« 蝉 | トップページ | 26度目の歌舞伎~秋山祭・「寺子屋」 »

改装中の歌舞伎座と「黒塚」

 昨日、京橋に映画を見に行ったその足で、現在、改装中の歌舞伎座を見てきた。正月に見た時はまだまだ工事現場そのままという感じだったが、現在は写真の通り。

Photo_3

 段々と出来てきた。後はこれに瓦を葺けば、というところか。早く歌舞伎座ができてくれないと困る。私のような貧乏人はあの幕見席がないと芝居を見る機会が激減する。ここ2年、私はずっと耐えているのだ。

 もしやと思い、その後、新橋演舞場に行って午後の部でも見れないものかと思ってチケットの有無を尋ねてみたが甘かった。チケットはすべてソールド・アウト。歌舞伎座がなくても、新橋演舞場で、国立劇場その他で、歌舞伎人気は衰えを知らない。しかし、しょうがないと諦めて立ち去ろうとする背中に、チケット売りのお姉さんの、あ、っという小さな声がして、振り向くと、幸運にも来週の日曜、一枚キャンセルがたった今出た、とのこと。それですかさずゲットした。この9月は秀山祭。ということは鬼平、じゃなかった、吉衛門だ。演目は寺子屋と河内山。ラッキー、楽しみが増えた。

Photo_5 で、生で見るのは来週のことにして、今日はテレビで見た。七月の猿之助襲名披露公演から口上と黒塚、それと櫻門五山桐(さんもんごさんのきり)。

 今年の歌舞伎界の大ニュースと言ったら、言わずもがな二月の勘九郎襲名と七月の猿之助襲名だったろうが、色んな意味で中村屋より澤潟屋のほうが話題性があった。猿之助が猿翁に、亀治郎が猿之助に、香川照之が中車に、そしてその息子が團子にと、時代の変わり目をあらわすような刷新ぶりで、この舞台、なんとか見たかったがどうしてもチケットが取れなかった。

 猿之助、というとスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」をすぐ想起するが、今日、テレビで見たのは「黒塚」。襲名披露公演にこれを持ってきたところに何か今という時代に深くかかわっていこうというニュー猿之助の意気込みを感じた。

 どういう芝居かと言うと福島県二本松市 安達太良山東麓の安達ケ原の鬼婆伝説をもとにした舞踊劇。安達ケ原で阿闍梨(あじゃり)の一行が一夜の宿を求める。そこの老婆曰く、寝屋の中だけは見てくれるなとのことなのだが、しかし、中の一人がこっそり見てしまい、そこは屍累々の有様。老女は実は鬼で、その後、一行が観世音菩薩の威光で鬼を退治、成仏させるという話。亀治郎改め猿之助は集中があり、全身から妖気が漂うようで、渾身の鬼女であった。奥州(東北)に鬼がいる。見てはいけないと言われているものがある。色んなことが見ながらにして頭の中を様々に去来した。

 その後の「櫻門五山桐」は石川五右衛門に海老蔵、真柴久吉が猿之助改め猿翁。派手で色鮮やかな舞台に負けないオーラが海老蔵にはあって良い五右衛門だった。そして猿翁が登場した時、何かが継承されようとしている瞬間を見ているようで、思わず手を叩いてしまった。終了後は客席もスタンディングオベーション。良いものを見た。

 この2年、歌舞伎を見る機会が減る一方で、公私にわたって様々なことがあり、その中でかえって、何故自分がこんなに歌舞伎が好きなのかが分かってきた。以前はただただ賛嘆していただけなのだが・・・・。

 しかし、その話はまた今度。

|

« 蝉 | トップページ | 26度目の歌舞伎~秋山祭・「寺子屋」 »

歌舞伎(36)」カテゴリの記事