ドラマ『私たちのブルース』~名作。

『北の国から』ならぬ『済州の島から』みたいな。短絡的な発想と言うなかれ、ちょっと倉本ドラマのティストを感じました。これだけの大スター、国宝的な名優を一同に集めて物語が渋滞しないものかと思ったがさにあらず。全20話だけどだいたい2~3話で一つのエピソードが完結するオムニバス形式なので長さにたじろがなくても少しずつ見れます。

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 どのエピソードも内容を語ってしまうことがはばかれるような名作ぞろいなので言いませんが、個人的には4~6話、14~15話、そして最終回で泣きに泣きました。特に14,15話。この問題をここまで直球で描くなんて日本のドラマ界にこんな勇気、昔も今も無いでしょう。本土と島を行き来するひねくれものの行商人をイ・ビョンホンが、その彼と深い確執を抱える母親役を映画『母なる証明』のキム・ヘジャが演じてます。ある回では主役で、ある回では脇に徹する、それぞれが変化自在な役者ぶり。それととにかく脚本が素晴らしい。名作。

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「応答せよ1994」を見た。

 朝、レタス、トマト、キュウリのサラダとバナナ、それとコーヒー。今日から8月。それと梅雨がやっと明けた。 

 「愛の不時着」のヒットで、今は何度目かの韓流ドラマブームらしいが、自分もその流れで数日かけてNetflixにある「応答せよ、1994」を見た。本日、午前中に20話と最終回の21話。

 以前「応答せよ、1988」をケーブルテレビで見た時、身近に見たという人がやはりいて、盛り上がって話し始めたがどうしても話がかみ合わず、「あれ?僕見たのは88だけど。。。」「いえ、私は94です」のような事になった。で、その人の“ロスぶり”を見て、94も88同様、面白いのだろうなあ、とずっと思っていた。

 この「応答せよ、シリーズ」は97、94、88とあって、自分は88の大ファンなので、この94も良くある単なるラブコメとは思ってはいなかったものの、こんなにも揺さぶられるとは思わなかった。最後はちょっと泣いてしまった。

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 1話ずつ薄皮を剥くようにされ、最後には自分の芯にある(あることすら忘れていた)20代の頃の感情をむき出しにされ取り出されたかのようだった。どの場面のどれも、見覚え、身に覚えがあり、だが世代を問わず誰をもそうした気にさせるところが、このドラマの人気の所以なのだろう。97も以前見たが、自分には88と94が双璧(97ファンの人ごめんなさい)。何かにつけ魅力的なエピソードやシーンをピンポイントで見るだろう。

 ドラマを見ていて羨ましかったのは、登場人物たちが昔を振り返る時、当時の仲間たちが一人も欠けることなくそこにいるが、自分はそうでないということ。自分にとって同時代を余さず共に生きたチング(友だち)と敬愛したヒョン(兄貴)の二人はもう故人。特にヒョンは意外にもドラマ好きで、良く夜中、ドラマ談義で電話をかけてきたりしたっけ。できればこれも一緒に見て騒ぎたかった。

 昼、冷麺を作ろうと思ったがなんだか面倒くさくなってどうするかと考えていたら、妻がチャーハンを作ってくれた。美味。

 午後は韓国語の授業。午前中に見たドラマの余韻を引きずっていて、中で使われていた気になったことばや言い回しをいくつか質問した。

 夜、夕食はアジの干物、刺身こんにゃく、枝豆、茗荷と油揚げのお吸い物。ごはんは抜き。その後、欲しいものがあって百草の100円ショップへドライブがてら買い物に行く。

 蒸し暑いがまだ冷房を点けるほどではなく、かえって中途半端な感じ。読書して寝よ。

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「応答せよ1988」を見た。

 最近、夢中になって見ている韓国のドラマ「応答せよ1988」。オリンピックがあった韓国の1988年は日本人にとっての60年代のような感じだろうか。皆、貧しくて、隣同士が支え合って生きていた時代。そして民主化運動があった時代。ある時、点けっぱなしのテレビの画面で絵に描いたようなおばちゃんパーマの女性が3人、縁台でモヤシをちぎりながら下ネタ含みの下卑た会話を大声で(しかも長々と)していて、ヘンなドラマだなぁ・・・と見ていたらあれよあれよと泣かされ、笑わされ、いつの間にか録画して毎晩見るのが楽しみになった。

