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『博士の愛した数式』~オイラーの公式とE=mc²

401303  ある日、「数学が世の中の何の役にも立たないと知って、かえって数学が好きになった。」と、娘が言った。それは彼女が小川洋子の『博士の愛した数式』を読んだ後のことで、確かにこの小説には主人公の博士がそのように語るシーンがあったと記憶する。

 この小説を読むと数学が実は音楽や詩や絵画などと同様、世界(宇宙)の美しさに関る学問であることが良く分かり、数式というものに対する印象がガラリと変る。

 私も数年前、偶然、自分の詩に同じように書いたことがあって、特にこの小説で博士が数学について、最初のイメージが大事、と説明する件はなんだか詩の誕生する瞬間の説明のようにすら思えた。そして、こういうふうに教えてくれる先生がいたら、私の学生時代の成績もあんなに惨憺たるものじゃなくて済んだのに・・・と密かに自己憐憫の情をもよおした次第。

 で、この小説の題名の“博士の愛した数式”とは「オイラーの公式」のことである。人類の秘宝、とまで言われている公式らしいが、それは

        Eπi+1=0

 と言うもので、難しい説明は避けるが(というか出来ないが)、これは二つの無理数(円周率のように決して割り切れない数のこと)に虚数をかけ合わせ、それに1を足すと0になるというもの。私個人としては果てしない混沌を0に終着させる魔法のようなイメージがあるが、実際、物語の中でもそのように使われていた。

 “果ての果てまで循環する数と、決して正体を見せない虚ろな数が、簡潔な軌跡を描き、一点に着地する。どこにも円は登場しないのに、予期せぬ宙からπがeの元に舞い下り、恥ずかしがり屋のiと握手する。彼らは身を寄せ合い、じっと息をひそめているのだが、一人の人間が一つだけ足し算をした途端、何の前触れも無く世界が転換する。すべてが0に抱きとめられる。オイラーの公式は暗闇に光る一筋の流星だった。暗黒の洞窟に刻まれた一行の詩だった。”(本文176pから抜粋)

 ふーん。確かになんだか詩みたい。そしてこの公式を知ってもう一つ思いだしたのが

         E=mc²

 と言うやつ。ご存知の通り、これはアインシュタインが特殊相対性理論の帰結として発表した有名な式だが、またまた個人的なイメージを言わせて貰うと、果てしなく増殖するエネルギーっといった感じがあって、核開発などに十分応用されたと想像する。

 この式については最近ある写真を見て感じ入ったことがあって、それは広島原爆の被害にあったある女子高に立つ慰霊碑の像にこの式が刻まれているもの。当時のGHQに配慮して「原爆」とは彫れずに、その代わりとしてこの式を刻んだのだとか。だが私にはその像が慰霊碑と言う以上に被害にあった後も人間自身がそれ以上のエネルギー体となって力強く生きていくのだと宣言している像のように見えた。

 そもそもエネルギーそのものには善も悪もない。そして、この像のようにそれが人間の懐にあるうちはE=mc²もやはり美しい式のように思える。

 数学や物理に詳しい人には全くナンセンスで意味不明な文章かもしれないが、あくまで個人的なイメージの話として許して欲しい。

 今、危機の瀕しているこの国にオイラーの公式を。

 混沌を終着させる+1とは誰なのか、何なのか。

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