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名札

 

     日々の
     Detailの変化が重なって
     いつの間にか見知らぬ世界にいる
     古い名前で呼んだとき応えてくれた女(ひと)を
           新しい名前で呼んだら無視された
     昔 読んだミステリーを再読したら
     結末が違っていて
     いつも歩いている角を曲がった空き地に
     先日まで何があったのか
     思い出せない

     父が消え、母が消え、家が消えた
     友が消え、鳥が消え、猫が消えた

     頼んだ覚えのないAmazonの小包が届く
     誰かがペットボトルを踏み潰す音が聞こえる
     電池切れの筈の時計が音声で時を告げ
     台風予報の空は青空
     解熱剤を貰いに病院に行ったら喉痛の薬をくれて
     オレンジジュースで飲んだら
     治った

     パスタを頼んだら
     オムライスが出てきた

     質問に質問で答える日々
     カレーの匂いを残し夕暮れは過ぎる
     昨日はすでに懐かしく
     チェス盤の上でポーンは進む
     すぐに忘れる女
     メモ魔の男
     ねえ 髪を切ったら見知らぬ人みたい
     ほくろを取ったら遠近感が狂うみたい
     あの猫が死んだら
     違う
     家に
     いるみたい

     深夜 バスの降車ボタンを押したら
     警備員が駆けつけてくるのじゃないかと不安になり
     住む町を通り過ぎた
     
     無人の町
     千円札の肖像が死んだ歌舞伎役者の顔になっていて
     壁の絵はモネからクレーへ
     パン屋は土建屋に
     花屋がコンビニになって
     気がつくと
     違う名前で呼ばれている   
     
     Who am I ?

     誰もが小さな機械を撫でている

     音漏れのイヤホンから
     ゴールデンスランバーが聞こえる

     誰か
     この名札を外して下さい

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