蝉
しがみつく手を幹から放し
蝉は地に昇天した
最後に目に映じたのは
揺れる緑の葉と枝と
その間を流れる
雲
青空ー
時々 虫取り網を持った
子供らに
風のように追われもしたが
大概、お前はじっとして
宇宙語みたいな
梵音を
ずっと夏中
唱えていたっけ
真言を生きる
蝉の一日は十年 ゆえに
蝉の寿命は七十年
労働に明け暮れる
ぼくの十年は一日 ゆえに
ぼくの寿命は七日 あと三日
昼休み 神社の境内に寝転ぶ
ぼくの目に映じるのは
揺れる緑の葉と枝と
その間を流れる
雲
青空ー
ミーン。
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