レヴォン・へルム氏死去~「オフェリア」
レヴォン・へルム氏死去。The Bandのドラマーでマンドリン奏者でボーカリスト。一昨日、新聞を読んでいた息子が教えてくれた。リチャード・マニュエル、リック・ダンコに続き、ついにレヴォンも・・・という気がするが、これでThe Bandのボーカリスト三人全員が故人となった。後はロビーとガースだけ。
評伝などを読むと、昔、良くThe Bandの真のボーカルは誰か?と言う議論があったそうだが、私はやはり誰ということはなく3人で良いと思う。名曲『The Weight』などで各箇所ごとにボーカルが入れ替わる様は、それだけでこのバンドの層の厚さ、音楽的な豊かさを伝えているようで壮観だった。ただ、私は個人的に、粘っこく、無骨なレヴォンの声が好きだった。
先日、映画『マネー・ボール』を見ていて、ふとアメリカ男の「顔」について考えた。私の子供の頃、アメリカ人の男というと、それはスティーブ・マックィーンであり、ジェームス・コバーンであり、チャールズ・ブロンソンなどなどであった。今の基準からして、皆、とても美形とは言い難いが、皆、カッコ良かった。味があって、男が惚れる男、と言った感じ。
レヴォン・へルムはそういった男の顔をしている。そう言えば彼は映画にも出ていて、一本は80年の、カントリーの大御所ロレッタ・リンの生涯を描いた映画『歌え、ロレッタ、愛のために』(原題は『Coal Miner daughter』)で、鉱夫で主人公の父親役を、もう一本が83年の『ライトスタッフ』でサム・シェパード演じる音速を越えた飛行機乗り、チャック・イェーガーの相棒役を演じていた。両者とも寡黙なアメリカの男。好演だったと思う。
彼の死を聞いて、昨日、YouTubeで様々な映像を見たが、中に彼がアメリカのTVショーに出てインタヴューを受けているものがあった。中で自分の人生をダイジェストに語っていたが、エルビスを聞いて音楽にのめり込み、様々な経験の後、カナディアン・ボーイをかき集めてバンドを作った・・・みたいな事を言って笑いを誘っていた。The Bandは4人がカナダ人でレヴォン一人がアメリカ人。私が読んだThe Bandの評伝(『流れ者のブルース』バニー・ホーキンス著 大栄出版)は彼らの名曲『アケイディアの流木』そのままに、カナダの少年たちが音楽に出会いそのままアメリカ音楽の旅を経た後、The Bandを結成する・・と言った物語だったが、一人アメリカ人のレヴォン・へルムには、きっとTVショーで語ったような感じだったのだろう。
映画『ラスト・ワルツ』以降のThe Bandに期待してロビーのソロを買うたびに肩透かしを食った。しかし、ロビー抜きのThe BandはThe Bandのままで、それはひとえにレヴォン・へルムの「声」に負うところが大きかったと思う。
↑の動画は多分、彼の最晩年のドラム&歌と思われる『オフェリア』。時の流れと言うのは残酷に感じることが多い中で、これは例外的に美しい。
さよならレヴォン・へルム。涙。Thank you for Good musicu.
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