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花とカメラ T.Sに


美しいものを見るためには
身をかがめねばならない
フンコロガシのフォルムに見惚れた
アンリ・ファーブルのように
 
だが君が残すのは
書物ではなく一枚の写真
多分
野の花を引き抜いてしまわぬために
カメラは発明された
低く咲く花の色を
地の鎖から
空に放すために

冬の朝 
霜の白さの隙間から
シャッターを切る音が聞こえる
かがむとそれは 
花が
瞬きする音だ
シャッタースピード1/125 
絞り5.6

花は君のカメラを
美しいと思っている

美しいものを見るためには
空を見上げねばならない


 友人がSNS上にアップしている雑草や花を撮った写真が素晴らしい。常々、何かコラボレートできないかと考えていたら、2月に彼の写真が展示される会場で詩を読むことになった。バックで打楽器を叩いてくれるのは彼自身。毎年2月はバイオリズム的にダウンなのだが、今年はそうならなくて済みそう。今から楽しみです。
 

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「N A K E D S O N G S vol.8-BURN,BURN,BURN -」~ホーボーの歌(ことば)、ビートの言葉(うた)

Kazwnihukarete
 イヴェント・プロデューサーの若松さんからの依頼で、今月31日、荻窪club Doctorで行われる「N A K E D S O N G S vol.8-BURN,BURN,BURN -」のコンサートパンフのための文章を書いた。

 今回僕は出ませんので初めての人も安心して是非(笑)。 

                ☆

 
「ホーボーの歌(ことば)、ビートの言葉(うた)」

 ずっと「戦後」を生きていると思っていたら、あっという間に「戦前」になってしまった雰囲気の昨今。以前、テレビを見ていたらあるアナウンサーが「アベノミクスに影響が出るといけないのでこうした発言は控えていたのですが・・・・・」と前置きしてから話し始めるのを見て、話の内容そのものよりその前置きの方に驚かされた事がある。つまり他の何よりも経済が優先されるムードの中で、ある種の「言葉・話題」はすでに自粛されていて、その動きは日々加速しているという事だ。
  この正月、紅白で桑田佳祐がヒトラー髭を付けて「ピースとハイライト」を歌ったら、SNS上で物議になって、 さらに彼の「アビーロード」の政権批判・全曲替え歌「ソラミミ アビーロード(アベーロード)」の動画サイトのコメントには見たくもない文字が並んでいたりする。芸人の一世一代のジョークを「粋」と笑って過ごす余裕もないのか。

 http://youtu.be/NoqKQRPCII4?list=PLzFCSMHIDX2SxK8_g8L2rNchy3FPta1o4
 
 
 去年、首相の「集団的自衛権行使容認」の記者会見直後に行われた「N A K E D S O N G S Vol.6」で中川五郎さんが読んだC・ブコワスキーの「シャワー」と、最後に歌われた「 トーキング烏山神社の椎の木ブルース」が忘れられない。
 

 「シャワー」は男性器・女性器の単語そのものズバリが連発された詩だが、最後まで聞けば分かる通りこれは美しい「愛のうた」だ。時期が時期だっただけに僕は大島渚の映画「愛のコリーダ」で阿部定と散々情事を交わした後の主人公が「2・26事件」の将校の隊列とすれ違うシーンを思い出した。「個人」と「国家」。故下村誠は自著の中で「ボブ・ディランのプロテストソングはすべて世界に対するラブソング」と書いたが、逆もしかり。美しい愛のうたが本質的にプロテストソングなのだと、あんなに肌身に染みて実感された瞬間は無かった。不覚にも涙が出そうになった。
 
 https://www.youtube.com/watch?v=oMj7KI9StQs
   
 そして「「 トーキング烏山神社の椎の木ブルース」。実際に起きた事件を取り上げたトーキングブルースだが、あの頃、あの中で語られる朝鮮人労働者を乗せたトラックと同じようなトラックで毎日甲州街道を烏山!に向けて走っていたので、悪夢が眼前に展開されるようで震えがきた。大きな自然災害の後で世の中がどんな空気になっていくのか。関東大震災の後の悲劇と3・11後のヘイトスピーチの今が重なった。 

 

 今回の「N A K E D S O N G S Vol.8」はVol.6の時と同じ中川五郎さんと風二吹カレテの再演。オープニングアクトは詩人・三木悠莉の朗読。故下村誠の意志を継ぐとして、またアメリカ50sの「ビートの精神」を合言葉に始まった「N A K E D S O N G S 」も今回で8回目を数える。Vol.6の時、五郎さんは弾き語りだったが今回はバンドTo tell the truthを率いての登場。CROSSの風二吹カレテとどんなステージを見せてくれるのか今から楽しみだ。そして初めて見る三木悠莉の朗読も。

