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まどみちおの「チョウチョウ」「するめ」

 先週の金曜日、仕事場で詩人まどみちお氏が亡くなったことを知った。去年末の吉野弘氏といい、また世界に埋めようの無い空席が一つ増えたような気がしている。

 まどさん、というと大概、まず「ぞうさん」の・・・ということになるが、間違いではない。ただ、ありきたいりな言い方として「ぞうさん」だけではない、と言いたい。しかし、その意味としては「ぞうさん」以外にももっとすばらしい詩があるぞっ!というのは勿論として、ここでは「ぞうさん」以外の動物もいっぱいいるぞ、という意味で「ぞうさん」だけではない、と言いたい。

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 かえる さる いぬ ねこ やぎ いか きりん さる おうむ くま うさぎ ちょうちょ・・・・・・きっと思いつく限りあてずっぽうに挙げたとしても、絶対どの動物も虫も一度は詩になっていると確信が持てるほど、まどさんの詩にはありとあらゆる生き物が出てくる。

 週末、訃報を聞いて本棚にある「まどみちお全詩集」を改めて読んで発見したのは、やさしいひらがなで書かれたこれら生き物たちの詩はネイティブ・アメリカンの詩の世界に通じるものがあるということ。色んな知識や科学などに犯される前の人間は、きっと世界をこのように見ていたのだろう、と思える。

 まどさんの詩を良く「子供にわかりやすい」とか「大人でも楽しめる」という言い方をする人がいるが間違いで、「いのちあるもの」ならなんでも、というのが本当だという途方も無いレベルだと思う。もし、ぞうややぎやきりんがことばを話せたら、きっと、まどみちお詩集を楽しめるだろうと夢想する。誰にでも書けそうだ、と言う人がいるが確かに中の幾つかは誰にでも書けそうかもしれない。が、書き続けることはできない。しかも104才まで。

 最後にぼくの好きなまどさんの詩を二つ挙げておく。ご冥福をお祈りいたします。

 

         

         「チョウチョウ」

       

         こころなら

         こんなに きれいなの・・・

  

         そう いって

         でてくるのかしら

         もじゃもじゃけむしから

         いつも

         チョウチョウは

       

  

         「するめ」   

         とうとう

         やじるしに  なって

         きいている

         うみは

         あちらですかと……

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