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映画『おくりびと』~死と生のコントラスト

Okurijito2009_2 「もう、思いっきり可愛くやっちゃって下さいっ!!」なんて言うのかね、監督は。

 ちょっと浮いてるくらいこの映画での広末涼子は可愛かった。男の私にはそれはそれは目に心地良かったが、きっと同性からは反発があるだろうな、こういった種類の可愛さは。

 しかし、本筋からはみ出すくらいの“可愛さ”を有する存在を必要とする映画というものも確かにあって、考えるに広末涼子が過去に出演した作品、『鉄道員(ぽっぽや)』も『恋愛写真』も、彼女の過度の可愛さが無ければ成立しない映画だった。

 『鉄道員(ぽっぽや)』では健さん演じる死期が迫った鉄道員が最後に会う“幻の娘”を演じるのがまだセーラー服が似合う年頃の彼女だった。これも全体の映画の流れからはそこだけ浮いているように見えたシーンだが、あそこで“普通に可愛い”だけの少女だったら、健さんがそれまでぐっと押し殺していた亡き娘に対しての堰切って溢れてくる想いが伝わらず、地味に終わった気がする。過度に可愛い広末がいたからこそ、娘と飯を喰い、「うめえぇなあ、ほんとうにうめえぇなあ・・。」と涙ながらに呟く健さんが生きた。

 『恋愛写真』での彼女は場面によっては男の私から見ても鼻につくほどの爆裂気味の“可愛さ”だったが、彼女は映画の後半はほとんど出てこないので、前半のあの存在感がなければ、何故、主人公の松田龍平がニューヨークまで彼女を探しに行くほどなのか、見る者の思いを引っ張れなかった筈だ。

 この『おくりびと』に関してはストーリーの説明はもはや不要だろう。例のアカデミー賞のこともあって様々なところで解説されていたので、多くが知る所となった。この映画については、実は私は去年の秋頃、ラジオで紹介されているのを聞いて知っていて、公開を待ち望んでいたが、公開されるやいなやあれよあれよとアカデミー賞までいってしまった。

 オーケストラが解散になり、故郷山形で納棺師となったチェリストの物語。彼が一人前の納棺師になっていく様を描いた映画と言えばそれまでだが、それは妻役の広末が、初め忌み嫌っていた夫の仕事を段々と認めていくまでの物語でもあり、元木演じる主人公が自分と母を捨てた父を許すまでの物語でもある。

 映画は設定が設定だけに初めから死の匂いがぷんぷんしているが、それとコントラストになって生がくっきりと際立って見えるように出来ている。

 実は広末涼子は物語の中でその“生”そのものの象徴としての役割を担っている。元木がどんな過酷?な死の現場から戻っても、彼女の過度な可愛さがそのマイナスな情感を中和して、彼と見ている私達を普通の日常へとたち返す。そして、二人のそんな生活そのものが死を起点にして生を肯定しようとする映画のテーマを表わしている。

 また、もう一つの際立つ“生”の表現として描かれるのは“食べる”行為。生きることは食べていくことだから、この方法はとてもダイレクトに訴えかけてくるものがあった。ケンタッキーを皆でかぶりつき、みるみる骨が積まれていくシーン。見終わって映画館を出たら真っ先にケンタキーに行こうと私はそのシーンを見て決めた。

 さて、この映画は日常を淡々と描いているように見えて、実はラストに向けての様々な伏線が張られているが、ここでは詳しく書けない。ただ、私は知らなかったが、日本には古来より“石文”なる、コミュニケーション法があるらしく、それが上手く使われている。

 死の世界へ旅立とうとする人の想いを知り、それを受け取り、また未来へと手渡そうとするラスト。どんな生にも意味があり、そして死は決して敗北ではないということ。

 その時、広末涼子はまさに“生命の象徴”そのもので、前述の2作の可愛さが偶然にハマッタに近いものだったのに対し、この映画での彼女のそれは計算されたものであることに気づく。

 メッセンジャーとして可愛い女というのは分かり易い。これが世界で絶賛されたのは彼女の存在によるところが大きいのではないか。これはもしかしたら大根スレスレの名演かも。不遜にも私はそんな風に考えた。

                ☆

PS 広末のことばかり書いたが、実はこの映画で個人的に一番良かったのは山崎努です。私はこのオッサンの昔からのファン(『スローなブギにしてくれ』から)です。

 最愛の妻を亡くし、その妻に死に化粧をしてやったのをきっかけに納棺師になったオヤジ。『セカチュウ』では昔の恋人を忘れられないでいる写真店のおっさんだった。こういった役が何故か似合う。

 こんな、オッサンになりてぇなあ。道は険しいが・・・・・・・。 

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