 ネットで調べるとこの「応答せよ~」はシリーズ化されていて(自分は他2つは未見)、この「~1988」は第三弾にして最高傑作との触れ込みだ。本国でのヒットは勿論のこと、中国での人気も凄く(オンラインサイトでの放送回数2億回以上)、その他のアジアの国々でも見られていて日本でも最近ケーブルテレビで放送され始めたよう(初放送は2017年6月)。

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 同じ路地に暮らす幼なじみ5人の若者たちがメインのドラマなので彼らの恋の行方のような面ばかり話題になってしまうが、これは彼らが暮らす路地=「共同体」そのものが主人公のドラマ。母親たち、父親たち、兄弟姉妹、おじさん・・・・、それぞれの心情を丁寧に描いていて、見る人の年齢や立場から必ず感情移入出来るキャラクターがいる。そして扱われる話題も、オリンピック、恋、民主化運動、リストラ、更年期までと様々で、日本では久しく作られなくなった「ホーム・コメディ」と言えば言えなくもないが、それにしては出てくる若者たち一人ひとりが魅力に溢れすぎていてる。当時を知る多くは懐かしさで見るだろうが、それを知らない若い人達が彼らにつられこのドラマの世界観を無意識に沁み煮込ませるようだったなら・・・これは未来へのドラマでもあると思った。

 

 ・・・・と、ここまでベタ褒めの文章を書いたが、見るにあたり難点もあって、それはTV放送時の尺のこと。オリジナルは全20話で1話約100分あり、自分が見たのはそのオリジナルバージョンの方だが、見逃した1~3話を残念がっていたら他のチャンネルでまた放送が始まり、見ると一話が1時間(CMが入るので45~50分)。放送時間に合わせぶつ切りにされていて、1話づつが話の変なところで終わり、変なところで始まる印象。DVDもこのぶつ切りになった版が採用されている。また日本では『恋のスケッチ』なる凡百ありがちなラブコメみたいな題が付けられていて不快。昨日、レンタル屋で見たらこのシリーズの他のものはちゃんと「応答せよ~」の題で商品化されているのに何故だろう。一話ずつの完成度がとても高いドラマなのでオリジナルでの放送、商品化を望む。

 キャスティング発表時、大ブーイングだったのに放送後大絶賛に変わったというヒロイン、ソン・ドクソンを演じるGirlsdayのヘリのじゃじゃ馬振りが素晴らしい。
 
 登場人物の中の誰に思い入れがあるが、見た後で話するのも楽しいドラマだと思う。

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ドラマ「奇皇后」を全部見た。

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 現在、NHK・BSで放送中の韓流ドラマ「奇皇后」を全部見た。たまたま第24話をテレビで見て興味を覚え、ネットの動画サイトで第1話を見たらハマってしまった。

 テレビ放送中の巻に追いつければと思って見始めたが、気が付くと時すでに遅く中毒状態に。「この続きどうなるのだろう・・・」の連続で、結局、全話見てしまった。全51話。疲れたが、見終わってしまって今はなんだか寂しいくらい。

 14世紀、高麗が元に支配されていた時代。貢女(コンニョ)の身分から皇后に上り詰めた実在の女性の話。物語はフィクションだが、大陸と地続きだとこんな物語が可能なのかと舌を巻いた。

 何せ長いので途中、繋がりが不自然だったり、二転三転する登場人物たちの立場に感情移入し辛いところもあったが、それでも見せてしまうのはそれぞれの役者の演技が良いからだろう。特に主人公スンニャン=ヤン・イを演じるハ・ジウォン。キレのあるアクション、ラブロマンス、カリスマ性・・・だいたい韓流ドラマを見るときは日本版でリメイクしたらこの役はだれそれ、と想像しながら見るのが常なのだが、この役だけは誰も思いつかなかった。凄い女優さん。

