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7度目の歌舞伎 元禄忠臣蔵~大石最後の一日

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歌舞伎座さよなら公演3月は真山青果の『元禄忠臣蔵』。これはいわゆる新歌舞伎というやつで、同じ“忠臣蔵”と言っても『仮名手本~』に比べるとかなり史実に忠実なものらしい。

 昼の部は『江戸の刃傷』、『最後の大評定』、『御浜御殿綱豊卿』。夜の部は『南部坂雪の別れ』、『仙石屋敷』、『大石最後の一日』。特に夜の部では團十郎、仁左衛門、幸四郎がそれぞれの幕で大石内蔵助を演じるというのでかなりのお得感がある。

 で、何を見るか。全部見ればいいのだろうけど、毎月演目チラシを睨みながらこれだと思うものを1~2幕見ている私は今回はかなり迷った。月初、「今月のあなたは優柔不断です。」と、ある占いで見たが、そうか、このことだったのか。

 “忠臣蔵”と一口に言っても大雑把なストーリーしか知らない私は、個々の場面が一つの戯曲として成立しているという、その感じがどうにも良く分からない。全部見ないといけない気がしてしまう。しかも作品は戯曲としての出来不出来がそれぞれあるらしく、また上記のように幕ごとに内蔵助が違うとなればなおさらのこと。

 それで散々迷った挙句、私が選んだのは『大石最後の一日』。幸四郎の内蔵助だ。

 幸四郎は好きだが、歌舞伎役者としての彼には実は苦手感がある。と言うより、それ以外での彼に長年触れてしまっているので、頭の中でどうしても“歌舞伎役者”と言う風にならない。

 で、なのに何故『大石最後の一日』かと言うと、まずこの大作『元禄忠臣蔵』の中で一番最初に書かれたのがこれだと言う事。昭和9年、二代目市川左団次のこれの初演が好評を得て、その後、全容が書き継がれていったとのことで、『元禄~』のエッセンスはここにあるのだろう、と踏んだ次第。

 また新歌舞伎はセリフが現代語なので、私の“歌舞伎役者幸四郎苦手感”もこれで払拭できるのでは、とも考えた。

                   ☆

 昨日は、夜の部最後が目当てと言うわりに、私は早くに歌舞伎座に行った。前回の『勧進帳』の時の幕見の行列の凄さを知っているので、用心して4時ごろ到着。

 実は、もし可能なら午後の部全部見てやろうという気も少ししていたが、『南部坂~』のチケットはすでに完売。で、『大石~』が始まるのは7時半頃なのでまだ4時間近くある。しかし、時間を潰すのにうろうろするのも面倒なので、ずっと並んで、結局『仙石屋敷』から見ることにした。ここにきてもなお優柔不断な今月の私。

 戯曲として『仙石屋敷』はつまらない、との評判を聞いていたが、私は面白く見た。ただこれは歌舞伎というより現代劇。この『元禄忠臣蔵』に“討ち入り”の場は無く、不思議に思っていたが、それはこの『仙石屋敷』ですべて表現されているからだ。討ち入り直後、詮議の場で内蔵助以下は尋問されるが、討ち入りの仔細はすべてこの場のセリフによて語られる。つまりセリフ回しが命の芝居。

 ここでの見ものはやはり仁左衛門のダンディな内蔵助だ。團十郎のは見れなかったが、ポスターで見る限り、今回の3人のうち一番カッコいいのは仁左衛門。討ち入り直後ということで得している感もあるが。そして長ーーーーーいセリフを緩急つけながら、感情豊かに操る仁左衛門。すすす凄い!隣の人は寝ていたが、私は目が釘付けになった。そして息子主税との別れの場面。私も同じ年頃の息子を持つ身なので・・・・少しウルッときた。

                    ☆

 で、目当ての『大石最後の一日』だが、内蔵助に幸四郎、磯貝十郎左衛門に染五郎、堀内伝右衛門に歌六、おみのに福助。ダンディな仁左衛門の内蔵助の後だったので、幸四郎の内蔵助には一瞬違和感があった。が、それは置かれている状況の違い。

 幸四郎の内蔵助は討ち入り後、数名の隊士とともに細川家にお預けの身となって、そこで沙汰を待つ身。死を覚悟して透明な気持ちなりつつも日ごとに世間での評判が上がり、気もそぞろな他の志士達の振る舞いに気を揉む内蔵助。

 で、そんな中、おみのという娘が男装して現れる。すぐに女と見破る内蔵助だが問いただすと、なんでも磯貝十郎左衛門と婚儀を果たした身であるとか。磯貝は吉良邸の偵察などしている間、世間の目を欺く為、おみのとそんな次第になったのだが、おみのは磯貝の本心が何処にあるのかが知りたいと内蔵助に詰め寄ります。磯貝とおみのの恋の顛末。沙汰を待つ身でありながら、若い二人のこの状況を内蔵助はどうするのか?そして、そんな最中、全員に“切腹”の沙汰が言い渡され・・・・・・・・。

 この『大石最後の一日』は予想した通り、とても面白い芝居だった。細川家で実際に内蔵助らの世話をしていた堀内伝衛門の「堀内伝衛門覚書」なる書を素材としたものらしいが、死を待つ日々の内蔵助以下数名たちの日常と心境が伝わってくる、緊張感溢れる良い芝居だった。

 「覚書」によると芝居の中で重要な意味を持つ“琴の爪”を磯貝十郎左衛門が懐中大事に所持していたのは本当らしいが、おみのは真山の創作とのこと。そして、このおみの演じる福助ですが、娘でありながら男装して現われ、そして見破られ・・・と、そんな展開の中、とても可愛く演じていました・・が・・・・・・ちょっとやり過ぎ(笑)。実際、後ろの外人さんからは笑いが漏れていた。

 そして幸四郎の内蔵助。新歌舞伎を幸四郎で・・と言うのは当たった気がする。彼の暗い感じがこの芝居にはとても合っていた。これで私の前述した手前勝手な先入観が払拭されたわけではないものの、昨夜の幸四郎は人物造形が深くて、見ていて凄い満足感があった。

                   ☆

 この『元禄忠臣蔵』は全部で十篇。今回、歌舞伎座でその中でも六編が一挙上演されるのは22年ぶりとのこと。中でも名作との誉れ高いのはこの『大石最後の一日』と『御浜御殿綱豊卿』の2つらしいが、私は切れ切れでもいつか全部見てみたいと思った。

 團十郎の内蔵助は見逃す形となったが、彼は海老蔵とともに5月に歌舞伎座にまた登場するので、その時までのお楽しみということにする。

 で来月4月は『曽根崎心中』、坂田藤十郎、を見る予定。                   

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