登洪崖洞

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 中国は重慶に行っていた。9か月振りに娘と再会、またスカイプ越しに言葉を交わしていた彼女の友人達に直接会えて楽しい時を過ごした。いい旅だった。中国、また行きたい。


 雨の重慶( Chóngqìng)
 その雨後の筍は
 七十年の歳月を経て
 銀色のビルの竹林となった

 夕暮れに
 嘉凌江と長江のほとりに出た僕らは
 輝く船を見つめ
 出逢いと再会を喜んだ
 赤子のようにたどたどしく
 互いのことばを
 教え合いながらー

 朽ちた寺院の屋根
 地下鉄6号線
 力夫(クーリー)
  火鍋
 パイナップル売り

  「雨」からの解放を
  記念した
 碑(いしぶみ)の前の賑わい ※1 

 你是中国人吗?
 我是日本人。

 「雨」の国の人よ
  あなたは慈雨であれ
 その一滴も
 いつか大河になればこそ。

 白日依云  黄河入海流
 欲穷千里目 更上一层楼 ※2

 洪崖洞(ホンヤードン⦆の壁に   
 イービノサウルスの幻 ※3
 その階段を
 新しい人たちが上っていく
 それは
 千里を見はるかすためでなく
 只、今を楽しむため

 軽やかな足取りで
 一段一段

 確かな足取りで
 一段一段

 加油!加油!加油! ※4

            
                          2017.4.17
.

※1  日中戦争中の1938年2月18日から1943年8月23日にかけて、日本軍は重慶に対し断続的に計218回におよぶ戦略爆撃を行った。解放碑(jiě fàng bēi)は1945年、抗日戦争に勝利したことを記念するため建てられたものである。

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※2 『唐詩選』 巻六 「登鸛鵲楼(かんじゃくろうにのぼる) 」 王 之渙

白日山に依りて尽き 黄河海に入りて流る
千里の目を窮(きわ)めんと欲し 更に上る一層の楼

【輝く夕日は】山の稜線にもたれかかるようにして沈み、黄河は【海に入ってもさらに流れる】。【千里の眺望を】見はるかしたいと思い、さらに【一階上の楼】へと上っていく。

※3 この地域はジュラ紀の地層が露出する世界でも屈指の恐竜化石の宝庫。イービノサウルスは四川で発見された新種恐竜で化石は重慶自然科学博物館所蔵。 写真はその博物館にて。

 

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※4 加油(jiā yóu)  油を加える、でがんばれの意。中国語、面白い。

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枯葉とウィスキー ニッカ・宮城峡蒸留所にて

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       ウィスキー色の枯葉と
             
 枯葉色のウィスキー
             
 その琥珀の光は
               
命を謳歌したことの
             
 証に思え
             
 秋の夕日に
             
 どちらともなく
             
 かざしてみる
.
             
 おいしい水割りの作り方は
             
 ウィスキー1に水が2
             
 それに氷を3個だと
             
 美女が教えてくれたが
             
 でもこれは
               
先人たちの夢
             
 夢を水で
             
 割るわけにはいかない
.
             
 枯葉のように
             
 夕日が落ちる
             
 ウィスキーが落下する
             
 喉から胃へ
             
 胃から血液へ
             
 血液は脳へと巡り やがて
               
Premiumな夢を
             
 旅人にもたらす
.
             
 そして またしても
             
 枯葉色のウィスキー
             
 そういえば
             
 水がきれいな土地では
             
 太陽も
             
 ウィスキーの色をしているな

                     2016.11.5


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Skypeを待つあいだ

 

          Skypeを待つあいだ
          火山が噴火した
          遠い国にいる君も
          この国にいる僕も
          その音を聞かなかった

          Skypeを待つあいだ
          ウィリアム・ブレイクを読んだ
          正確には
          ブレイクについて書かれた
          本を読んだ
          「想像は吾が世界である」と
          神秘的な詩人は言った

          Skypeを待つあいだ
          時差について考えた
          ディスプレイに映った君は
          ほんとうに君だろうか?
          あの光を放つ星さえ
          遥か昔に
          消滅している
                かもしれないのに

