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自転車で銀ブラ

Photo_3  King of Rockn'Rollが死んだ翌日の東京、ゴールデン・ウィーク本番の今日、旅行、帰省などの民族大移動のためか通りは普段より閑散とした印象だった。今年は子供の部活などの都合があり、また実家では弟嫁が出産真近ということもあって、今回はいわきには帰らず東京にいることにした。

 東京に出てきてかれこれ四半世紀になるが、毎年なんだかんだでこのゴールデン・ウィークと盆暮れは実家にいるのが常だったので、こういった時期の東京は私の目には非常に新鮮に映る。

とは言え、休み初日の昨日は部屋の片付けと昼間からのビール、それと読書三昧でゴロゴロしてしまい、そして夜中に清志郎逝去のニュースでノスタルジーずぶずぶになるという一日だった。きっと彼の場合もこれからマスコミによって着々と伝説化・神話化が進められ、今はまだほのかに感じられる実在感が、これから無残に形骸化されてくのだろうと思うと今から辛い。

 で、そんな休み2日目、ただ家にいる手はないと、今日は妻と自転車で“銀ブラ”と決め込むことにした。私の仕事の虎ノ門の現場事務所に車を止め、そこに何台かある会社の自転車にまたがって新橋、虎ノ門、銀座界隈を二人で走り回わろうということになった。

 一番の目的は東京国立近代美術館フィルム・センターで、『紅葉狩』を見ること。今日上映予定のこの歌舞伎の演目『紅葉狩』を映したフィルムは、日本人が撮影した現存する最古の映像ということで、この3月、国の重要指定文化財に指定されたというもの。撮影されたのは1899年。出演は劇聖と謳われた九代目市川団十郎と五代目尾上菊五郎、尾上丑之助(六代目尾上菊五郎)である。

 上映開始予定はPM4:00。それまでは何の予定も無いので、何処に行くでもなくフラフラ走り回るつもりでいたが、それも疲れると言うのでまず向かったのは増上寺。いつも前だけならそれこそ日に何度も通り過ぎるのだが、ちゃんと入ったことはなくて、それで行ってみた。

 香の煙を浴び、賽銭を投げて手を合わせる。中に入ると正面に金色の仏像。ここの仏様はとてもいい顔をしていて思わず見蕩れてしまう。見ているだけで煩悩が洗い流されるようで思わず長居する。デジカメで撮ってしまいそうになるがバチがあたりそうな気がしてさすがにそれは止める。寺務所に置かれたチラシを見ると今月30日にここで薪能が行なわれるらしくて一番安い席で3000円とのこと。去年の歌舞伎から始まり、最近つとに古典芸能づいている私は能にも興味があって、ちょっと心惹かれる。演目には今日フィルムで見る予定の『紅葉狩』もあり。

 

昆虫4億年の旅 昆虫4億年の旅

著者:今森 光彦
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 その後、銀座のニコンサロンに行き、森光彦写真展『昆虫4億年の旅』を見る。虫嫌いの妻は一々ギャーギャー喚く。特に蝶の羽根の模様がダメだそうで、そうかな、私はとても美しく見えるけど。しかし、その割に一枚一枚を食い入るように眺めていて、結構楽しんでいる模様。私は金子みすずの詩『はちと神様』を思い出す。

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2:00頃、歌舞伎座の前へ。昨日の新聞に現在の歌舞伎座が修復の為、取り壊されるまでの残り日数を表示するカウントダウンのボードが設置されたとあって見に行く。“363”と表示板にはあって、そう数字で示されると、何か切迫感があるが、まあ良い。数日後、私はここで現在の海老蔵と12代目団十郎を見る予定。

 東京国立近代美術館フィルム・センターには2:30頃到着。しかし、早すぎで開場は3:30とか。まだ1時間あるので、その間、食事でもしようということになって、またまた自転車で走り出す。が、何処もかしこも閉店中。看板を見ると安くて美味そうな店がいっぱいあるのに。八丁堀辺りを走っていると、中華料理屋の店先でその店の家族がテーブルを外に出して皆でバーベキューをしていて、思わず混ぜてもらいたくなる。いいなあ、こういうの。だが結局、入ったのは普通の定食屋で自分、サバの塩焼き定食、妻、しょうが焼き定食。ごはんおかわり自由で二人とも満腹。

 で、いよいよ4:00。『紅葉狩』を見る。九代目団十郎は写真で見たことがあってその印象は馬面。なので荒れた映像の中、女形姿でもすぐに分かった。舞踊の途中、九代目は扇子を落とすが、現在ならカットか撮り直しというところを続行。当時はフィルムが高価だったからだろうか?後世にこういう姿が残ってしまって九代目がやや気の毒だが、だからこそ貴重ってこともあるか。その他、このフィルムで記憶に残るのは丑之助、後の6代目菊五郎の“風の神”。印象として姿勢の良い、基本に忠実な演技をする人だったんじゃないかと思った。この少年が後年J・コクトーに“司祭”と称される人になるのかと、思わず目を見張る。

                   ☆ 

 夕方、妻と二人、自転車で事務所に引き返す時の鼻歌はRCの『すべてはAll right』。その時、突如、私は歌舞伎を見る前から歌舞伎をやっている人を知っていたと思い至り、それが清志郎。

 彼は普段は繊細な人なのに、ステージでは常に確信犯的に時代に対してかぶいていた。放送禁止、発売中止、放送事故。権威を恐れない反骨の人。そして、“愛”と言う言葉を使わずにとてもリアルなラブ・ソングを書いた人だ。

 私が好きな2曲は『君が僕を知ってる』と『アイディア』・・・・・・・・・・です。

 夜、帰宅すると、息子と娘がカレーを作って待っていた。とても美味しかった。

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