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たましいのあん

Photo_3 前回の記事のような事もあってここのところ思いがけず和菓子の味について云々する機会が多い日々を過ごしているが、誰に聞いても、結局、最後は“あんの美味さ”というところに話は落ち着く。

 それで題名に惹かれ通勤時に読もうとふと手に取ったのは去年出た小説『あん』。著者は元叫ぶ詩人の会のドリアン助川。和菓子屋を舞台にした下町人情物語風のものを予想していたら全然違って、それどころか去年の今頃、自分が携わっていた仕事に真っ直ぐに繋がっていて吃驚した。

 http://www.poplarbeech.com/sp_pickup/ann/

 決して外には出られない場所で50年あんを作り続けた老婆と、義理でどら焼き屋になった前科のある男。巻末の著者プロフィールを見ると日本菓子専門学校通信教育過程卒とあって、そのせいか登場人物達があんを作る場面にリアリティがある。

 主人公が最後に着想したどらやきを一度食べてみたいと思った。そして老婆の故郷、桜の花びらを塩漬けにする風習がある川のきれいなところとは一体何処なのだろうかと思った。また、個人的には去年体験したが言葉にできなかった事を小説という形で代弁されているという気にもなった。泣けた。

 本書の中に小豆はおろか、すべてのものは言葉をもっており、その声を聞く、というのがある。予報では今年は秋が長いと言うので、今はそれをするのに相応しい季節だと思う。

 食欲の、読書の秋に是非。明日は彼岸。自分でおはぎを作りたくなった。 

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