 また特筆すべきは数々の悪役たち。ヨンチョル、タンギセ、タナシルリ、ヨム・ビョンス・・・・目抜き舌抜き、毒殺、絞殺、焼印、鞭打ち・・・・拷問何でもアリの、彼らはもう本当に身の毛もよだつほどの悪人だが、彼らの策略に立ち向かうスンニャンの知略・機略が闘いを増すごとに彼らと同等の謀略、陰謀に育っていくさまが怖かった。これは凡百ある勧善懲悪の話ではない。そして、この悪人たちがそれぞれ物語から退場する時のセリフが意外にも物語に深みを与えていた。

 女性ならタファン(元の皇太子、後の皇帝)とワン・ユ(高麗の世子、後の王)のどちらがタイプかなどの話にもなるだろうが、ネットを様々覗くと案外ペガン将軍の甥で軍師のタルタルが人気のようだ。後にスンニャン=ヤン・イの影の師匠となるタルタル。なるほど男臭い戦場で彼だけ少女漫画の王子様風。テレビの吹き替えで見ている方には、是非一度、韓国語・日本語字幕で見ることをお勧めする。タルタルは顔に似合わず低音のイイ声で、魅力倍増することが請け合いです。

 NHK大河のほぼ一年分の量を、短期間で、言わばずっと韓国語のスピードラーニング状態だったので、そろそろ何か話始めてしまえそうな気すらしているが、覚えた言葉は「ペーハー!(陛下!)」だけ。ただ韓国語と日本語に同じ(似ている?)単語、語彙があることに気づいて個人的にはそれも面白かった。

 이 드라마 재밌어요 い どぅらま ちぇみっそよ~。

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鬼平犯科帳(71)~鬼の世襲

Km13794l  最近、夜、ウィスキーをチビチビやりながらBSで古い「鬼平犯科帳」(71)を見るのを楽しみにしている。鬼平は八代目松本幸四郎。二代目中村吉衛門の実父。そしてこのシリーズでその後の鬼平、我らが吉衛門はまだその息子の辰蔵を演じている。そうか、「鬼平」は世襲だったのか。知らなかった。
 先日見た巻では吉衛門=辰蔵は茶屋の娘に懸想して、その事が事件解決のキッカケとなるのだが、最後に父・幸四郎=平蔵に剣道の稽古にかこつけてぶっ叩かれていた。後のあの重厚な鬼平ぶりとの落差が面白かった。

 引き続きまだ江戸遺跡を掘っているが、仕事で次の現場を言い渡される時、そこが都心だと、会社にある「江戸東京重ね地図」なるCDをいつも見る。

 http://www.cd-v.net/rakugo/shoping/maker/app/edo/main.html

 このCD、現代の地図と安政三年の古地図が重なっていて、バーをスクロールしていくと現代の場所が江戸の頃、どういう場所だったかが分かるようになっている。おまけに「鬼平犯科帳」の様々な場面が現在のどの辺りかが分かるようにもなっていて洒落が効いている。

 今の現場は港区の魚藍坂のそばにあって「鬼平犯科帳」では九帖「泥亀(すっぽん)」にこの坂が出てくる。坂にある魚藍観音堂境内に茶屋を出している元盗賊の泥亀の七蔵が、昔の頭に恩返ししようとする話。痔持ちの七蔵はこの坂を上るのに難儀するが、痔持ちでなくてもこの坂上りきると少々、息が切れる。

