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Just passing trough~to Hans Coper

 

 

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古代美術に触れ
その作者にまで想いを馳せる人は稀だ
まるで宇宙の創生から
すでにそこに在ったかのような
慎ましやかな
作品(もの)たち

 

一体、これまでどれだけの人間が
この星を
通り過ぎて行ったことだろう?
無名性に没し その歓喜や苦難の 
一切を語らずに

 

     ☆    

       
How?の前に
Why?
人はとり憑かれたピアノの調律師のように
幻の絶対音程に近づこうとする
と 
ハンス・コパーは言った
だが
聴診器をあて探り当てたのは
狂った音階ではなく
不思議な形をした
自身の心

ティッセル・フォーム スペード・フォーム
キクラデス・フォーム

「私の関心は実験や探検にあるのではなく
本質をひき出すことだ。」

 

         
      ☆
   
死後
妻が最後の手紙を焼いたとき
彼は本当に死んだ
そして 無名に帰り 手に入れた
“今”を
古代人と同じやり方で
未来に遺す術を       

 

 

 昨日は静岡市美術館へ「ハンス・コパー展」を見に行った。去年「ルーシー・リー展」を見た際、どうしても彼の作品も見たいと思っていたが、やっと見れた。

 

 5、7連は生前、自らの作品に関してほとんど何も語らなかった彼の、貴重な記述のアレンジ、引用です。(展示にはあったが図録にはないので、ネットで探したら、あった。コメント欄にコピペしておきます。) 

 

 

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詩集「The letter」 (107)」カテゴリの記事

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(1969年 ヴィクトリア&アルバート美術館での

展覧会カタログでのコパー自身の文章)


王朝誕生以前のエジプトの器、

私の手の大きさでやや卵形の

何千年も前に、おそらく奴隷の手によって作られ、

色々な意味で生き抜いてきた。

つつましく、無抵抗で、どことなく滑稽な

しかし、力強く神秘的で官能的だ。

何かを伝えるのではなく、

自己表現をするわけでもないが、

しかし、作り手とその生きた時代の人間世界を内包し、

映し出しているように見える。

微かな力で、敬意をこめて。

「人間」によって作られた完璧に無駄のない物体。

ジャコメッティの人物像。

バックミンスター・フラーの人間。普遍なもの。

私を真に魅了したのは、この器だけだ。

それは、私が器を作る理由ではないが、

しかし、人とは何かを垣間見せてくれる。

私の関心は、実験や探検にあるのではなく、

本質を引き出すことにある。

ろくろは、簡潔さを要求し、限界を決定づけ、勢いと連続性を与える。

単純なテーマで、連続したヴァリエーション作ることに集中するとき、

私のその工程の一部になっていく。

私は今ーこの素晴らしい世紀ーに存在するという体験に

共鳴しうる感度を持った道具を学び始める。

その目的と機能に関しては、

あいまいに語られるクラフトというものに取り組むとき、

人は不条理に直面するときがある。

まるでとり憑かれたピアノの調律士のように、

何よりもまず、幻の絶対音程に近づけようとするのだ。

そして、消え去ってしまう見せかけの理念に逃避しがちだ。

しかし、それでもなお、習慣となった仕事は残る。

人は、現実に取り組む。

投稿: ナヴィ村 | 2011年5月 3日 (火) 12時21分

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