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記録すること・記憶すること~山本作兵衛の炭鉱記録画

 世界記憶遺産をご存知だろうか?ユネスコの三大遺産事業の一つであるらしい。どんなものが認定されているかというと、フランス人権宣言、アンネ・フランクの『アンネの日記』、ベートーヴェンの第九の草稿、グーテンベルクの聖書などなど・・・だが、わが日本政府も源氏物語絵巻や鳥獣戯画などをユネスコに対し推薦・申請しているとのこと。

 で、去年の5月、その日本初の世界記憶遺産が認定された。ちゃんと報道されたのだろうか?それとも震災と原発事故で騒然としていた時期だったので、報道されてもあまり目立たなかっただけか?私は知らなかった。

 それは山本作兵衛氏の炭鉱記録画・記録文書、というもの。

 Photo

福岡県筑豊炭田で鉱夫として働いていた山本氏が明治から昭和にかけての炭鉱労働の実態を後世に伝えようと残した絵と文書で、残された絵は墨絵から水彩画まで1000点以上に上るという。

 昨日24日のニュースで、その山本作兵衛氏のいわゆる“作兵衛画”をその遺族が自費出版するというのを知った。私は感動と同時に憤りを覚えた。

 感動はもちろんこの山本作兵衛氏の存在とその絵を知り、触れ得たことによるものだが、憤りの方はそれほどのものが自費によってしか出版されないのか?という現状に対して。ユネスコの認識に比べてこの意識の違いは何だろう。

 私は先日の日曜日、『NHKアーカイブス新日本紀行が見つめた福島浪江・涙の上映会・帰れぬ故郷の安波祭』という番組を見て、記憶、記録することの大事さを痛感していたところ。そしてそんなところに山本氏のこれらの絵を見て頭をよぎったのは現在の原発労働者のこと。その実態を誰が記録し、どのように記憶するのか。

 山本作兵衛氏の炭鉱記録画は↓のホームページで記憶遺産に登録されたうちの585点を見ることができる。

 http://www.y-sakubei.com/world/index.html

 スライド式に見れるこの炭鉱記録画を見ていて、中の一枚に見覚えがあった。それは高田渡の「鉱夫の祈り」をこの前YouTubeで見ていた時のことだが、そうか、あの絵は山本作兵衛氏の絵だったのか。現在は削除されていて見れない。

 昨日、娘と“もし、自分がユネスコの世界記憶遺産を選ぶ選考委員の一人だったら何を選ぶか”と言う話をした。

 それで私が思いついたのはアメリカのフォークシンガー、ウディ・ガスリーの歌の数々。山本作兵衛やウディのように、世界にはたった一人で、このように底辺の人々の姿を歌や絵で記録し、後世の記憶に留めた人がいるのだ。そしてその精神を継承する人々も。

 ウディのギターにはこう書かれていた。「このマシーンはファシストを殺す」。

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日記・その他 (227)」カテゴリの記事

コメント

うちに、本ありますよ。東京新聞にはかなり大きく取り上げられたので買いました。
私のベッドサイドブックの一冊です。明日も仕事かー。と思う時、この素晴らしい絵を見て、権力に屈することなく、生きるために働こうとおもうのね。

投稿: mimi | 2012年4月25日 (水) 08時13分

 ぼくは閉山になったとは言え炭鉱の町で育ったからね、祖父は鉱山労働者のための保養所をしていたし、親戚のおじ達の多くは皆、鉱夫でした。

 作兵衛画はだから とても身近な感じがする・・と言うか、祖父達の時代の空気をとて正確に伝えてくれているような気がします。

 源氏物語絵巻や鳥獣戯画じゃなくてこれを最初に選んだユネスコは凄い、と思いました。ちょっと見直した。

 へぇ、持ってるんですか。皆知っていて、知らなかったのは僕だけかな?  

 

投稿: ナヴィ村 | 2012年4月25日 (水) 21時26分

いや、皆知ってるってことはないと思うよ。うちの夫も三池の炭鉱町出身だという事によると思います。炭鉱から炭鉱へと渡っていた人も多かったときいていますから、どこかで常磐炭鉱ともきっと繋がっていたでしょうね。
いま、炭鉱の歴史を振り返ることに注目が集まっていますよね。社会運動、エネルギー問題・・・。そんななかでも貴重な記録だと思いますが、何より労働画って、人の心を打つものがあります。写真よりも。もうひとつ、好きなのは、ハワイ移民のサトウキビ畑で働く労働者を描いた絵。

投稿: mimi | 2012年4月26日 (木) 10時06分

いや、昨年の記憶遺産認定直後、比較的大きく報道されたはずだと記憶してる。それと連動して、深夜にNHKの過去の特集番組の再放送などもあったし、もしかしたら紹介展みたいなものもあったような……。
 それで世間のかなり広い認知を勝ち得たかと言うとそこはまぁ微妙だけど、昨年時点での報道が、この手のものごとに敏感な感受性を持つ人たちにアピールする/認知される機会だったのは確かなんじゃないかと。
 画家が人に見せるために描くのとは全く違う美しさや凄さというのは、そんなにわかりにくいものではないと思うけどな。方向性こそ異なるけれど宗教美術なんかもそういう類のものだろうし(信仰に基づくか使命感に基づくかの違いみたいな)。でもって必ずしも絵画を愛するひとたちにアピールするものではない(ファインアートの文法では語りえない)から広い認知にはつながりにくいけれど、美術と別のカテゴリーにアピールするから、ちゃんとした機会さえあれば、それをキャッチできるアンテナを持つひとびとは必ず反応するんじゃないかと。

投稿: Howlin' | 2012年4月27日 (金) 00時15分

Howlin'お久しぶりです。年賀状の返事出しそびれてずっと気になっていました。

 宗教美術との共通性という点を考えると、一つには「イコン」となりえる種類の絵なんじゃないかと。

 エントリーに貼り付けたYouTubeの絵は山本作兵衛のものとは知らずずっとぼくの記憶に残っていたもので(渡さんの歌が好きだったということも大きいが)、それはまさにイコン的な効果だと思った。

 だからこれは記憶遺産にまったくふさわしいんじゃないかと。

 

 

投稿: ナヴィ村 | 2012年4月27日 (金) 20時27分

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