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「グレート・ローカルヒーロー」を聞く~盆と正月

 

Juicel_cd  “大韓航空に乗って USAに渡るぜ ジョン万次郎みたいなスリルな旅で行こう (「盆と正月」 by関野豊 )”

 19年ぶりの2ndアルバムが出ると聞いて、19年前の1stアルバムをここのところ毎日聞いている。いわきの友人・関野豊のバンド、JUCE&LOVEの「グレート・ローカルヒロ―」。

 プロデュースした故下村誠が当時絶賛したリーダー関さんの特異な詞の世界が相も変わらず面白く耳に響く。特に3曲目の「盆と正月」。普通、「盆と正月が一緒にきたような・・」とは嬉しい事が重なった時に使う言葉だが、原発事故以降、復興バブルで黒字倒産も出ると聞くいわきの現況にあって、歌には自滅的・躁病的なユーモアの他にプロテストな響きが加わった、と思った。サビはこう。

 “Love・盆と正月繰り返す Love・気を抜くヒマもない 行っちゃってる人生”

 歌の始まりは、子供の頃、人の死を弔う家業なのに墓場で爆竹を破裂させる遊びをして、その罪悪感からくる心象風景だと、以前本人から聞いたが、その後は「盆と正月」にこそ忙しくなる自らの仕事に対するストレスと、そこからくるハチャメチャな妄想へと突き進む。歌は世につれても世は歌につれない、とずっと思っていたが、この場合、世がこの歌につれてしまったかのよう。

 その他、ポリスの「ロクサーヌ」を彷彿させる「ふたコブラクダに乗って」、ブルース・スプリングスティー的疾走ものの東北地方青年版「青春のオタケビ」、ニール・ヤングのような「満月」、方言全開の性歌「ザザンボの花」、そしてDNAのリレーを「バトン」ではなく「たすき」と表現したラスト「ワインディング・ロード」まで、関さんの言葉遣いはいちいち意外性に富んでいて、数年ぶりだが一気に聞かされてしまった。

 出会った頃、関さんは所謂「うた先」でデタラメな英語で曲を作っていて詞はなかった。僕らの仲間内で誰も彼の作詞の才能には気づかなかった。

 年明けに出るニューアルバムの題は「50/50 フィフティ・フィフティ」だとか。音楽の新作に期待を寄せる言葉としては適当ではないかもしれないが、この1stを聞いて思うに、新作での関さんの詞がまたどんな世界を見せるのか今から楽しみ。そしてその楽しみには19年という年月の他に、原発事故以降ということが含まれる。

 “ダイナマイト見つけて 裏山に隠した 死んじまったバーちゃんの墓のすぐ隣に 誰かに言おうかな よそうかな それとも火をつけ逃げようか Love・盆と正月繰り返す Love・気を抜くヒマもない 行っちゃってる人生” (「盆と正月」 by関野豊 )

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