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映画「ムーンライト」~ククルクク・パロマ

 アレサ・フランクリンの「One step ahead」、バーバラ・ルイスの「Hello,stranger」、ボリス・ガーディナー「Every nigger is a Star」等々、音楽の使われ方がいちいち絶妙だった映画『ムーンライト』。シーンと音楽の関わり方についてならどの曲についても何か書けそうだが、取り上げたいのは「Cucurrucucu Paloma」(ククルクク・パロマ)と言うメキシコの古い民族舞踏曲。

 虐められてドラッグユザーの巣窟のような廃墟に逃げ込んだ小さなシャロンを心優しき売人のファンが見つける、その出逢いの頃のシーン。ピッタリだった。あまり褒められた人間でない大人の方が子どもに人生を良く教える、ということがままあるが、この出会いの後、ファンも様々なことをシャロンに教える。

 人気のない開いた戸の前に
 毎朝、一羽の鳩が飛んできて哀しそうに泣く
 あの鳩はきっと彼の魂だ
 鳩よ、お願いだ
 そう ククルククと泣かないで
 誰にも彼の愛が分かるはずもないのだから

                                      作詞作曲 トマス・メンデス

「自分の道は自分で決めろ。絶対に他人に決めさせるな。」とファンは小さなシャロンに言う。ドラッグ中毒の母親に育てられたゲイの黒人の物語・・・と言うと自分とは無関係、と考えがちだがそうではない。これはアイデンティティについての映画。アカデミー賞受賞については賞が白人至上主義だという批判やトランプ政権誕生の影響が囁かれるが、こんな寡黙な映画が受賞したのはやはり事件だろう。どうやら僕らは本当に時代の変わり目にいるらしい。

 

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