 先日、遅ればせながらやっとウォルター・サレス監督の映画「オン・ザ・ロード」を見て、前半、季節労働者(オーキー)たちが乗るトラックの荷台にサル・パラダイスがヒッチハイクするシーンを見、ジャック・ケルアックやニール・キャサディがウディ・ガスリーと相乗りになることは無かったのか?とそんな妄想を抱いた。時代が違うか。

 なんにしても「ビート」出現以前にはその先輩のようなホーボー達がいて、その様は今回のフォークシンガー五郎さんとビートの精神を標榜するロッカーや詩人ようでもある。そう言えばこの「N A K E D S O N G S 」イヴェントの前身である下村さん主催のイヴェント名は「Bound for gloly(ウディ・ガスリーの著書名)」だったっけ。この列車は栄光に向かって走っていて、ビートはホーボーの歌(ことば)を聞き、ホーボーはビートの言葉(うた)を聞く。そしてそれは決して"ソラミミ"ではない。

 今、リツィートやシェアじゃない、生の言葉に耳を傾けたい。

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N A K E D S O N G S vol.8
-BURN,BURN,BURN -

2015/01/31 (Sat)
18:00 open 18:30 start

adv ¥3,000 +Drink / door ¥3,500 +Drink
ご予約はclub Doctor 又はm3sami.wakamatsu@gmail.com まで

荻窪club Doctor
東京都杉並区上荻 1-16-10 ローレルビルB1
tel 03-3392-1877 doctor@khaki.plala.or.jp

出演

To Tell The Truth
(中川五郎/中野督夫/永原元/寺岡信芳)

風ニ吹カレテ
(CROSS/KUBOTA/LINA)

ゲスト:篠原太郎 ( THE BRICK'S TONE )

オープニングアクト(リーディング):三木悠莉

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「きのね」~天からの合図

Photo_9 ここ数年、正月は長い小説を読んで過ごすのが通例になってしまった。今年は宮尾登美子の「きのね」。名優と謳われた第十一代市川團十郎とその妻をモデルに書かれた小説。評判通り、面白さに昼夜問わずのめり込み、上下巻を一気に読んでしまった。

 第十一代市川團十郎と言うと、2年前に亡くなった十二代目の父で、当代海老蔵の祖父。で、主人公・光乃は当然、その母、祖母ということになる。女中の身から梨園の妻となり、生涯、陰で十一代目を支え続けた女性。小説的な誇張はあるものの書かれている出来事はほとんど事実だという。その上自分は中川右介著「歌舞伎 家と血と藝」(講談社現代新書)をそばに置いて、変名で語られる登場人物が誰なのかを一々確かめながら読んだのでフィクション的な味わいもあった。

 フィクション、ノンフィクションを見定めするように読む醍醐味も自然出てくるが、恐れ入ったのが「聖母子」の章。

 低迷していた雪雄=治雄(十一第目の本名)も戦後、爆発的な人気を得、世間的には独身で通しているため、産院に行くのを躊躇う光乃が一人便所で逆子を出産する場面。これ、本当だろうか?下巻の壇ふみのあとがきによると、宮尾登美子はこの小説を新聞連載中に、出産直後に十二代目の臍のを切ったという産婆さんに会うことができ、取材したというから・・・事実に近いのだろう。鳥肌が立った。

 生真面目ゆへ不器用で癇癪持ちの雪雄と、運命に翻弄されながら時に雪雄の暴力にさえひたすら耐え忍ぶ光乃の関係は今なら不可解に映るだろうか。しかし、その果てにある男女の宿縁、離れられない二人のその繋がりの強さを不思議なものを見るように読んだ。初め、主従の関係で共に暮らしていた二人は、文字通り病に遭っては血を分け、戦火を、貧困を、また世間の目をかいくぐり、封建的な歌舞伎界、ひいては昭和の時代を生きぬく。

 鋭利な感性とエキセントリックな面を併せ持つ当代海老蔵と、とてつもない忍耐と大きな包容力が魅力だった故十二代目。海老蔵は隔世遺伝で祖父ゆずり、十二代目はこの母の影響・・と勝手に納得した。

 まだ女中奉公の身だった頃、雪雄に「どんな芝居が好きなんだい?いってごらん。」と聞かれ、「きのねでございます。芝居が始まる前の、あの音を聞くと身が引き締まります。天からの合図のようでございます。」と答える光乃が愛しい。きのねとは芝居の始まりと終わりに鳴るあの拍子木のこと。この答えを面白がった雪雄は光乃を「きのね」と綽名する。

 今は年開けのきのねが鳴ったところ。正月に相応しい・・と言いたいところだが、言うにはあまりに余韻が大きい物語。今後、舞台を見る目が変わるだろう。海老蔵を見たくなった。

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2015年 あけましておめでとうございます

 新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

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