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WBC東京ラウンド 日本VS韓国

 初回、イチローの第一打席を見て私は「今日は勝った!」と叫んでしまった。低めの球を上手くとらえた低い弾道の美しいライト前ヒット。イチローらしいヒットだ。アメリカ人は彼の芸術的なバット・コントロールを称して“魔法使いの杖”と言うらしいが、このヒットは彼のバットがそんな風に見えるタイプのヒットだった。

 つまり彼が完全復活したということ。探し続けていたパズルの最も大事なピースがハマッタ瞬間。これで今や国民的な関心事になってしまった“イチローの不調”は終わり、球場中に満ちていたその安堵と歓喜の波動が続く中島ー青木にも打たせた、そんな風だった。初回の3連打、先制点、宿敵キム・ガンヒョン攻略。

 それに対し、その1回裏の松坂のピッチングは良くなかった。スライダーでストライクが取れず、ストレートで凡庸にとりにいったところを打たれてしまった。韓国の4番キム・テギュンの2ランはレフトの看板直撃の大ホームラン。前回中国戦でのダルビッシュの快投にへそ曲がりの私がやや懸念を示したその通りのことをエース松坂がやってしまった。まあ、彼の場合、立ち上がりが悪いのはいつものことなのだが、それにしてもそう簡単には勝たせてくれない、と誰もが思った。

 しかし、続く2回表、城島ヒットー岩村四球ーイチローセイフティバントで作った満塁の場面。中島四球による押し出しの1点と青木の遊ゴロの後、バッターは4番村田。ファールで粘り、やや消耗した感のあるキム・ガンヒョンが投げた低めの球を泳ぎ気味に打った高いフライはそのままレフト・フェンス際に突き刺さった。そして、この時、早々と日本の勝利が決まってしまった。

 その後の日本優勢の試合運びを見て、私は勝ち負けよりもある感慨に浸ってしまった。それはこの長年の宿敵韓国をここまでやり込めるようになれるまでに日本が払った代償についてで、それは星野である。

 考えるに今回の日本チームのメンバーは言わば前回の“第一回WBC戦士”と“北京屈辱組”の混成チームだ(“屈辱組”が主に若手というのが良い)。北京オリンピックでは日本は韓国に2敗。昨日のキム・ガンヒョンを全く打てず、その責任をそれまで国民的な英雄と持ち上げていた星野一人を戦犯ということにして、何の分析も無く終わらせてしまった。

 思うに日本の野球を取り巻く環境には大きく二つの路線がある。まだ国内だけで充足していた時代の保守組と大リーガー達に代表される国際経験重視組の二つ。で、その狭間にあって北京では現場の星野と選手達にはあらゆる面で大きな葛藤があった。

 ヒーロー・インタヴューで村田は「北京で散々やられたキム・ガンヒョンから打てて良かった・・・。」みたいに言っていたが、きっと思いはそれ以上のものだったろう。彼は北京で悪夢を見た一人だ。全く打てず、あの痛恨のエラー・・・。ある時、帰国に際しては「生命の危険すら感じた。」と言っていた。

 5日の中国戦も一昨日もテレビ中継は客席にいる星野を映していた。それを見て私は漫画『あしたのジョー』のホセ・メンドーサ戦に敗れた後のカーロス・リベラを思い出してしまった。例えが過ぎるかもしれないが、それは彼を彼たらしめていた“何か”が永遠に損なわれてしまったように見えたからで、それで これが日本が払った代償なのか、と思った。

 昨日、イチローは5打席3安打1盗塁、3打席目のセンター前は彼のバットがテニスのラケットに見えるタイプのヒットで、1打席目のそれとは違ってまた美しかった。

 試合結果は14対2で7回コールド・ゲーム。日本圧勝。試合前あれほど苦手感たっぷりに見えていた韓国が試合後とても“格下”に見えた。そして、あっさりサンディエゴ行きが決まった。

               ☆ 

 野球の神様は時に私達にとても過酷な試練をお与えになる。それが北京だ。しかし、今後も宿敵韓国に対して昨日のような試合ができるなら、北京の悪夢にも意味があったということだ。北京組は村田の他にもダルビッシュ、田中マー君などなどがいる。

 私は5日のダルビッシュの快投と昨日の村田のホームランを日本で一番喜んだのは星野だと思う。

日本は9日、韓国と中国による敗者復活2回戦の勝者と、1位決定戦を行う。

見たいな生イチロー。金券ショップ行けばあるかしら・・・・チケット。

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