 現場は肥後細川藩中屋敷跡地内で、また坂を上りきって今度は伊皿子坂を降りていくと泉岳寺があるので、この地で江戸時代というとすぐ忠臣蔵を思い浮かべるが、赤穂事件が起きたのは元禄15年(1703年)で実在の鬼平・長谷川平蔵が生きたのは延亨三年から寛政七年(1746~1795)というからその差は約50~100年程ある。それで実際にあった事件とフィクションの世界を比べるのはへんだと思いつつ、出土する遺物を見て、昨日ふと内蔵助と平蔵のどちらの時代に近いかと考えてしまった。

 古い「鬼平犯科帳」(71)は良いのだけれど一つだけ譲れないのはこのエンディングテーマ。これだけは自分が見ていたシリーズのものが脳内に定着していて、古いシリーズを見た後も“エア”で流れてしまう。現場は昨日でようやく半分終わった。あと半分。 

 https://youtu.be/VcOvqpOWCwM

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南部坂雪の別れ~討ち入り前日

Photo  古墳があり、また江戸時代、元禄の頃は赤穂事件の浅野匠頭の未亡人・瑤泉院の幽居先だったとされる場所を先月末から掘っている。と、ここまで聞いて都内の何処かをすぐに言い当てられる人は東京ガイド検定(という資格があるらしい)1級でも持っている人だろう。

 忠臣蔵にゆかりの地とは季節的にもタイムリーだと思い、それなりに面白みを感じて仕事しているが、なにしろ人手不足と工期が短いのとで四苦八苦していた。週末も何やかんやと仕事になって、おかげで久しぶりに腰痛、頚椎症に悩まされている。現場はここにきてようやく軌道に乗ってきた感じだ。

 瑤泉院というと歌舞伎の演目では真山青果の「南部坂・雪の別れ」を思い出す。元は浪曲からきた話。これはあだ討ち前夜、瑤泉院の元にその決行の意を伝えに行く大石内蔵助が、しかし、邸内に吉良方の間者がいることに気付き、真意を言い出せずままに彼女に叱責されるという話。旅日記と渡されたものが実は四十七士の血判状であることを知って、後に瑤泉院は自らの思慮のなさを悔やむこととなる。

 少し余裕が出来てきたせいか、この五日が一周忌だった故十八代目勘三郎の内蔵助を見たいと思い、昔、NHK大河でやっていた「元禄繚乱」をレンタルしようと考えた。が、調べるとこのドラマ、VHSでは総集編が全四巻で商品化されていたものの、DVD化はされておらず、今、見ることができない。ちなみにこの時の瑤泉院は宮沢りえ。また将軍綱吉をショーケンが怪演していた。見れないとなって結局、このドラマの原作、船橋聖一の「新・忠臣蔵」を読み始めてしまったが、なにせ全八巻もある。この分では年末年始はずっと忠臣蔵になってしまいそうだ。

 忠臣蔵には密かに縁があって、6年前、初めて新橋で大きな仕事をまかされた時の現場事務所は、事件後、浅野匠頭の身柄お預かりの場、切腹の場となった田村右京太夫邸の跡だった。目の前は事件に材を得た「切腹最中」で有名な和菓子屋があった。私が生前の母と電話で最後に交わした会話も実はこの最中についてだった。

 http://penguin-pete.cocolog-nifty.com/blog/2008/01/post_5f84.html

 「南部坂 雪の別れ」は討ち入りの前日ということだから12月13日ということになる。つまり今日。雪は降っていないがここ数日グッと冷え込んできて、毎朝、早起きなのが辛い。都心通いの数年前までは当たり前の生活だったが、あれは長い時間をかけて培われたもので、今回のような短期決戦だと身体が慣れる前に終わってしまいそうだ。身体をどう気遣って良いか分からず、アルコールは止めて青汁なんぞを飲み始めた。

 工期は年内。明日、討ち入りの日も仕事。バイトの皆さん来て下さいね。合言葉は「山」「川」で。

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あまロス

Photo_7  今日初めて新しい朝ドラ「ごちそうさん」を見たが、私はやはりまだ“あまロス”。あまちゃんロス症候群。

 「あまちゃん」についてはもう色んなところで散々言われているので特に付け加えることもないのだけれど、私が個人的に何が画期的と思ったかというと、それは朝から全編を通して全開の東北弁が聞けたこと。

