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好きな詩集 「エルヴィスが死んだ日の夜」。

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 80年代は文化・経済の状況がアメリカの50年に似ていたためかビートジェネレーションの翻訳が多数出版されたが、結局、自分はあの時代の子供なのだと思う。

 敬愛する詩人は故・諏訪優さんと中上哲夫さんだが、知っての通り諏訪さんはギンズバーグの翻訳家で、中上さんは主に80年代以降に出版されたケルアックの本の翻訳家だ(偶然、大学の先輩ということもある)。ある時、Book offの音楽関係の棚に題名が誤解されてそこに置かれたと思われる中上氏の詩集『エルヴィスが死んだ日の夜』を見つけ、立ち読みし動けなくなった。何故ならまるで自分のことが書いてある様だったから。  

 ビートジェネレーションというと黒ずくめの服装にサングラスでワインを燻らしながらジャズやロックをバックに詩を朗読する・・みたいにだけ思っている人がいるが、何よりもギンズバーグは害虫駆除の仕事をしていたのだし、ケルアックは鉄道関係の仕事をしていた。つまり日本でビート的に生きようとするならば土方(この言葉も今は自主規制の対象らしいので肉体労働者)になる他なく、事実そうしながら彼らは詩や小説を書いたのだ。そして中上氏の詩集『エルヴィスが死んだ日の夜』も、全く日々自分が目にするそうした風景が詠われている。例えば『生涯で最悪の日』という詩。
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産業革命のときのイギリスの少年のような
実働十二時間の
寒風の中の立ち仕事
こんな日の夜
(A Hard Days Night)
ひとはいったいどのように振舞うのだろうか
うたた寝しながら郊外の
わが家にたどりついたわたしは
どんぶり飯をかっこむと
この詩を書いて
熱いシャワーも浴びずに
ベッドにもぐりこんだのだった

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 他にも『二十世紀最後の夏はこんな仕事をした』や『現場監督見習いをしたことがある』などの詩。どちらもリアル。

 表題『エルヴィスが死んだ日の夜』の過ごし方は読むと自分がチャック・ベリーが死んだ日の過ごし方と同じで、それで余計にこの詩集に親近感が沸くのかもしれない。

 そう言えばあの日見た映画でエルヴィスの歌は重要なモチーフになっていたっけ。好きなLPを紹介するように好きな詩集を挙げろと言うなら、僕は諏訪優の『太宰治の墓 その他の詩篇』と中上哲夫の『エルヴィスが死んだ日の夜』を挙げるだろう。路上派と(というものがあるらしい)言われる二人。

 美は路上にあり、ということか。 

 この詩評が素晴らしい。
http://www.interq.or.jp/sun/raintree/rain28/elvis.html

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