“前面展望”の誘惑
NHKの番組「スーパー・プレゼン(TED)」でスローライフ、スローフードならぬ“スローテレビ”というものが紹介されているのを見た。
https://www.ted.com/talks/thomas_hellum_the_world_s_most_boring_television_and_why_it_s_hilariously_addictive?language=ja#t-799596
半信半疑だったがYouTubeで似たような映像を探してしばらく見ていると、なるほど、と腑に落ちるものがあった。
番組で取り上げられていたのは、鉄道の旅、船の旅、暖炉の火、編み物・・・などだったと思うが、YouTubeで一番近いものは何か?と考えて、見たのはいわゆる“前面展望もの”というやつ。バスや電車のスタートから最後までを無編集で撮影した映像のことで、そんなもの何処が面白いの?という声が聞こえてきそうだが、もちろん、面白くは無い。面白くはないが見てしまう。そして見ているうちに面白いと感じている自分を発見する、と言った感じ。僕が今まで見たのは
・山手線(内回り)
・山手線(外回り)
・京王線(高尾山口~新宿)
・山形鉄道フラワー長井線(赤湯~荒砥)
・世田谷線
・江ノ電(鎌倉~藤沢)
・韓国 釜山~金海軽鉄道 などなど。
探すと国内外問わずいっぱいアップされている。画質はそれぞれピンキリなので良いものを選ぶのはもちろんだが、時間が長く、編集が全くされていなくてBGMやキャプションがついていないものがお勧めだ。つまり、できる限り疑似体験に近いもの。
最近、テレビを買い変えてネットも見れるようになったのでテレビで見たが、PCでも、できればフルスクリーンにすると良い。それで急行の通過待ち合わせとか各駅での停車時間が長かったりした場面でも先送りしたりせず、その間にトイレに行ったり食事をするようになってくるとあなたもハマりつつある証拠だ。撮影済のものでもここまで楽しめるのだから、上述の番組の中でライブで七時間の船旅を番組にした時のことをノルウェイのテレビ・プロデューサーが嬉々として語っているが、確かに楽しかっただろうと思う。
このスローテレビなるものが投げかけている意味を考えたり、分析したりするのは今はしないでおこう。ただテレビが現実を非現実に感じさせる装置として機能する面が日々強まっていく現状と逆行しているようで個人的には痛快に思った。
また、このスローテレビなるものの代わり?として、今回“前面展望もの”を取り上げたが、これは元々、鉄道マニア、いわゆる"鉄っちゃん"の楽しみなのだと思う。"鉄っちゃん"という呼び方自体、"オタク"と同質の侮蔑的な意味合いを少なからず含む言葉だと思うが、僕は以前から彼らを高尚な趣味人として敬意を持っていた。今回、さらにその思いを強くした。
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