« 2014年5月 | トップページ | 2014年7月 »

苫米地サトロ 13年ぶりのサードアルバム「青空」

Cai_0344_3  昨日、仕事から帰ると郵便で亘理町在住のシンガー・ソングライター・苫米地サトロからCDが届いていた。13年ぶりのサードアルバム。今年の3月1日、「第五福竜丸事件」から60年目の日、ぼくは彼の代表作の一つである「ラッキー・ドラゴン」を聞こうとしてYouTubeを探すうちに彼が青森の反原発イヴェント「大マグロック」に出演し新曲「青空」を歌う動画を見つけ、急遽、このブログに紹介する記事を書いた。動画では弾き語りだが、これをぼくはロック・バージョンにしたらさぞカッコイイだろうとずっと思っていた。で、表題作にして一曲目、一聴すると、出来は想像通りにカッコ良いい。いや、想像以上。

 「13年ぶり」と言ったって、勿論、それが空白の期間だったわけがあろうはずも無く、サトロさんは色んな場所でずっと歌っていた。それどころか2011年3月11日には被災し、その間の事やその後の事が伊勢真一監督の手でドキュメンタリー映画になったりもして、その時彼の心にどのような思いが去来していたのかは想像も及ばない。

 http://youtu.be/71pjo1vqlUw

 ただ、その片鱗が結晶してこうして歌になったのかと、そんな風に聞いた。被災直後、個人的にくれた手紙の中でサトロさんは混乱の現地に救援が来た時の青空を生涯忘れない、と書いていた。この青空はその時の青空か、それともまた別の青空か。

 良い曲だなあ、と思って、サトロさんとぼくの共通の友人だった故人のことを思い出していたら、ライナーノーツの曲紹介にその人に捧げる、とあって少し驚いたのは3曲目の「ひとつぶ」。

 そして、シンプルで美しいリリックだがとても深いメッセージが込められている7曲目の「口笛」。“新しい人たちが/向かい風に生れてくる/立ち止まるだけで十分さ/あのうたを口ずさもう”とは曲の最後の部分。「あのうた」とは今のサトロさんにとって何を指すのか。どうかCDを手にとって確かめてみて下さい。 

                 ☆   

 PS 今朝は久しぶりに声が聞けて嬉しかったです。「青空」、しばらく何度も聞くことになりそうです。サトロさん、ありがとう。

 なのはなレコードの連絡先はこちら↓

 http://www5e.biglobe.ne.jp/~mihyaku/culture/satoro/album.htm

| | コメント (0)

「パティ・スミス完全版」と「Twelve」

Pattismith_2   ここのところ図書館から借りてきた「パティ・スミス完全版」を読んでいる。“パンクの女王”とか“パンクのゴッド・マザー”とか言われているパティだが、彼女はそのキャリアを詩人として始めた人で、だからレコードやCDの歌詞対訳を読むたびにぼくは以前から物足りなさを感じていた。さらりと訳されていたり意味不明な言葉には本当はもっと深いニュアンスが含まれているのでは?と思っていたから。

 「完全版」はパティの言葉を「詞」ではなく「詩」として訳していて、彼女の音楽を知らなくても詩集として読める。勿論、歌詞カードとしてそばに置いておいても良い。本書によって長い間知らずにいたことがいっぱい分かって、ぼくは益々パティ・スミスが好きになった。詩は出版時、最新アルバムだった「Gung Ho(2000)」までが収められているが、アルバムはその後「Trampin(2004)」、「Banga(2012)」と発表されているので、できれば中山康樹の「ディランを聞け!」じゃないが、その都度この訳者でヴァージョン・アップしたものを出して欲しい。まあ、それだと高価な本をその都度買い求めなくてはいけなくなって困るか。

 と、ここまで彼女の詩について書いていて、このアルバムを紹介するのもどうかと思うけど、こちらはシンガー、パティ・スミスの素晴らしさを知る一枚と言っても良いかもしれない。2007年に出たカヴァー集の「Twelve」。