“ふるさとの訛りなつかし朝ドラの「あまちゃん」の中にそを聞きにいく”

 初回か2回目だったか忘れたが、東北人の宮藤官九郎(宮城県)の自虐ネタなのか画面に字幕が付いていて笑った。ドラマの中に「ずっと東北弁で通して良いのはあき竹城さんだけよ!」というのも確かあって、それも笑った。東京編はさすがにそうでもなかったが、それでも主人公のアキはずっとズーズー弁で通していた。嬉しかった。

 方言については関西の人が惚れ惚れするほど堂々としているのに比べ、東北弁はやはり昔からコンプレックスの種でしかなかった。昔、実家で浪人中、一足先に東京に出て行った友人達は、あー言ったら笑われた、とか、こー言ったら恥をかいたと、いちいち電話をかけてきて、小学生の頃、千葉の標準語圏内から福島に越して、散々「気取ってる」「カッコつけてる」と逆にからかわれていた私は、やっと気づいたか!と、いつも笑ってやっていた。

 しかし、数年後、東北出身の出稼ぎ労働者の飯場に暮らしていた時、その息苦しいまでのコンプレックスは見ていて滑稽を通り越し、強烈に悲しかった。

Photo_5_2  東北出身以外の人は“東北弁”って、どれも同じに聞こえるのかもしれないが、ドラマの中でほとんどの人が北三陸のことばで話しているのに一人ばりばりの“いわき弁”で話している人がいて、それが潜水土木課の先生“いっそー”。

 私はすぐに分かった。役名も「磯野心平」で、それプラス会話の端々に“何々してケローッ”と言うのは我がいわき出身の蛙の詩人草野心平をネタにしているのは明らかだ。このドラマはそんなところにも小ネタが効いていた。演じた皆川猿時がいわき出身ということでそうしたのかと思うが、他県の人が信じようが信じまいが、いわきには実際にああいう“いっそー”のようなキャラの人が多い。

 最終回、私は娘とオープニングナンバーが流れる中、お座敷列車が北三陸の海沿いを走る様を空撮して終わるだろうと、ちょっと予想を立てていたが、実際はアキがいつも一人で防波堤を駆けていくところを、ユイと二人で走っていくのを空撮するエンディングだった。予想を超えていた。暗いトンネルを二人の少女がペンライトを持ってはしゃいで走るり抜けるシーンも良かった。

 東京にいると方言で喋れない。ちょっとやってみてと時々言われたりすることがあるが出来ない。恥ずかしいとか言うのじゃなく、本当に出てこないのだ。しかし、このドラマの放送期間中、私は家ではずっと東北弁で喋っていた。杏は嫌いではないが「ごちそうさん」だとそうはいかない。それが淋しい。

 とにかく初回から欠かさず全部見た朝ドラは初めて。それで“あまロス”。

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ドラマ『火の魚』~原田芳雄追悼

 原田芳雄死去。昨日、彼の訃報を教えてくれた人とそのまま映画談議のようになって、彼の出演作の中で何が一番好きかという話になった。『君よ憤怒の河を渡れ』、『オレンジロード急行』、『祭りの準備』、『陽炎座』、『龍馬暗殺』、・・・・と、枚挙にいとまがないが、私が一番強烈に覚えているのは故松田優作の葬儀の時の弔辞。

 「お前は今まで、テレビドラマや映画の中で何度も死んでは何度も生き返ってきた。それは優作、お前が役者だからだ。役者だったら、もう一回、生き返って見ろ!」ってやつ。不遜かもしれないけれど、シビレたなぁ。

 

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 ↑は昨日話した人が一押しだったドラマ『火の魚』。H21年NHK広島放送局が制作したもので、海外の様々な賞を受賞している。PCで途中まで見て、「続きは家で・・・」なんて言って帰宅後Youtubeを探したらショートクリップ以外に無い(絶句)。http://youtu.be/jTkgP6H_eq4

 あれ、昨日見たの何だったんだろう?で、DVD化もされているというので、念のためレンタル屋にも行ってみたが勿論無い。

チクショウ、最後まで見ればよかったなあ・・・と凄く後悔していたら、なんと、明日21日、NHKBSプレミアムで夜10:00から原田芳雄追悼企画として放送されるとのこと。良かった!!

