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『夏服を着た女たち』~二つのsummer clothes

Photo_3  今日、ある女性とどういう話の流れからか、最近“婚活”の逆で“離活”というのがあるという話になった。つまり離婚後のよりよい生活のために主に女性が色々と準備するという話。

 もちろんその彼女はシアワセな結婚生活を営んでいる方で、別に深刻な話ではなかったけれど、彼女曰く「もし、旦那に浮気されたらそれは女として自分に至らない点があったのだと、反省する。」とのこと。それを聞いて私は男の習性を説明する言い分としてアーウィン・ショーの名編『夏服を着た女たち』を例に挙げた。

 これはマイクルという男とフランセスという仲睦まじい夫婦が、ある日曜の朝、ニューヨークのワシントン・スクエアの辺りを歩いているところから始る。

 マイクルはニューヨークの街を闊歩する美しい夏服の女たちにいちいち目を奪われ、妻のフランセスは初め「首の骨を折るわよ」なんて冗談を言っているが、段々と会話は深刻になり、やがて素敵な日曜日に暗雲が立ち込めてくる。マイクルは色々と言い訳するが妻の機嫌は中々直らない。そして、会話が袋小路になって、妻が酒場の席を立ちニューヨークの風景に溶け込んだ瞬間、マイクルは妻を“なんてかわいらしい女だろう、なんて素敵な脚だろう・・・・・”と思って眺める、と言う話。

 この小説は多分、女性へのうけは良くないと思う。けど、私は昔からこれを特定の女性(この場合、もちろん妻フランセス)に捧げたラブ・ソングのような話として読んでいる(それとニューヨークという街に対しての)。

 ジョン・レノンの『ウーマン』がオノ・ヨーコという特定の女性に向けて歌われているラブソングが広い意味で全女性に対する感謝の歌になっているのとは逆に、この小説は不特定多数の女性の美しさの中に特定の女性の美しさを発見するというアプローチになっている。男は社会的な生き物なので、あるパーソナルな空間では決して気づき得ない美しさが、広い社会の中で輝くのを見る時、とても幸福を感じるのではないか。その辺のことをショーは上手く描いていると思うが・・・・やはり女性にはうけは悪いだろうな。

 と、ここまで書いて我がスプリングス・ティーンにこの小説とほぼ同じ題名の歌があることを思い出した。例によって訳詩。

   

       ガールズ・イン・サマー・クローズ

  

       街灯がプレッシングアヴェニューを照らしている

       恋人達が手をつなぎ並んで歩いている

       そよ風がポーチを渡り

       自転車のスポークが回る

       上着を着て、俺は家を出る

       今夜は楽しもう、思い切り

  

       夏服の少女達

       夕明かりの涼しさの中

       夏服の少女達が通り過ぎる

       

       子供のゴムボールが音を立て

       街灯の側溝で跳ね返る

       銀行の大きな時計が時を告げる

       家々のフロントポーチの淡い灯りが消えていく

       ダウンタウンの店の灯りは

       夜が更けるにつれ明るくなる

       辛いことがいろいろあった

       でもわかっている これからよくなると

       

       夏服の少女達

       夕明かりの涼しさの中

       夏服の少女達が通り過ぎる

 

       町外れにある旧友フランキーのダイナー

       ネオンサインが輝いている

       まるで魂の救済所の十字架のよう

       蛍光灯の灯りがポップスグリルの上で点滅し

       シャニがコーヒーを運んできて聞く

       「おかわりどう?」

       そして言う「ねえ、ビル、何考えてるの」

       

       彼女は去った、 俺をナイフのように刺したあと

       ねえ、美しい人よ、君は俺を救うことができる

       ただ一瞥するだけで、この魔法のストリートで

       恋は愚か者のダンス

       俺はセンスはよくないが、踊れる足は持っている

       

       夏服の少女達

       夕明かりの涼しさの中

       夏服の少女達が通り過ぎる

    (詩 ブルース・スプリングスティーン  訳詩 三浦 久)

  

 この歌は我等男性陣の思うところ(勝手なロマンティズムと言うべきか)が良く出ている(と思う)。そしてこのPVがまた良いんだ(笑)。貼り付けできないようになっているのでリンクさせときます。見てね。

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