Patti12

彼女自身の作品は1曲も無く、その名の通りロックの名曲が12曲カヴァーされている。ライナンプを挙げると

1.Are You Experienced? (Jimi Hendrix)
2.Everybody Wants To Rule The World (Tears for Fears)
3.Helpless (Neil Young)
4.Gimme Shelter (The Rolling Stones)
5.Within You Without You (The Beatles)
6.White Rabbit (Jefferson Airplane)
7.Changing Of The Guards (Bob Dylan)
8.The Boy In The Bubble (Paul Simon)
9.Soul Kitchen (The Doors)
10. Smells Like Teen Spirit (Nirvana)
11. Midnight Rider (Allman Brothers)
12. Pastime Paradise (Steavie Wonder)

 で、意外だったのは2、8、12。白眉と思ったのは10。ただし、どの曲も新しいアレンジで彼女の声で歌われると、どれもパティ・スミスの曲のように聞こえる。世間一般で言われるようないわゆる“上手い歌手”ではないが、でも聞くと、上手いなぁ、と、やはりため息が洩れる。個人的に一番好きなのは12の「Pastime Paradise(邦題「楽園の彼方へ」)」で、スティービー・ワンダーで何度も聞いたこの曲も彼女に歌われるとメッセージがより先鋭的に聞こえてドキリとした。

 http://youtu.be/IKxd5PLEVjM

 最初に紹介した「パティ・スミス完全版」の最初には「声をみつけるまで」と題された彼女のエッセイがある。それによると彼女は本当に子供の頃から狭儀にも広義にも 声、に自覚的な人だったようだ。昔、ある人に「声が言葉を選ぶ」と聞かされたことがあるが、その通りなら彼女の個性的な詩の言葉の数々は彼女の個性的な声が選んだものという事が言えるかもしれない。ボブ・ディラン、二ール・ヤング、ルー・リード・・・・そう言えば素晴らしいロックの詩人達は皆、素晴らしく個性的な声をしている。

 わたしの心にあったのはこういうことだーアーティストの進む道 自由を再定義する道 宇宙の再創造 新しい声の出現 by パティ・スミス

 大雨の先週末、「パティ・スミス完全版」を読み、「Twelve」を聞いてぼくは自分の詩を声に出して読みながら書くようにしてみた。

 ところで「Twelve」のジャケットの写真だが、これは1967年、パティ 21才の誕生日にかつての恋人(という表現が正しいかどうか)、写真家ロバート・メイプルソープが彼女に贈った手製のタンバリンなのだとか。山羊の皮に彼女の星座(山羊座)のマークがロバート自身の手で刺繍してある。

最高に大事なもの、という意味だろう。

 http://www.webdice.jp/dice/detail/3742/ 

| | コメント (0)

大雨

 

       大雨の日 川の水が増して
       濁流が川下にいっさんに駆けていく
       黄色く濁った海を
       まだ誰も見たことがないのに

       大雨の日 太陽は寝ている
       ベッドで聖書を読んでいる
       自らの誕生の始めを
       太陽は知らないから

       太陽が眠ると 草原に風が吹き
       畑に雨が降る
       薔薇が目を覚まし 納屋に驢馬が引かれていく
       雨の線が視界を遮ると
       水嵩が増し
       川にリンゴが流れる
       そして
       その後を蛇が追う
       安いモーテルの部屋に流れる
       Johnny Guitar
       イヴがアダムに言う
       「安心して。私たちが知る前に
       罪は川に流れて行った。
       きっと蛇は溺れ死ぬ。自分よりももっと大きい
       蛇みたいな 
       あの黄色い川に飲まれて。」

       警戒警報 
       遠くの空に稲妻の亀裂が走る

       警戒警報 
       事故で大学生が四人死亡した

       警戒警報
       放射線量上昇

       警戒警報
       橋の欄干で遊んでいた幼児は行方不明で
       殺人者は容疑を否認
       リオデジャネイロのホテルの客は
       四割減で
       何処かの山中で
       また
       誰かの
       白骨の
       遺体が
       見つかった

