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『幻の女』(新訳)を読んだ。

「現実とはああいうものじゃないか?」妻殺しの裁判で死刑を言い渡された容疑者のお粗末な陳述を聞いていて、担当刑事ははたと気づく。彼は嘘を言っていない、と。

 飛行機の中で読もうと空港で買ったが結局読まなかったウィリアム・アイリッシュの『幻の女』(新訳・ハヤカワ文庫)をこの休みに読んだ。世界中のミステリーファンの間で行われるオールタイムベスト投票では常に1位から上位、作品は1942年発表(あの大戦中にこんな傑作が書かれ、読まれていた。)というから、これはもう古典中の古典だ。帯にはあの、江戸川乱歩が「世界十傑」と評した推理小説、とある。納得。

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 四月に少し早めに大きな旅行をしてしまったので、このゴールデンウィークは家にいて昼間は読書三昧(そして、いつの間にか寝落ち)夜は映画という日々。映画は夫婦割りが使えて安いのだが、そう毎回は妻も付き合ってくれず、特に証明も求められないので偽の妻を現地で調達しようか・・・などと悪巧みすると、この小説中の刑事バージェイズのこんなセリフにたしなめられる「顔を覚えるのが苦手な人間は、見知らぬ女を劇場に連れて行ったりしてはいけない。」と。そう怖いのだった、それはそれは。

 読んだのは新訳だが、旧訳の冒頭の一行は翻訳の世界では大変な名訳とされているものだそうで、それだけはそのまま踏襲する、と新訳者の断りがあとがきにあった。それは、こんな文章。

 The night was young,and so was he.But the night was sweet,and he was sour.
 
 「夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。」

 お休み中、特に予定のない方にお勧め。予定のある方は引き続き良い休日を。

読後の気分は苦くない。

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