          Skypeを待つあいだ
          「イマジン」を聞いた
          通信技術の進歩で
          世界が小さくなり
          陸から溢れた人たちが
          ボートを漕いで
        海を渡り始めた
      
                Skypeを待つあいだ
                深呼吸し コーヒーを飲んだ
          ヨガのテキストを見て瞑想した
          世界は
          僕の想像ではなかった

          Skypeを待つあいだ
          テレビの中で
          少女が雨に打たれていた
          爆弾が爆発し
          兵士が銃をかまえていた

          Skypeを待つあいだ
          棺が運ばれ
          何処かで子供が生まれた

          Skypeを待つあいだ
          何語で語り掛けるべきか
       言葉を探していた    

          Skypeを待つあいだ
          君が恋をした

          Skypeを待つあいだ
          世界は
          Skypeを待つあいだ、だった

        Answer.

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I saw the Light

         

     眩しさから
     目を逸らすことがことができない
     胸の高鳴りを
     抑えようとして苦しい
          
     その時 レゴは瞬時に組みあがる
           その時 風景は初めて色を得る

     まるで 
     音楽が奏でられる前の静寂
     まるで
     弦を調律する微かな響き
     
     あの人の
     たわいのない仕草の一つ一つが
     何かの合図のように
     乱反射して
     見えるのは 何故

     眩しさから
     目を逸らすことがことができない
     禁じられても
     太陽を凝視する
     子供のように

     未来から呼ぶ声がする
     
     偶然を
     運命に変えようとして
     今 広場の彫刻が
     眩しさに向かって歩き始める

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The letter

 

 昨日、懐かしい人に電話した。懐かしい声が耳元に広がって、声が少し震えていた。それを聞いてぼくの声も少し震えてしまった。

「何度か手紙を書いたけど、いつも戻ってきてしまったの。」と、代わった妻にその人は言ったという。知らなかった。自分たちが、昔あんなに世話になったその人に、そんな存在になってしまっていたなんて。

 仕事はどう?
 子供は大きくなった?
 普通が一番よ。

 私、パソコンはやらないから、と前に会った時に言っていたっけ。「スマホ」どころじゃなくて「パソコン」。ぼくらに書いて戻ってきたという手紙には何が書いてあったのだろう?そしてその手紙を前にしてその人がどんな思いでいたのか。

「今年は今の住所をちゃんと書いて年賀状を送るね。」と妻が言った後、少し会話して受話器を置いた。会わ(え)なかった時間の全部が、ありきたりな言葉と声に含まれていた。

 今日は空も鳥も木の葉も公園のベンチも、みんなその届かなかった手紙の中の言葉に見えた。思えた。そんなに遠くない昔、世界はそんな言葉で出来ていたのだ。

 昨日、その声は
  ぼくにその事を教えてくれた。

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野鳥観測

 

     空のミュージアムから
     落ちてくる笛の音(ね)
     あの羽根の色を模写したい 
     そのノートから
     同じ模様の鳥を
     飛び立たせたい

     毎朝 公園のベンチで
     警備員が落とすパン屑を食べ
     もう何度も輪廻した鳩

     電車が通り過ぎるたびに
     飛びのいてはまた
     街路樹に舞い戻るハクセキレイ    

     携帯で写した     
     名の知らぬ鳥たちが     
     送信ボタンの一押しで
     一斉に羽ばたく幻を見た

     未来の遺跡に
     緑が絡まり
     その木の葉を啄む
     虹色のオウムの夢も

     もう
     どんな想像力も
     あの鳥より高く飛ぶことはできないだろう

     地下鉄のエスカレーター
     水鳥の孤独を抱え
     旅人の手の中には
     宇宙船の搭乗券と
     古びた
     野鳥図鑑

     不相応な望遠レンズは
     星ではなく 
     鳥を見るため

     冬の夜空に
     鳥が流れていった

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僕らはまだ揺らめいている巨大なものの前にいる

     

     昨日の3・11
     PM2:46に
     市の放送があって黙祷した
      しかし 実際は
     地震があったこの時間から
     さらに約10~15分後に起きた
     津波によって
     被害は
     甚大なものになった

