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『クリシュナムルティの日記』~砂漠で出会うコップ一杯の水

Photo_3  最近、仕事終了後、自転車で曲芸のように人波を潜り抜けながら某駅まで東京新聞の夕刊を買いに行く。私が現代日本の作家の中で最高の一人と考える宮内勝典氏の初の新聞連載小説『魔王の愛』を読むためである。で、この小説の“魔王”とは誰であろう、あのマハトマ・ガンジーのことだ。

 ガンジーと言うと、普通、非暴力主義を唱え大英帝国からインドを独立に導いた好々爺としたイメージの偉人ということになっているが、実際はもっと複雑な人だったらしい。宮内氏のエッセイで読んで知ったのだが、ガンジーは東洋人で初めて西洋の法体系の元で弁護士資格を取った人かも・・・という点からも分かるように、東洋の叡智そのもののように思われていて、その実、西洋文明、“近代”の波を深く深く潜り抜けてきた人だ。彼はあの時代にしてすでに地域通貨についても知っていたらしく、それだけでもとても戦略的な人だったことが伺える。

 小説についてはまだ始ったばかりで何も言えないが、毎夕買うこの新聞は紙ではなく、肉とか野菜のような、何故か生もののような気がする。そう、早く読まないと腐ってしまうような。そしてビジネス・トークが行き交う通りを横目にガンジーについての小説読むというのは、当たり前だがとてもシュールだ。

 連載が終了し、本になる時は、きっと加筆・修整が入り、もっとブラッシュ・アップされたものになるかもしれないが、私は今、この形のものが読みたい。その気持ちは砂漠で一杯のコップの水にありつく時のような切実さに似て、それは今の自分が過ごす日常と精神の何がしかの反映でもある。

           ☆           

↑は週末から今週初めにかけて不調をきたし、家で静養中、読んでいたものです。お金にいくら困っても、どうしても売れないものと言えば、私の場合、CDで言えば『ジョンの魂』、本でいえばまずこれで、かれこれもう十五年近く、繰り返し読んでいて、また読んだ。これも『魔王の愛』同様、生ものの本だが、きっと未来永劫、いつまでも腐らない。訳は宮内氏で、彼はインド放浪中、この聖者の話を聞く機会を得、帰国後、本書の翻訳の話が来た時は運命を感じたと言う。そして、そのように臨んだ仕事だけあってとても美しい文章、名訳だと思う。

 私の仕事場で先週インド一周の旅に出た青年がいる。旅立ちの日の朝、彼から私のPCにメールで長い詩が届いた。

 彼は彼のガンジー or クリシュナムルティに出会えるだろうか?

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コメント

これ、私も楽しみに読んでいます。
東京新聞の連載小説はいつもレベルが高いんです。私は夕刊派ですが朝刊は親鸞。こちらもなかなか良し!
文芸部に、とても「よくわかってる」方がきっといるんでしょうね。
毎日帰宅すると荷物を投げて出してまっさきに読んでます。

投稿: mimi | 2009年5月29日 (金) 11時23分

 へえ、朝刊が親鸞で夕刊がガンジー!東京新聞って凄い新聞ですね。
 宮内さんとは9.11後のアフガン空爆に反対するデモで一緒に歩いたことがあるんです。彼のホーム・ページ「海亀日記」での呼びかけに参加してでのことだったのですが。

 毎日、駅まで買いに行くのも面倒なので、夕刊をとろうかどうか今迷っているところ。
 昨日から第二章が始りましたね。今日のは雨のせいで買いそびれ、まだ読んでいません。明日、近くの新聞屋にいって買おうかと思います。

 毎日40円の楽しみ。しかし、mimiさん、相変わらず目の付け所が同じですね。

投稿: ナヴィ村 | 2009年5月29日 (金) 22時06分

色々検索しておりまして、

東洋の叡智で検索していたらここにたどり着きました。

とても興味深い記事を書かれていますね。

私の友人ですが、こちらも面白い記事を書いているので、是非遊びに来てくださいね。

http://blog.livedoor.jp/yume2323/

投稿: 小林 哲人 | 2009年6月22日 (月) 11時33分

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