 以前、若い映画ファンに好きな役者は誰かと聞かれて、勝新太郎、萩原健一、原田芳雄、松田優作、北野武・・・と名前を挙げたら「悪人好きっすねぇ」と、爆笑されてしまった。が、君、原田芳雄は何もしてないよ(多分)。

 もっと枯れたところを一杯見たかった気もしますが、私は恐れ多くて生き返って見ろ!とはとても言えません。

 ご冥福をお祈りします。『大鹿村騒動記』も見なくちゃな。

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『逃亡者(のがれもの)おりん』~おりん、Come back!

 

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 中村敦夫氏が様々なジャンルでその後活躍しても、ずっと「紋次郎」と呼ばれるように、このドラマのヒロインを演じた青山倫子は今後ずっと「おりん」と呼ばれるんじゃないだろうか?。そのくらいこのドラマ、インパクトがあった。『逃亡者(のがれもの)おりん』。時代劇ってこういうのもありなのか、と初め見て誰もが呆れ?その後はハマッて見ずにはおれないということになって、一時、このドラマはネット上で話題騒然と言った感じだった。

何に皆が一番驚いたかって、それは主演の青山倫子の大根ぶり(ごめんなさい!)と変な特撮交じりの殺陣(たて)、またその時の彼女のありえないコスチュームだろう。

 初め時代劇が好きな娘が第一回の放送を見ていて、途中から見るでもなしに見ていた私は、この番組の主人公は宅間伸か榎本孝明だと思っていた。しかし、それが途中から脇役と思っていた画面の中で一番演技が下手な女性が主演と知って新鮮な思いがし、そして、この時間帯にしてはちょっと露出の多い色っぽいシーンと例の殺陣を見て思い切りのけぞってしまった。

 誤解無き様、言っておくが、これは本格的な時代劇で物語は抜群に面白い。父がある陰謀によって殺され、その後闇の暗殺集団の一員として暗躍していたおりんが、自らの行動に疑問を持ち、死産だと思っていた娘が実は生きていると知って一味を抜ける。そして、ある事件の濡れ衣を着せられ、おりんは組織を抜けることを許さない一味と公儀の両方から追われる破目に。またそこには将軍吉宗の陰謀と暗殺に関する密書も絡んでいるという、てんこ盛りな内容で、この逃亡の道中、彼女を助ける市井の人々との心の触れ合いによって闇の暗殺者・手鎖人だったおりんは段々と人間らしさを取り戻していく。

 何が素晴らしいかと言って、それは主人公おりんの人間としての成長ぶりと青山倫子の時代劇女優としての成長ぶりが段々シンクロしてきて、ついでに初めは笑いを誘うしかなかった殺陣も回を増すごとにキマッテきて、見ている者が日本の時代劇にニューヒロインが誕生する瞬間に立ち会っているような気にさせられたことだ。

 で、例の特撮とコスチュームだが、これは賛否両論真っ二つに分かれていて、見て、“ありえない、下らない、許せん”と言う人と、“笑える、セクシー、突っ込みどころ満載でおもろい”と言う人がいて、私は圧倒的に後者だった。あえて言わせて貰えばこれ、本格時代劇と仮面ライダーに代表される変身ものの合体。市井の人々の人情の機微に触れる重厚な人間ドラマの後のあの戦闘場面。おりんのもとに次々に送り込まれてくる刺客は、まるで仮面ライダーに出てくる“なんとか男”のようだ。アクロバチックなアクションと爆破シーンまであって、ありえない、ありえない、と見ていると最後に“ライダー、キーーック”みたいに“手鎖御免!”と例の決め台詞があって、“闇の鎖、また一つ切りました”と言うことになる。

