風の力を知る
カセットテープのインデックスを見ると2003年3月29日にオンエアされた佐野元春のラジオ番組「Radio fish」の特集は“風の力を知る”。確か一曲目はAssociationのWindyだった。
ちょうどお台場に風力発電の風車が出来た頃で佐野自身がその風車まで取材に行った様子とその時来日していた環境学者レスター・ブラウン氏へのインタヴュー、またそれに併せて風を題材にした曲ばかりを集めた内容だった。
この番組を聴いて、当時、まだ小さかった息子と娘を連れてこの風車を見に行ったっけ。反ブッシュだった自分はその頃、反米主義の立場を取っていてディズニーランドなどには行かず、子供をそんなところにばかり連れて行っていたのだ。子供達さぞつまらなかっただろう。
今日、仕事を休み、ゆりかもめに乗って癌研有明病院に友人を見舞いに行った。段階的に入退院を繰り返しながら治療に励んでいる彼だが、数日前、ちょっと辛そうだと人づてに聞いてそれで行くことにした。しかし、会ってみると抗癌剤治療の一番辛い時期は終わっていたようで、思ったより元気そうだった。
病室から談話室のようなところに行ってしばらく話したが、病室も談話室も窓からの眺めが素晴らしく、レインボーブリッジと紺碧の海、そしてその絵の中で上記したお台場の風力発電の風車がくるくると回っていた。
片方の目を摘出し、また薬の影響でスキンヘッドの彼は昔のオーストラリアのバンド、ミッドナイトオイルのピーター・ギャレットのような風貌になっており、窓の風景をバックに語る姿はなかなかキマッテいた。私達は仕事の近況や昔の友人の事、食事について話したが、前回会った時と同様、見舞いに行ったつもりがまた自分の方が力づけられてしまった。
本人も言っていたが、健康を損なうとそれまで気づかなかったことを知る。それは良く考えればシンプルな事実ばかりなのだが、普段、それが見えなくなっている私達はきっとそのシンプルな事実に励まされるのだと思う。
途中、「お前にだから話すのだけれど・・」のような感じで、彼はある不思議な話をした。しかし、その内容は普段から私も感じている事だったので、別に突拍子のないものとは思わなかった。そうか、やはり・・・と思っただけだが・・・やはり詳しいことは言わずにおこう。
彼に言わせると、車の運転にしても料理にしても、普段の当たり前の行為やその積み重ねである日常は、実はとても絶妙な均衡の上に成り立っているとのことだった。なんだか「ゲド戦記」の中のゲドの言葉のようだった。
平和というのはこういう日のことを言うのだろうな。窓の外で風車がくるくると回っていた。良い時間だった。
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