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酒と星とカヌー


琥珀の液体の中で
氷が溶ける音がすると
喉を通過するのは
夕日に眩いカヌーと
原野の向こうで
目を覚ます星

暗闇が迫り
恋も夢も すべては
岸辺の野営地の
美味しい料理

 

 昨日は珍しく帰宅が早くて、それで久しぶりに飲みに行った。私はチェーンの居酒屋が嫌いで、仕事の打ち上げとか忘年会とか、そんな時にしかなるべく入らないことにしている。だからと言ってスタイリッシュでお洒落なバーというのも堅苦しくて嫌いだ。

理想はカウンターがあって、こじんまりとしていて、酒とオリジナルな料理が美味しく、そして個性的なマスターのいる店。

昔、高校生の頃、私はあまり学校へは行かずその代わりせっせと、とある飲み屋に通っていて、今でもそこの常連客だった人達を同窓生のように思っている。

そして大学の頃は吉祥寺の「のろ」。ここではその後、バイトすることにもなって貴重な経験を一杯させてもらった。

「のろ」で働いていた時、いつもいいな、と思っていたことがあって、それは地元の人達がキープしたボトルを目当てにして、ほぼ毎晩、ほんの短い時間だけ通ってくること。

 お通しとつまみをほんの一、二品、それにウィスキーか焼酎のお湯割を飲んで、マスターや常連客同士で会話し、それで、「帰って、風呂入って寝よ。」なんて言って帰っていく。それは、当時の、どうやって生きていくべきか皆目検討がつかず、途方に暮れるようだった自分にとって、理想の、羨むべき「都市生活」に見えた。

昨夜はそれがしたくなった。それには近所に上記したような店がなくてはならない。そして見当はついていた。

 それは京王線南平駅前にある「さすらい人」というお店。山小屋風の作りで、ダッヂオーブンでつくった料理やオリジナルなメニューがいっぱいある。実は以前、2度ほど行ったことがあって、その時、店内にジャクソン・ブラウンの『レイト・フォー・ザ・スカイ』がかかっており、料理が美味かった。

いずれまた来ようと思ってネットで調べて見ると、マスターはカヌーをやっている、アウトドアが好きな面白そうな人だった。

我が家から徒歩で10分。私は近くのスーパーに買い物に出かける気楽さで、店に出かけた。

           ☆

 本当は毎週火曜日は休みのところを昨夜は翌日が祝日で休みだから来る客もいるだろうと、それで店を開けたと、マスターは言っていた。入るなり店のBGMはマイルス・デイビス。

 私はアーリータイムスをロックで三杯飲み、お通しの煮込みとオリジナルベーコンと粗引きソーセージを食べた。壁に“イカ焼きー屋台風・居酒屋風”とあったのでその違いを聞いたりしているうちに、私はマスターと言葉を交わすようになって、それで「マスター、カヌーおやりになるんですよね?」と思い切って聞いてみると、ある雑誌を手渡してくれた。

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 『カヌーライフ』。そんな雑誌があること自体知らなかったが、写真がキレイで、自然と一体になり川下りする素晴らしさを存分に伝えていた。そして、マスターは御岳の方にスクールがあること、そして我流で始めず、最初はスクールに通った方が良いと教えてくれた。

「スキーとかと同じでヘンな癖がつくと直せなくなっちゃうんですよ。」とマスターは言った。

その他、リバーライフ用地図というのも見せてくれて、それには日本のカヌーを堪能できる川全ての詳細なデータが書かれており、こんなものがあること自体、目からウロコであった。

 他の客が全て帰ってしまうとマスターは大きなテーブルの上で、アジの開きの燻製をつくる準備を始めた。多用なメニューがあるのに全部一人でやっているので片時も動きを止められないといった感じである。

 アジの裏と表にたっぷりとコショウを振って尾につるす為の金具をとりつけ念のためタコ糸で縛る。「アルプス(地元のスーパー)で買って来たやつです。」とマスター。

 帰り際、マスターに「お家にVHSのデッキ、まだありますか?」と聞かれて“ある”、と答えると1本のビデオを貸してくれた。『熊野川ーA Video Touring Map for Kayakers』とうビデオ。

 「一人でもカヌー人口が増えると嬉しいから。」と、そして「今は寒いから無理ですけど、温かくなったら是非。」と、言ってくれた。

                        ☆

 
 店から出ると空は星がキレイだった。やっと台風一過と言う感じになったのか。私が住んでいるのは東京でも郊外なので、夜、あらゆる店が閉まり街の灯りが消えると、時々キレイな星空が見えたりする。帰り道、歩きながらあのアジの燻製を食べてみたいと思った。これから足を運ぶ回数が増えそうだな、とも。そして今度、ビデオを返しに行く時、アリータイムスを1本入れようと思った。

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