Fidol2120109010500pv2_2  これは新しい、おもろい、一体誰が考えたんだろう?何回目かを見た後、私はパチパチと手を叩いてしまった。リアリティがどうとか、時代考証がどうとか言う奴はNHKの大河ドラマのチェックだけしていただくことにして、私は日本の映画やTVドラマの中のこういう反則技に等しい演出が大好きだ。昔の日活映画の無国籍ぶりを見ろ、小林旭の背中に背負っているギターを見ろ、だいたい水戸黄門の印籠を出す場面だってあんなに何回もありえないし、遠山の金さんだって桜吹雪の彫りもん見せるまで、誰も気付かないなんて変だし、桃太郎侍だって“一つ・・・・”なんて言ってるところに切り込めばいいじゃねえか、ってことで、ようするに突っ込み所は=見せ場、それは由美かおるの入浴シーンにまで通じている。

 実はこのドラマの最終回を見逃していて、ずっと気になっていたのを今日、レンタルしてきてついに見ることが出来た。予想通り江戸城内はショッカーのアジトのようになっていて、榎本孝明は死神博士のようだった。そして、予想外の黒幕。

 悪玉と思っていた輩が実はそうではなくて、善玉と思っていた輩が・・・・・・でも、一番予想外だったのは、おりんが最後に死なないというところだった。これはDVDの特典映像での青山倫子もインタヴューで言っていて、私も最後におりんは死ぬものとばかり思っていた。念願の娘にも会え、母が生きていたことを知り、父の汚名を晴らしたおりん。自分が手にかけた人々と、自分をかくまったばかりに死んでいったあまりに多くの人々の霊に報いる為にも、最後には自らも死のうと思っていたおりん。しかし、そんなおりんが生きていこうと決意し、また旅立つところで物語は終わる。例の東京スカパラダイス・オーケストラのスカ・ビートに乗せての股旅姿。そして一番最後のカットは続編の可能性をわずかに匂わせる。

 これは最近のドラマには珍しく2クールやったので21話まであるが、もっともっと見たい気がする。

 青山さん、せっかく立ち回り、あんなにできるようになったんだからさ、現代劇もいいけどあなたは時代劇の中でこそ輝く女優ですぞ。

 おりん、Come back!

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『眠れる森』~ドラマ・トリートメント

Photo  原因が分からないのに、どうしても苦手で怖いもというのは誰にでもある、と思う。

 昔、まだフリーターだった時代、同じバイト先にどうしても商店街を歩くのが怖いという人がいた。その人は一見して体格の良い男だったが、商店街のような所を歩くと動悸がして、早くその場を離れたい衝動に襲われるのだと言っていた。それで後日、なんとかそれを解消しようと催眠治療のようなことをした結果、その恐怖にはちゃんと原因があり、原因が分かった瞬間、恐怖はたちどころに消えて無くなったと言う。

その人は小学校低学年の時、高熱で倒れ、病院でお尻に注射を打たれた帰り道、母親におんぶされて商店街を歩いている所をたまたま下校時間だったクラスメートにひやかされたことがあったそうで、それが恐怖の原因だったそうだ。

 原因を知ってしまうと、“なあんだあ。”と思うが、そういう小さな原因は日々の様々な経験の蓄積によっていつしか忘れ去られてしまい、羞恥心や恐怖心だけがいつまでも心に残ってしまっていることが良くあるらしい。

 催眠治療って、一体、どういうことまで出来るのか?私には全くその辺の知識は無いが、この治療法を仕掛けとする小説や映画は洋の東西を問わずたくさんあって、“記憶”が昔から人間の心の不可解さを描くのに格好の素材となってきたのは言うまでもない。

