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こんにちは

 

     喫茶店の窓から
     駅前の群集を見て
     ぼくもきみも
     以前はこんな風だったのか
     と思ってみる

     色とりどりの傘をさして
     無言ですれ違う人々
     信号が赤になり立ち止まると
     顔見知りというだけでは
     向こう側の人となんだか気まずい

     人生のビデオテープを
     出会いの場面まで巻き戻して見れたなら
     初めて声をかけたのは
     果たして ぼくか
     きみか
     そして その第一声は何だったのか

            ★
     
     「マストロヤンニっていい男だと思わない?」
     「マストロヤンニって誰ですか?」
     「スイマセン、ライターお借りできますか?」
     「いいえ、ぼく煙草吸わないので。」

     ぼくらを他人じゃなくしたキッカケが
     ユーモアやウィットの効いた会話だった可能性は
     極めて低い
     運命の出会いとやらに見舞われた時
     大概 人は
     ただぼんやりとしているだけなので

     信号が青に変り
     人々がまた歩き出す
     その時
     すれ違いざまに1人の少女が
     小石のようにありふれた呪文を
     ぼくに呟く

     「こんにちは」

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詩集「The letter」 (79)」カテゴリの記事

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