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『見えない絵本』~閉じた目に見えるもの

Photo_2  先週末、読んで、感想らしき文章を書こうとしたが、何度、どんな風に書いても全てが見当違いのような気がして記事をアップできずにいた。本当は今も心の中では何もまとまらずにいる。

 お盆にお母さんのふるさとの長崎に行った少年樵(しょう)の物語。ペーロン、精霊流し、原爆、日本二十六聖人・・・・それらに触れているうちに樵はある不思議な体験をし、一時的に視力を失う。

 「見えない絵本」とはそのような状態の彼に映画監督の伯父が読み聞かせするものなのだが、甥の少年に映画的技法を駆使しながらワンカットづつ積み上げるようにする、その読みは圧巻だ。

そうして読みながら、知らず知らず読者である私達の頭の中にも一冊の絵本ができあがる。本棚に並べることの出来ない、しかし、決して忘れることの出来ない絵本が。

 故郷の福島原発の事故以来、当事者でなければどんな惨事もリアリティのある問題として考えることができないという人間の現実に暗澹たる気持ちになった時、私が考えたのは広島と長崎のことだった。結局、これまで、私にしたって何も分かってはいなかったのだ。

 九日後、視力を回復した樵は、伯父がプレゼントとして置いていった例の絵本を手に取るが、そこで彼が見たものは・・・。

 長崎の風土、歴史、信仰、またこの国においてそれらがどんな意味を持つのかを伝えるのに、児童文学の方法でこんなことができるのかと思い知らされ、唖然とさせられた。

 “本当に大事なものは目に見えない”と、「星の王子様」の中でサン・テグジュぺリは言った。が、この本はその、目を閉じた時に人が見るべきものについて書かれている、と思った。きっといつまでも読み終わることの無い一冊。

  67年目の長崎原爆の日に。

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