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映画『大鹿村騒動記』~歌舞伎の勝ち

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 歌舞伎は慶長年間(1596~1615)、京都・江戸で出雲阿国が始めた「歌舞伎踊り」がその起源と言われているが、今日見た映画『大鹿村騒動記』の中で描かれている大鹿歌舞伎も300年の歴史があると言う。それも文献に現れた最初がそれだと言うだけで、本当はもっと遡れるのかもしれない。

 原田芳雄の最後の映画がこの大鹿歌舞伎に材を得たものと聞いて相応しい気がした。原田の役者馬鹿ぶりとこの地芝居を守り続けた共同体の情熱が重なって見えると思ったからで、実際、鹿肉屋のおやじで村の花形役者である善を演じる原田芳雄はハマッテいた。しかし、ぼくは思う。これ、コメディじゃないほうが良かったんじゃないか?

 幼なじみと駆け落ちしていた妻が認知症を患って18年ぶりに村に戻ってくる。その元妻は病気で記憶がかなり混乱しているにもかかわらず、歌舞伎の芝居のセリフだけは覚えているという面白い設定。そしてそこに村の様々な人の思いや事情が重なって・・・と考えたら、もう少し違うシリアスなヒューマンドラマにだってなりえた筈だ。なにも軽妙なタッチのコメディが嫌いなわけではないが、そうしてしまうにはこのテーマ、この設定、それに大鹿歌舞伎があまりに勿体無い気がした。この映画の中で演じられる『六千両後日文章 重忠の館』はこの大鹿歌舞伎にのみ伝わっている演目で、それをもう少しじっくり見たかった、という思いもある。

 また、もう一つ気になったことがあってそれは音楽の使われ方。何故、芝居の最後のところに音楽をかぶせたりするのだろう。歌舞伎を素材として得たというだけで、愛を感じないなあ。そして、音楽の話が出たのでもう一つ。それはエンドロールに流れる忌野清志郎の歌。最近、TVCMその他でも周囲をほのぼのと安心させ和ませる道具のように彼の歌声が多用されている気がするが・・・・安易だ。きっと使っている人は清志郎のファンではないのだろう。

 先日、第35回日本アカデミー賞の主演男優賞を故原田芳雄がこの映画で受賞したが、ぼくが思ったのは昔昔『ハスラー2』でポール・ニューマンが本場のアカデミー賞を受賞した時のことで、つまりもっと以前にもっと違う映画でいくらでも機会があったのでは、ということ。まあ、日本アカデミー賞などにそれほど意味を感じてはいないが。

 映画を見る喜びと芝居を見るそれと一石二鳥だと思って見始めたが、その二つは衝突していた。そしてそれは歌舞伎の勝ち。故原田芳雄には悪いが、今は年に春と秋に上演されるという大鹿歌舞伎を強烈に見たくなっただけ、というのが正直なところ。

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