 今回、紹介のこのドラマは故野沢尚氏の代表作と言われるサスペンス・ドラマの傑作だ。息もつかせぬ展開、完璧に練り上げられた脚本。1998年の作品なので、放送からもう9年もたったのかと思うとちょっと驚く。放送当時、誰が犯人かについてネット上でちょっとした論争があって、私も、去年の暮れに亡くなった友人と犯人当ての激論を戦わせたことなどを懐かしく思い出す。

 物語は1983年のクリスマス・イヴに福島県のある町で一家三人が惨殺される事件が起きたところから始まる。ただ一人生き残った少女は事件のショックで記憶を失くし、また、周囲の人間も余りに酷い出来事なため、失った記憶の変わりに催眠治療によって別の少年の記憶を少女に埋め込むという処置を施す。

 本当にこんなこと、出来るのか?と、当時見ていた時、思ったが、現実でも例えば過去を美化したり卑下したりして話しているうちに、事実とはどんどんかけ離れ、その作り話の方を“記憶”として定着させてしまうことがあるから、特殊な治療としてそれを行えば、不可能な話でもないのだろう。

 記憶を埋め込まれた少女のその後を中山美穂が、図らずも記憶の“提供者”となった少年のその後を木村拓也が演じている。

 ドラマの中で何も知らない女(中山美穂)に向かって、その事実を知っている初対面の男(キムタク)が『あんたは俺の一部なんだよ。』と言って気味悪がられるシーンがあるが、キムタクはかつて心理治療を行っている父の療養所にやってきたこのトラウマを抱えた少女に恋し、その後ずっと影ながら見守ってきた青年で、なのにドラマの前半は完全に最悪なストーカーのようだ。

 この不気味なキムタクが実に良い。現在の彼は文字通り“ヒーロー”だし、大衆もいつしか彼にその部分のみを期待するようになってしまったので、今ではもうちょっとした悪役(ヒール)っぽいことはできなくなってしまったのかもしれない。

 中山美穂はアイドル時代もその後も、私は全然興味の無い人だったが、このドラマを見てファンになってしまった。ご存知の通り現在は作家辻仁成の奥さんだが、辻氏は彼女に会った時『やっと、逢えたね。』と言って彼女を口説いたというのは有名な話で、現実での彼女はドラマのように気味悪がらなかったようだ。

 また、ドラマの中で殺人事件が起きたのが1983年12月24日で、そしてその事件の時効が成立する15年後の1998年の12月24日に中山演じる女性と中村トオル演じる男性が結婚式を挙げるという設定、そして現実に最終回が放送されたのも1998年のクリスマス・イヴの24日と、クライマックスにもっていくまでのそうした演出も見事だった。

 脇役で出演いていた人々は現在では皆、ビッグネームになって、今見ると凄い豪華キャストだが、中でもユースケ・サンタマリアはこの時、後に映画で主役を張るような人になるはとても思えなかったので その辺にも時の流れを感じる。またキムタクに滅茶苦茶冷たくされる女の子を演じる本上まなみも、まだ演技が固いですが初々しくてとても良い。

 出演者達は皆、その後も大活躍中でこのドラマのイメージが定着してしまったなどと言うことは決してないが、私の中では一人中村トオルだけはこのドラマのイメージのままだ。

 今、レンタル・ビデオ屋の売り上げの柱は『24(トエンティ・フォー)』に代表される海外ドラマだそうだが、どれもなにしろ長いので、何事にもハマリやすい私はあえて手を出さないようにしている。

 で代わりにこうして昔見た名作ドラマを借りてきてまた見てしまうのだが、見ながら当時の記憶が呼び覚まされるところもあって、それで何かが癒されているような部分もある気がするが、物語の持つ力とは本来はそうしたところにあるのだろう。

 ちなみに、ひところまで私はとてもチーズが苦手だった。嫌いと言う以上に、ちょっと怖くらいに感じていたが、現在では全く快癒?してピザでもなんでも美味しく頂けるようになった。

 その陰にははこのドラマ顔負けの凄まじいサスペンスが隠されているのだが(嘘)、誰の何によってトリートメントされたのかは・・・・秘密。 

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