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『ザ・スタンド』~傑作。

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 ふう・・・・。やっと読み終わった。スティーヴン・キングの『ザ・スタンド』。厚めの文庫本にして全五冊。今はどんな本でも読破できそうな気がする。

 軍の施設から致死率99%の殺人インフルエンザ、キャプテントリップスが漏洩し、アメリカがほぼ死滅。そして僅かに生き残った人々が「善」と「悪」の側に分かれて闘うとい黙示録的なお話。

 1、2巻は沢山出てくる登場人物それぞれの紹介と、現実にこれが起こったら国家やコミュニティーは一体どうなるのか?についての予知夢、あるいは克明なシュミレーションのよう。私がこれを知人から借りて読み始めたのが3月11日前後で、時あたかも郷里福島での原発事故があった頃。ちょうど親戚、友人等が逃走、避難の真っ最中だったので、暗澹たる気持ちに拍車がかかり読むのが頓挫していた。それを先日気を取り直して読むのを再開したのだが、聞かされていたよう、正に、後半イッキ、だった。

 物語が無類に面白くなるのは3巻頃からか。生存者達の夢に「善」の側の象徴的な人物マザー・アバゲイルと「悪」の側のそれ、闇の男が現われ、人々がそれぞれに合流し始めるあたりから。それまでは「事故」以前、主要登場人物達がどのような人生を生き、何に悩み、何をトラウマとし・・というところがマルチ・プロットで、キング独特の執拗さで描かれる。疲れるが、これが後半効いてくる。

 文庫あとがきにもあるよう、人々は善悪それぞれの側に分かれるが、どちらの側のキャラクターもそれぞれに魅力的。そして読みながら自らの中でも善と悪が拮抗してることに気づかされる。誰の中にもスチュー・レッドマンがいる一方でハロルド・ローダーが、女性ならフラン・ゴールドスミスがいる一方でナディーン・クロスがいるといった具合に。

 個人的に興味深かったのは圧倒的な兵器を完備していると思しき「悪」に対し、小さな政府のようなものを作って相対しようとする「善」の側のリーダー達に瀕死のマザーが言う言葉。

「神様があんたたちをここにお呼び寄せになったのは、委員会だのコミュニティーだのをつくらせるためじゃあない。」

 そして彼女は彼らをネイティブ・アメリカンたちのイニシエーションの儀式ヴィジョン・クエストのような、聖書のイザヤやヨブのような荒野への旅へと向かわせる。そして、その旅の結末は・・・。

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 この本は「アメリカ人が好きな本」というアンケートで過去の様々な古典に混じり、堂々の5位だったとか。そしてキング作品の中で最も映像化して欲しくない一つだということだが、残念ながら?映像化はすでにされていて、それはTV映画のようなものらしい。私も読中・読後のイメージを壊されたくないので見るまいと思っていたが、調べるとフランの役をモーリー・リングォルドがやっている。80年代の映画『プリティ・イン・ピンク』のあの子。わぉ!見てみようかな。

 早く読み終わりたいと思い、その後、どっぷり夢中になって、最後は読み終わりたくなかった。また各章の初めにある歌の歌詞からの引用(ブルース・スプリングスティーンの『ジャングルランド』、ポール・サイモンの『アメリカ』など)や、随所に暗号のように散りばめられている言葉にロック・フリークはニヤリとさせられる。例えば殺人インフルエンザ、キャプテン・トリップスはあのグレイトフルデッドのリーダー、故ジェリー・ガルシアの愛称でもある。

 最後にこの引用。

 「もしかして、われわれがこの子になにがあったのか話してやれば、この子がまた自分の子供達にそれを伝えてくれるかもしれない。警告してくれるかもしれない。愛する子等よ、これらのおもちゃは死につながる。ーこれらは閃光火傷であり、放射線障害であり、窒息死を招く疫病である。これらのおもちゃは危険だ。これらをつくったときは、人間の脳髄のなかに棲む悪魔が、神の手を導いてそうさせたのだから。これらのおもちゃをもてあそんではいけない。いいね。愛する子らよ。けっしてこれらに手を出してはいけない。二度とふたたび・・・どうか、これから教訓を学んでおくれ。この空っぽの世界をして、おまえたちのお手本としておくれ。」(第五巻P469~470から引用 訳 深町眞理子)

 現在、福島第一原発2号機では核分裂が起きている。その一方でのTTP。こんなダークファンタジーをこんなにリアルに、こんなに身につまされて読むことになるとは思わなかった。

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コメント

使用済み核燃料の廃棄処分に関しては10万年単位で物事を考えなければならない。

その際記事の太文字の部分を警告として後世の人間に残しても果たして彼らが「読めるのか?」という問題が残るとの事。

俺らだって10万年前の事なんて何も知らない。

使用済み核燃料の処理のことを考えれば原発をどうするかなんて、子供でも答えが出せる。

現在の状況はあらゆるフィックションを超えているよ。

投稿: ほぴ村 | 2011年11月 4日 (金) 07時00分

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