       Naoko
       音楽が終わったら
       テレビを消せ
       カーテンを閉め
       雨の音を聞き 愛を交わせ
       貞淑なボニー
       燃え上がるジュリエット
       或いは 
       「雅歌」の
       花嫁みたいに

       怒りに打ち震える斧
       告白を強いる瞳と拒絶の一瞥
       祈りは 
       叶えられなかった
       いや
       叶えられた
       この雨は
       国家の陰謀ではなく
       気象予報士のエラーではなく
       農夫の
       聖者の
       預言者の
       雨乞いの結果だ
       この雨は
       イヴと
       カインの
       罪の
       告白の涙だ 
       いや
       この雨は
       ただの
       自然現象だ

       蝶の死骸を引きずる蟻
       汚れた靴
       忘れられたボール
       錆びた自転車のスポーク
       車
       紫陽花
       郵便ポストの蜘蛛の巣
       地図
       町
       川
       兵士
       重監房
       それら全てを含む
       世界に 今
       雨が
       降りしきる

       太陽が
       薄目を開けると
       雲の切れ間に
       わずかに光が射す
       遠くの空に
       六月の
       婚礼の鐘が鳴り
       教会の屋根の鳩が一羽
       ふいに 羽ばたく
       だが
       そいつがオリーブの葉をくわえ
       地上に舞い降りても
       そこが新しい世界でないことを
       子供たちは知っている

       警戒警報
       雨はまだ降っている

| | コメント (0)

コンウォール・リーの絵葉書

Cai_0341_2

 先週末はまた草津に行っていた。去年調査した栗生楽泉園・重監房の資料館が完成した事を受けて会社あげての研修旅行。

 http://sjpm.hansen-dis.jp/

 自分が掘り出した遺物や撮影した写真をガラスケース越しに見るのはなにも初めての経験ではないが、それにしても今回のこの異例とも言える早さ。そして報われたと思える事が極度に少ない発掘の仕事にあって、この達成感もまた異例のものだ。改めて貴重な経験をしたと思った。感謝。

Cai_0327_2   一泊二日の旅行だったが自由時間となると、一人湯畑の喧騒を離れて、どうしても去年約一ヶ月滞在していた宿の周辺に足が向いてしまった。で、二日目の自由時間に行った場所もやはり去年、散歩コースにしていた頌徳公園。

 大正から昭和初期にかけてハンセン病の人達のために尽力したイギリスの宣教師コンウォール・リー女史を記念した公園で、目の前に彼女ゆかりの聖バルナバ教会と記念館がある。

 http://homepage2.nifty.com/jmm/legh/muse_top.html

Cai_0325  いつもは仕事の後で時間的に閉まっており、前を通り過ぎるだけだったのが、今回、初めて記念館の中に入ってみた。丁寧な解説を受け、映像を見せてもらって、“聖バルナバ・ミッション”と言われる彼女の仕事のあらましを知った。かつて湯之沢と呼ばれる地区には、ハンセン病者のための幼稚園、学校などが彼女の尽力によって建てられ、辺り一帯は「喜びの谷」と呼ばれていた。1931年(昭和6年)、病者全員隔離を謳う、癩予防法が制定されるその前までは。

 コンウォール・リーは若き日にアート・スクールで絵画を勉強した人でもあるらしく、来日する前の世界旅行時に描いたものや日本に来てから描いたものが今絵葉書セットになっている。上の写真がそれ。ぼくが買ったのは第3集の「草津の風景」。優しい水彩画で、彼女の草津の地に対する愛情が伝わってくるよう。

 先週末は真夏日とやらで標高千メートルの草津も暑かったが、湿度が低いのか、日差しの強さと眩しさを避け木陰に入るとひんやりとして気持ちよかった。息がつけた。記念館を出た後、出発の時間まで頌徳公園のベンチで寝ながら鳥の声を聞いていた。

 癩予防法が制定され、栗生楽泉園ができることによって女史の 喜びの谷、は終わりを告げる。その先に重監房もある。

 旅の最後に、もし、それが無かったら草津はどんな町だったのか、と夢想した。

| | コメント (0)

« 2014年5月 | トップページ | 2014年7月 »