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 主人公ジュールを助ける謎のカップルを演じるのは名優リシャール・ボーランジェとチェイ・アン・リュー。リシャール・ボーランジェはさすがに若い。そしてこの映画の後、何か他の作品に出ているのかどうか全く知らないが、このチェイ演じるベトナムの少女、とても魅力的だ。

 この少女がレコードショップで万引きするシーン、良く見ると新作コーナーみたいなところにリッキー・リー・ジョーンズのファーストが飾ってあって時代を感じる。まあ、それよりなによりCDじゃなく、レコードだから。そんな時の経過に思いを馳せると、とどのつまり、この映画の白・黒・黄色人種が混ざり合ったクレオールな空間や疾走感、またスタイリッシュな感覚等はすでに古典なのか。

 PS シンシア・ホーキンスを演じたウィルヘルメニア・フェルナンデスは本物のオペラ歌手で、映画の中の歌もご本人自身の歌唱で圧巻。映画と違ってちゃんとレコーディングされている方なので、1度聞いてみて。

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コメント

僕はパリでエッフェル塔には上らず、パリ版ストリップを見ていました。(成り行きでそうなってしまったのです…。)巨大な一物を持つイケメンが美貌のパリジェンヌ相手に延々とウジャラムジャラやっていました。ハワイでも見たのですが(念のために、海外でそんなことばかりしている訳ではありませんよ。)そちらの方はあっけらかんとしていて、開放的な感じでした。パリのそれは何か日本人では理解しがたい退廃の極致って感じで、しばらく無口になってしまいましたね。(強い酒を飲みたくなってしまったことを思い出します。)食事も僕にはメレンゲが甘すぎて、合わなかったし、(怒りの感情がこみ上げてくるほどの甘さって初めての経験でした。)あまりパリには良い印象がありません。おそらく勉強不足なうえにガキだった僕には、奥深さ故の刺激の強さと深さに対する「耐性」が備わっていなかったのかもしれません。勉強もろくにせず、快楽を追求しないガキはヨーロッパを楽しめないのです。でも僕ももう一度行ってみたいと思います。(前回はオランジェリー美術館が閉館だったから。モネの睡蓮の連作が見たいのです。)
そうそう、「ディーバ」だった…。貧乏学生時代に君と何回も見たよね。当時ヌーベルバーグ作品も好んで見ていたけど、「ディーバ」って僕らの世代のフランス映画って感じで、他と一線を画していました。僕の中では今でもその印象は変わっていません。僕にとっても5本の指の中の1本です。

投稿: ほぴ村 | 2008年11月30日 (日) 01時26分

 金子光晴の『眠れ巴里』を読むとアジア放浪で散々辛酸を舐めた氏ですら、パリには相当参ったらしいことが書かれています。徹底した個人主義の果ての退廃というのが確かにあるのでしょうね。
 
 池波氏の見たフランス映画というとジャン・ギャバンとかそういう時代の古いやつみたいですが、氏はどんなつまらない映画にも必ず見所があって風景もその一つと言っていますね。

 一度だけ行ったパリでのことをエッセイに書いたら、何度も行き来している仏文学者に激賞され、それは映画をづっと見ていたから、とありました。

 『映画を見ると得をする』は今のようにレンタルビデオなどなかった時代のエッセイなので内容は少し古さを感じさせるものの、劇場鑑賞の際やマナーや方法など事細かに書かれていて、なかなかためになる本でした。映画版『男の作法』って感じかな。

 昔はこういう小うるさいおっさんが一杯いて、後続に色々指南したものなんでしょうけれど、今、そういうのないからね。池波せんせの本はそういう意味でオヤジを思い出し、僕には懐かしいのです。是非、ご一読を。

 『ディーバ』。僕らの時代のフランス映画・・・。ベネックスは今は『ベティ・ブルー』の監督、という方が世間的な認知度としては高いようですが、あれ、そんなに良い映画かね?

 イヴ・モンタンが最後に出た『IP5』は余り良くなかったです。

 

投稿: ナヴィ村 | 2008年11月30日 (日) 11時17分

親父が僕らに伝えてくれた「男の作法」って何か思いつく事ある?つたない記憶を辿ってみたら以下のようなものになりました。
1.喧嘩はしても良い。ただし先に手を出しては駄目。
(パールハーバーを例に出していたような…。)
2.友達に金を貸すぐらいなら奢れ!
(そう言って君が叱られていた姿が目に浮かびます。)
3.部屋の中で遊ぶな。外で遊べ。
(ひきこもりやニートって大嫌いだろうね。きっと。)
4.女みたいに髪なんか伸ばすな。スカッとしろ
(兄弟3人みんな床屋でGIカットってのにされたこと  あったよね。)
5.試験前だからって慌てて勉強なんかするな。
(そう言われて、小遣いまで渡されて映画見に行ったよ
 な。覚えてる?)
6.このラベルを覚えておけよ。
(幼い時ひざの上に乗せられて時、エビスビールのラベ ルを指差してよく言っていたのを覚えています。)
7.辞めた奴なんかあてにするな。残った者だけで勝利を  目指せ。
(野球を辞めた先輩になんとか復帰してもらおうと思っ ていたら…。

 う〜ん、後なんかある?続きがあったらお願いします。


投稿: ほぴ村 | 2008年12月 1日 (月) 00時31分

 作法という言葉本来の意味を考えると、まずなんらかの“型”がある。それを社会の中で意味も分からずとにかくやってみて、それで「なるほど・・」と腑に落ちる、みたいな事だと思う。具体的に何か利が得られるというような。

どう躾けられたか、どう育てられたかというのとはやや違う気がするが。

 僕が親父に伝授され一番身についている「作法」はウィスキーはストレートで飲むってことだな。チェーサーの水といっしょに。

 水割りだとウイスキーそのものの味なんか分からないし、濃淡は分かっても飲むうちに段々アルコールそのものの量も分かんなくなって結局、悪酔いする。

 どんな店でもウイスキーはダブルとかシングルって形で出すので、飲む量が視覚的に分かるし、回を重ねるほどにどの位が自分の適量かも分かる。変な酔っ払いに、もう一杯!なんて注がれることはないし、ウイスキーそのものの味も楽しめる。そして、段々、良し悪しも分かるようになる。

 これをね、僕はある日の夕方、ゴルフ中継を見ながらウイスキーを飲んでいる親父から教わった。本人はそう言いながら水割りを飲んでいたが。多分、僕が中学生くらいの時だ。勿論、飲まされた訳じゃない。

 酒が飲める歳になって、散々酒で失敗した後、ある時、これをやってみて、なるほど・・な、と思ったよ。親父、良いこと教えてくれてたんだなってね。

 ある年齢を過ぎて、こちら側にその真意を知る“時が満ちた”ってことか。

     
     一瞬の恋も美しいが
     太陽と水と火と
     麦と泥炭とが時によって
     熟成されてゆく
     美しいスコットランドの
     小さな島の
     ウィスキーのような愛はもっと
     北海の光りの中

           時が満つるまで 田村隆一


 ところで、兄弟でなんでこんな話してんだ?そうそう池波せんせ、だったな。

 

 

投稿: ナヴィ村 | 2008年12月 1日 (月) 20時04分

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