     去年のその時のことを
     思い出すと
     自分は都心のプレハブの 3階にいて
     何かのアトラクション
     のような目に合った後
     外に出て
     現実とは思えないほど揺らめいている
     高層ビルを
     呆然と
     見つめていた

     周囲も皆
     騒然としていたが
     実は その時にこそ
     津波という
     もっと具体的な
     悲劇が始まっていたのだが
     誰も知らなかった 
     その時には

     文字通り 悲劇が渦巻いているのに
     何も知らずにいた
     あの10~15分間が
     その後の1年をずっと
     覆っていた
     ような気がする

     いくら
     いろんな事実が
     明るみになっても
     まだ自分は何かを知らないでいる
     という感覚が
     あの時から始まったのだ

     3・11は
     終戦記念日や
     防災の日のような
     記念日や
     祝日には
     ならないだろう

     僕らはまだ
     揺らめいている巨大なものの前にいる
     

     それは高層ビルではない            

                                                           

                  2012.3.12  




 今日は沈黙しよと思っていたが、思いがけず自分のブログの過去のある文章が普段より大勢の人に読まれていることを知り、せっかくだからと思ってその文章を行分けして詩のようにしてみた。

 今日の2:46に自分の周りでは放送もサイレンもなかった。が、自分のこの時の気持ちは真空パックされたままです。黙祷。

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十五夜


     

     皿の上に月が串刺しになっていて
     濃いお茶を飲みながらそれを食べている
     みたらしの月
     あんこの月
     蝉が
     鈴虫の声を真似ている
     秋ー。

     今夜は十五夜できみの誕生日
     お月見には
     年の数だけ団子を食べる
     という風習が
     もし あれば

     今日で君は50個
     二人で100個
     人間わずか50年×2

     ちょっと食べると三日月
     もっと食べると半月

     まん丸の月に
     最初に歯型をつけたのは
     誰だ?

     深夜
     皿に残った団子が一つ
     空には月が一つ

     おめでとう

     僕はハロウィンよりも
     お月見が好き

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바다と海

 

       窓の外の
       モノクロの景色に
       ことばで色を塗る
       二人が話すことばは
       違うから
       同じデッサンでも
       違う絵が出来上がる

       この揺れうごく大きな水を
       私は「海」と言い
       あなたは「바다」と言う

       あなたの「바다」の浜辺を
       ガブリエル・バンサンの
       絵の犬が駆けて
       遠い岬へと
       ハングルの
       足跡をつけていく

       いつか あなたの村で見た
       絵に描かれた船は
       私の故郷の港に繋がれた
       古い船に似ていた

       風は람(パラン)
       雲は름(クルン)
       雨は비(ピ)
       波は물결(モルギョル)

       ことばが風を孕むと
       船が動き出す

       星は별(ピョル)
       月は달(タル)
       夜は밤(パン)
       朝日は
아침해(アチメ)

       約束は
약속(ヤクソク)
       約束は약속(ヤクソク)

       潮の匂いがする酒場の
       窓と思っていたものが
       実は
       飾られた絵で

       いつしか
       あなたがそれを「海」と言い
       私がそれを「바다」と言う

        夏の夕暮れ時

       絵の中で
       船が
       ゆっくりと動いていた

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花とカメラ T.Sに

 

        美しいものを見るためには
        身をかがめねばならない
        フンコロガシのフォルムに見惚れた
        アンリ・ファーブルのように
 

        だが君が残すのは
        書物ではなく一枚の写真

        多分
        野の花を引き抜いてしまわぬために
        カメラは発明された
        低く咲く花の色を
        地の鎖から
        空に放すために

        冬の朝 
        霜の白さの隙間から
        シャッターを切る音が聞こえる
        かがむとそれは 
        花が
        瞬きする音だ

        シャッタースピード1/125 
        絞り5.6

        花は君のカメラを
        美しいと思っている

        美しいものを見るためには
        空を見上げねばならない

 

 友人がSNS上にアップしている雑草や花を撮った写真が素晴らしい。常々、何かコラボレートできないかと考えていたら、2月に彼の写真が展示される会場で詩を読むことになった。バックで打楽器を叩いてくれるのは彼自身。毎年2月はバイオリズム的にダウンなのだが、今年はそうならなくて済みそう。今から楽しみです。
 

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