29度目の歌舞伎~鰯賣戀曳網(いわしうりこいのひきあみ)
十月の歌舞伎座は第十七世中村勘三郎の二十七回忌、第十八世中村勘三郎の三回忌追善公演。
先週の日曜日、中村屋最古参二代目小山三のドキュメンタリー番組を見ていたら無性に中村屋が見たくなり、矢も立てもたまらず今日行ってきた。見たのは夜の部三幕「鰯賣戀曳網(いわしうりこいのひきあみ)」。猿源氏に勘九郎、蛍火に七之助。病み上がりなのでどうかと思ったが今日を逃すと明日は楽日。しかも土曜日とあっては混雑は必至と考え、今日、幕見ですべり込んだ。僕から後の番号からが立ち見だった。ラッキー。
三島歌舞伎の代表作「鰯賣戀曳網(いわしうりこいのひきあみ)」は初演は第十七世中村勘三郎と六世中村歌右衛門。最近だと十八代目勘三郎と玉三郎のコンビが人気だったが、実は僕が本当に見たかったのはそれ。歌舞伎座さよなら公演の時見れなくて、まあ、いいや。またいつかやるだろう、とたかをくくっていたら勘三郎の急逝で見ることが叶わなくなった。
当代勘九郎は勘太郎時代に何度も見た。いい役者だが生真面目で固い、という印象を持っていたので、今日は最初、この大らかな喜劇で笑えなかったらどうしよう・・と勝手に不安を抱いていたがそれは杞憂に終わった。最初、花道から姿を現した一瞬だけが勘太郎で、その後すぐ彼は勘九郎になり、そして演じるにつれて段々と勘三郎の亡霊をみているようになった。嬉しいやら気味悪いやらで(ごめん、これはほめ言葉です。)つまり、抱腹絶倒だった。特に軍物語の場面は爆笑。凄い身体能力だな、勘九郎は。女形としての七之助は玉三郎型なので、結局、僕は今日、やっと見たかったものを見たのだろう。歌舞伎の、芸の継承というのはつまりこういう事なんだよな。拍手。
「鰯売~」を見るのは今日が初めてだったので、どの時の、誰の芝居とも比べることは出来ない。が、この勘九郎、七之助の「鰯売~」は相当に良いのではないかな。二人ともこれが初演。また見たいし、きっと見れる。散々笑って、汗をかいたら熱が抜けて、帰りは夜風が気持ちよかった。風邪が治ったよ。ありがとう、中村屋。
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